ライフスタイル

日本の美に還る

四方を海に囲まれた土地柄ゆえか、 独自の文化を育んできた日本。
日本文化の素晴らしさや日本人の心意気は、
海外の人たちからも高い評価を受け、 取り沙汰されることが多々ある。

しかし、私たちが日常で それを感じる機会はどれほどあるだろうか。

今回は、自然と共生し、 物が足りない中でも心豊かに暮らしていた先人や、
豊かな感性や繊細な技をうかがい知れる日本文化に注目。

今の暮らしにほんのちょっと取り入れてみるだけで、
感性が磨かれ、幸せを感じる心を取り戻せるかもしれない。

退化しつつある感覚に喝を、 忙しい日々で磨耗しがちな心に潤いを。
今こそ、日本の美に還るとき―

私たちの先人の時代から脈々と受け継がれてきた価値観や感覚は、私たちが自覚している以上に日々の暮らしや人間関係に大きな影響を与えているらしい。
今も自分のなかに眠る 日本人らしさのルーツ について欧米と日本、どちらの文化にも精通する専門家に聞きました。

福岡大学人文学部文化学科 准教授
宮野 真生子先生
京都大学文学部文学科卒業後、京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。現在は福岡大学で日本哲学史の教鞭をとる。特に日本の哲学者・九鬼周造に造詣が深く、彼の著書「いきの構造」を手がかりに近代日本の恋愛の哲学を探った「なぜ、私たちは恋をして生きるのか」(ナカニシヤ出版)を2014年出版。現在は、九州産業大学藤田尚志先生と共に「恋愛・結婚合同ゼミ」を運営。その成果を2016年春に出版予定。

おもてなし精神にみえる日本人のルーツ

気遣いやおもてなし精神に溢れている、と海外から評される日本人の精神。では、そういった”日本人らしさ“のルーツは何か?というと、私たち日本人独自の考え方にあります。日本人は「そもそも相手のことなんて完全に理解できるものではない」という考え方のもとで人間関係や生活を営んできたといわれています。一方、欧米圏では「人と人とは話し合えば分かる、理解できる」という考え方が一般的。実際に欧米人の多くは、普段の会話や交渉などで自分の意見を主張しあって互いの合意を得るのがとても上手ですよね。でも、日本人は自分の意見を主張する前に、相手の出方をうかがったり、顔色を察するといった行動に出ます。そんな行動の根底には「話し合っても分かり合えないから、まずは相手の様子を探ろう」という考えが働いているんですね。

研ぎ澄まされた豊かな感受性を楽しもう

「話し合っても分かり合えない」という考え方から、相手の気持ちを気遣い、相手の求めるものを先んじて察する、相手に配慮するという精神が研ぎ澄まされてきました。その研ぎ澄まされた精神性が、茶道やおもてなしなどにみられる日本独自の伝統文化を育んできたのです。しかし一方で「話し合っても分からない」からこそ、空気の読みあい合戦が起こったり、集団から外れた行動をとりたくないという思考が強まる傾向が、日本人のもう一つの特徴ともいえます。人に気を遣うのはしんどいもの。「皆一緒だよね」と横並びの関係性は気持ちも楽ですし、特に人間関係の複雑な現代社会では、よくも悪くも同調的な思考に傾きがちです。

ですが、人間らしい感情の機微を察知したり、自分のことはさておき、まずは相手のことを気にする、という感覚は、人への感度が高い証拠です。日本人ならではの感受性豊かな精神を再認識して、そのいい面を伸ばせるよう、ぜひ意識してみてください。

日本人独特の美意識”粋”

もう一つ、日本人らしさを語る上で欠かせないのが「粋(いき)」という概念です。「いき」とは、江戸時代の花街の文化から生まれた美意識のこと。他の言語にはまったく同じ意味の単語がないともいわれる日本人独特の感覚で、洗練された美しさ、あかぬけたかっこよさ、といった意味で用いられます。特に、歌舞伎や浮世絵など、江戸時代に生まれた芸術文化の魅力を「いき」と呼ぶこともあり、美術・芸術に関する言葉と捉えられていますが実は、男女関係や人情を表現する言葉としても、古くから使われてきました。

例えば、男と女の酸いも甘いもかみわけた経験豊富な芸者を「いき」と評したり、相手を突き放さず、かといって束縛せず、互いの距離感を楽しむことを「いきな恋愛」と言ったり、恋の楽しさや苦しみ、人の情けや儚さをも味わう生き方を「いき」と呼ぶ風潮が、日本では江戸時代から育まれてきました。

型を破れば、”粋”が生まれる

「いき」という美意識が生まれた背景には、日本独特の「型」という考え方が影響していると考えられます。日本はよく「型の文化」といわれます。特に武道をはじめ、能、歌舞伎などの芸術、茶道など学びの場において、型を習得するという考え方はとても日本的な概念のひとつ。この型を学ぶ、という考え方はなにも道や芸能だけでなく、私たちの日常生活にも広く浸透しています。人づき合いにおける型、会話の型、社会人や会社における型など、ルールや規範、暗黙の了解といわれるものはすべて型と表現できます。実際に、私たちは儀式化されたものや定型・前例と呼ばれる物事をとても重要視しますよね。

「型」が浸透してマンネリや堅苦しさを感じるからこそ、型を”やぶる“ことへの憧れが生まれたのではないでしょうか。そういった意味では「型」と「いき」は表裏一体です。お決まりをやぶった人づき合いや恋愛を「いき」だと楽しんだ江戸時代のように、もしかしたら現代も、変化のない人間関係に息苦しさを感じるならば、それらの「型」から一歩踏み出してみるといいかもしれません。曖昧で、緊張感ある関係性に「いき」を感じ、楽しんできた日本人的感覚に、今、改めて触れてみることで、毎日がもっと刺激的になるかもしれません。

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