橋彌 和秀先生/「視線」 の研究から見えてくる! 目を使った上手なコミュニケーションの方法とは?

橋彌  和秀(はしや かずひで)先生
九州大学大学院人間環境学研究院  准教授

1992年京都大学教育学部卒業。1994年京都大学大学院理学研究科修士課程修了、1997年博士後期課程研究指導認定。1998年博士(理学)。京都大学大学院教育学研究科助手、九州大学大学院人間環境研究院助教授を経て現職。「九州大学赤ちゃん研究員」と名付けたボランティア・パネルを運営し、赤ちゃん研究を通してコミュニケーションの発達と進化を幅広く研究している。

「視線」 の研究から見えてくる!
目を使った上手なコミュニケーションの方法とは?

何か伝えたいときには「視線を合わせる」、逆にふれたくないときには「視線をそらす」…。普段何気なく使っているけれど、実はコミュニケーションにおいて「視線」、つまり目は重要な要素。こんな感覚、習ったわけでもないのに、私たちはいつどうやって身につけているのだろう? この「視線」とコミュニケーションについて、今回は九州大学で比較発達心理学を研究する橋彌先生から話を聞いた。

「白目」があるのはヒトだけ! 〝見せる〟 役割も持つ目。
「霊長類、サルの仲間の中で “白目” があるのはヒト(人間)だけなんです」と先生。「ヒトにだけなぜ白目があるのか? メリットとして考えられるのは、自分の視線がどこにあるかを他のメンバーに伝えやすいことです。様々な霊長類の目の形態や、群れのサイズ、大脳の新皮質率を比較検討した私たちの研究からも、ヒトの目は “見る” だけでなく、相手に自分の視線を “見せる” 装置として進化してきた可能性があきらかになっています」。 
では日頃のコミュニケーションにとって、視線はどんなふうに大切なのだろう?

赤ちゃん研究で見えてくる、目のコミュニケーションの大切さ。
「私たちの研究室では、生後5~6カ月の赤ちゃんを対象に実験を行いました。赤ちゃんが紐をひっぱると目の前の特殊ガラスが3秒間だけ透明になり、ガラスの向こうに女性が現れてあやしかけてくれるという装置を使った実験です。あやしかけるという動作は同じ状態で “顔向き” や “視線の向き” 、さらには “表情” に関して色々な条件を設定し、赤ちゃんが3分のうち何度紐を引くかを記録しました。すると、ガラスの向こうの女性が “赤ちゃんに顔を向けて視線を合わせ、笑いかけている” という条件でだけ、3分間の調査時間内で紐を引く回数が増加していくことが明らかになりました。別にミルクがもらえたり、お腹が満たされるわけでもないのに、生後半年の赤ちゃんが“自分を見て、笑いかけてくれる”ことを手がかりにして紐を引く行動を学習することが示されたのです。視線を手がかりにしたコミュニケーションを赤ちゃんの時から始め、それを上手に利用して、社会における円滑な人間関係を構築していくのがヒトという生き物の大きな特長なのかもしれません」。 
今回のゼミでは、「視線」とコミュニケーションについて学びながら、普段の生活では意識もしなかったような「ヒトのコミュニケーション」という謎に迫っていく。「視線を向けないと、相手はどう感じる?」「ここぞというときに相手の目を見るのは効果的?」など、講義を聞きながら考えることで、何気ない生活がそれまでとは違って見えてくるかも! ぜひ、楽しく学んでみよう。

written by 編集部