働く女性の食とカラダ

忙しい私たちが摂る食事の選択肢はいくつもある。体によくないと分かっていながらも、つい便利さに負けて、栄養分の偏った食事を摂り続けることに慣れてはいませんか?今回は、働く女性の“食とカラダ”との密接な関係をひも解きます。“食”に改めて真剣に向き合い、自分の体の未来を考えるために。「食にまで時間も労力も費やせない」と思う女性たちに少しでもヒントになる情報をお伝えします。

1.インタビュー
私たちの食、今のままで大丈夫?
現代の食習慣から垣間見える社会の歪みとその解決に向けた提案を、西日本新聞の連載記事「食卓の向こう側」で伝え続けている記者・佐藤弘さんに、食の現状と問題点を詳しく聞きました。

この人に聞きました
『西日本新聞社』生活特報部 編集委員  佐藤 弘さん
『西日本新聞社』入社後、システム開発部、日田支局、筑豊総局、経済部などを経て、2003年に西日本新聞の朝刊1面でスタートした「食卓の向こう側」を担当。食材、学校給食、農業、生活習慣病、出産など“食”にまつわるあらゆる問題を取材し、記事連載をはじめ講演などで広く伝えている。


“欲を満たす食”がもたらす問題。

今はお金さえ出せば、いつでもどこでも食べ物が手に入る時代。そんな“豊かな食”によって、食べたいときに食べたいものをという「欲を満たすための食生活」が当たり前になっています。現代の食習慣が、私たちの体に少しずつ影響を及ぼしていることが様々な取材を通じて分かってきました。 
例えば今、ヒトの体温がどんどん下がっています。戦前は37度台が平熱だったそうです。ところが今は36度台が普通です。そしてさらに35度台が平熱、という子どもたちが最近増えてきています。低体温をはじめ様々な変調や弊害が、今、私たちが食べているものによって起こっている。でも、それに気がついている人、知っている人は果たしてどれくらいいるか…。今日食べたものが体にいいのか悪いのか、今の食事を続けると、何年、何十年先に自分の体はいったいどうなっているのか。“知らない”ために体に思わぬ負担をかけ、将来に負の産物を作り続けているかもしれない。今改めて、食と体の関係をよく知る必要があると思うんです。

“産む性”という意識
今、不妊に悩む人が増えています。現代の食習慣がもたらす大きな弊害の一つが「産めない体」になってしまうという恐れです。低体温、冷え、ホルモンバランスの乱れなど、乱れた食習慣によって実に様々な問題が起こります。女性の体を健やかに保つためには体づくり、ひいては食事が非常に重要なのですが、そうだと気づく機会、知る機会はほとんどないのが現状ですよね。“子どもを産む”という役割を担う女性の体は「自分のものであって、自分だけのものではない」と言えます。私たちの体は、食べものでできています。今、食べているものは自分だけでなく、未来の自分の子どもの血や肉となるわけです。少しでも早く、そのことを知って、食べるものへの関心を高めてほしい。女性たちの意識次第で、食は必ず変わると私は思っています。
実際に不妊治療を受けている人は1999年には推計28万4800人、2003年には推計46万6900人に上った。約4年間で1.6倍に増加している。(平成17年度国民生活白書より)

現実を知ることから未来は変わる。
「でも忙しいし、食事のことまで手が回らない」という声もあると思います。ならば一度、間食を含めて自分の食事記録を携帯で撮ってみませんか?野菜不足、間食が多い、朝食抜き…など「こんなもの食べて毎日過ごしてるの?」と気づくことが自分を変える第一歩です。
また、食に関わるもう一つの問題が、自炊力の低下です。短時間で料理を作る経験や機会が少なければ、つい「面倒だから」「時間がないから」と買ってすぐ食べられるものへ手が伸びてしまいますよね。でも、自炊の技術は一度覚えれば一生の宝。彼が「お腹すいた」と言ったとき、コンビニで弁当を買ってきてあげるより、冷蔵庫の中の残り物でパパッと食事を作って出した方がカッコイイと思いませんか?

食に関連して、興味深い調査があります(図1)。食の基本である農業への関心度と食にお金をかけるかどうか、という2項目をものさしにして福岡市内の消費者を4つに分類したものなのですが、最も多かったのが「分裂型」といって、口では有機農産物や食への安全が大切だと言いながら、実際には安さだけでものを選ぶような人たち。食に対する価値観と行動とがリンクしていないんですね。頭では分かっていても、行動に結びつかない限り、何も変わりません。自分は「分裂型」になっていないかと意識するだけでも、行動が変わってくるかもしれません。

図1:徳野貞雄教授監修2003年「福岡市民の食生活に関するアンケート」

「食卓の向こう側」の連載を担当した当時20代だった女性記者は、取材をきっかけに食習慣が少しずつ変わりました。それまでは仕事に没頭し、朝食抜き、食事は深夜の居酒屋で、という生活が当たり前だった彼女。自分には一歩はまだ無理だけど、“半歩”なら前に進めるんじゃないかと、玄米弁当のようなバランスのよい弁当を選ぶことから始めました。すると便秘が解消され、生理痛も軽減。お肌の状態もよくなりました。その変化に感動した彼女は、お米を炊いて味噌汁を手作りするようになり、「私の体は私だけのものじゃないからですね」とどこかで聞いたセリフを吐くまでに。今では一児の母となり、ライターをしながら充実した人生を送っています。いかに早く、食の重要性に気づくかが人生の分かれ目。食べるものを変えれば、それがあなたの食習慣、つまりは体を、未来を変える大きな1歩になるはずです。

