鶴我 界周さん/秘伝の職人技を学びつつ、 豆腐業界の未来を考える日々

鶴我 界周(つるが かいしゅう)さん
つるが豆腐工房 代表取締役
1981年北九州市小倉北区生まれ。約60年前に祖母が始めた手作り豆腐の製造を中学時代から手伝い始め、高校卒業と同時に入社。2代目社長だった実父の元で、豆腐作りのいろはを学ぶ。『つるが豆腐工房』3代目社長に就任後の2013年9月には、アメリカンテイストの個性的な豆腐工房を新設。全国の飲食店に向けた卸直販や、工房店頭での小売り販売にも力を入れる。つるが豆腐工房HP http://tsuruga.biz

鶴我さんへ3つの質問

Q. この仕事に向いている人は?
A. 研究熱心で、あきらめない・めげない人。

Q. あなたのバイブルは?
A. 本より音楽が好き。小学生の頃からスクラッチやヒップホップに傾倒。

Q. あなたのメンターは?
A. 父親。失敗してもいつも前向きで、怒ることもない。人として器の大きいところを尊敬しています。

秘伝の職人技を学びつつ、豆腐業界の未来を考える日々

値段や製法に一切妥協せず、スーパーなどへの卸売りも行なっていない『つるが豆腐工房』。高くても質のよい品を欲する北九州や東京の高級料亭や居酒屋などのほか、安全性を重視する病院や学校からの受注に応じて、コクのある豊かな味わいの手作り豆腐を毎日届けている。豆腐の製造業者が高齢化し、業界自体の売上も低迷するなかにあって着実に成長を続ける、希少な豆腐店だ。

「 ほぼ身内だけの自営で毎日大忙し。高校生の頃には店を継ぐという意識があった」と語る鶴我さんだが、学生時代は知り合いの居酒屋でアルバイトをしたり夜遊びをしたりとやんちゃ三昧だったという。そんな生活が一変したのは仕事を始めてすぐだった。「朝が辛くて夜遊びをしなくなりましたね。お客さんが豆腐を待っているのに、寝坊なんかしていられませんから」。2代目の社長だった父親から教わることは限りがなかった。豆の擂り方から絞り方、水の量や気温など、すべてを自らの手で感じ取り、調整する奥深い職人技を少しずつ身につけた。そして徐々に、若者の豆腐離れが進む状況や、自社の方向性について思いを巡らすようになった。

「本物の豆腐」の魅力を、創意工夫で発信する

市販されている豆腐の多くは凝固剤を使用して日持ちする「充填豆腐」と呼ばれるものだが、甘味を増す添加物などに表示義務がないため、見た目では大豆本来の甘味を生かした「つるがの豆腐」との違いは分からない。しかし、「最高級の国産大豆とにがり、水のみを使ったうちの豆腐は『絶対体にいい』と作りながら自分で思うんです。本物の豆腐の美味しさを若者にもっと知ってほしくて」。

やがて社長を引き継いだ鶴我さんは早速、斬新なアイデアを実行に移す。“ジャケ買い”したくなるようなパッケージの豆腐にしようと父親を説得し、従来の和風デザインから一新。ポップな工房を建て、しゃれたロゴやHPも作成した。できたての豆腐を味わってもらおうと、新工房にはカウンターバーも設置して、豆腐の創作料理やスイーツ、豆乳のスムージーにソフトクリームなどを供する予定だ。

次々と湧き出る彼のユニークな工夫を形にしてくれるのは、肉屋に八百屋、イラストレーターや大工など、自らの足で立ち、志を同じくする個人事業者の仲間たち。「これまで遊び尽くしたことが、失敗を恐れない今に生きていると思う。心強い仲間たちとコラボしながら、これからの豆腐文化を作りたい」。豆腐業界の風雲児のチャレンジは、始まったばかりだ。

written by 編集部