2.専門家に聞きました
食と体の密接な関係
女性なら特に知っておきたい“食と体”にまつわるキーワードについて、各専門家から正しい知識とアドバイスをもらいました。

低体温
低体温は、未病のひとつ。
平熱が36℃以下なら食の改善を。

手足の冷えやむくみなどは体質だと思っている人も多いですが、体温が36.0℃以下の場合は「低体温」という“未病”です。体が冷える原因は運動不足、不規則な生活など原因は様々ですが、体が冷えるような食事に偏っていることも大きな要因の一つ。例えば、生野菜を多く摂ると体は冷えますし、パンやお菓子など砂糖や油の多いものを食べ続けると、血液がドロドロになり、血流が悪くなって体温が低下します。すると血液中の白血球に含まれるウイルスやバクテリアを退治する酵素の働きが鈍くなり、免疫力が下がり、病気になりやすくなります。また、体の冷えは精神面にも影響し、気分が落ち込み利己的な考え方に陥りやすくなります。 
低体温の自覚があるなら“冷えやすい”食習慣を見直すことが第一。運動量を増やすのも効果的です。運動というと億劫ですが、「よく噛む」「姿勢を正す」という動作も運動なんですよ。特別なことをしようと思わず、普段の生活をほんの少し変えてみるだけでも体は応えてくれます。パンにサラダ、砂糖と牛乳たっぷりのカフェオレなどを毎朝食べてはいませんか?それをおにぎりと温かいほうじ茶に変えて、よく噛んで食べるだけでも冷えは改善されますよ。


取材協力/今井一彰先生(『みらいクリニック』院長)
山口大学医学部卒業。東洋医学を学び、2006年福岡市博多区に『みらいクリニック』開院。著書に「口を閉じれば病気にならない」(家の光協会)他多数。
http://mirai-iryou.com/

妊娠・出産
食べることは、自分だけでなく、
”未来の命”にも直結しています。

“食”を軽視すると、女性が本来持つべき“新しい命を育み、産み育てる力”が衰えてしまいます。赤ちゃんを育むために子宮の中に満たされる羊水は本来透明なのですが、食が乱れていると、よどんで濁った色になります。それほどに、口にするものは直接的に体、そして赤ちゃんに大きな影響を及ぼしているんです。
妊娠をきっかけに、食生活を一生懸命改善された方の多くが、女性らしい色気と自信に満ち溢れ、自分本来の美しさが内側からにじみでてくるような雰囲気へと変わっていく様子を、たびたび目の当たりにしてきました。自分の体に本当に必要な食事を選んで食べることができるようになると、ホルモンバランスが整い、心と体を自分で調整できるようになるんです。食べることは“生きること”。本当に美しく輝いている人は皆、自分の食べているものにも責任を持っています。体のために、未来の命のために、何をどう食べるべきか、改めて学んで身につけてほしいと願っています。


取材協力/大牟田智子さん(『春日助産院』院長・助産師)
医療系大学卒業後、北里大学医学部付属病院参加病棟に勤務。1984年帰福後、福岡遁信病院産婦人科病棟勤務の傍ら『春日助産院』に勤務。2005年より同院院長。

性格・感情
食べるとは「食べ物の性質」を体に取り込むこと。

食事とは単なる栄養補給にとどまらず、自分の体の中に別の命のエネルギーを取り入れる作業。食べ物のもっている性質は性格や感情にも少なからず影響を与えています。例えば、お米をよく食べていると忍耐強く、穏やかな性格になるといわれています。それは、稲が強い風を受けてもしなやかに受け流し、実りの日まで辛抱強く根を張る稲の性質が体内にとりこまれているからなんです。 
また、感情には血糖値の変化も影響しています。甘いものやファストフードは食後、血糖値が急上昇、急降下するため、感情の起伏が激しくイライラしやすくなります。一方、お米は血糖値の上昇や下降もゆるやかで、感情を穏やかにする食べ物。そういった意味でも、ごはんを主食とした日本の伝統的な和食は、心と体のバランスをうまく整えてくれる食事なんです。自分の食べているものが自らの“性格”を形作ると知るだけでも、食べるものへの意識はぐんと高まるはず。まずは、いつも食べているものを見直すところから始めてみませんか? ごはんと具だくさんの味噌汁、あとは豆腐や豆、小魚、海草などのおかずを1品という昔ながらの一汁一菜の粗食を続けるだけでも、心と体の調子がすっきりするはずです。


取材協力/吉岡美千代さん(『株式会社スパイラル』代表)
“心と身体と環境の健康”をコンセプトに、無添加食品にこだわり、自然農法の農家と連携して自然食品の開発・プロデュース・販売を行う。
http://www.spiral-office.co.jp/

3.食を変えるために
私たちが明日からできること
今の食事を、じゃあどうすれば変えることができるのか・・・?忙しくても時間がなくても、美味しく栄養あるものを摂れるアイデアをご紹介します。

食事の黄金比は「5:1:1:3」。
動物は歯に合った食べ物をとるのがよいとされています。人間の歯の割合に合った食の黄金比は
穀類5:魚・肉1:大豆1:野菜・海藻・発酵食品3
この比率を目安に、ごはんを主食、魚、野菜、海藻でアレンジした味噌汁やおかず、納豆、味噌、漬物などの発酵食品を1品という風に「5:1:1:3」を意識するだけで食事バランスがぐんとよくなりますよ。


ごはん、味噌汁を中心とした和食を“普段食”に

パン食が増えると、ジャムやバター、加工食品(ハムやソーセージ)など、砂糖や脂肪・添加物の多い食事に偏りがち。分づき米や雑穀ごはんを主食に、味噌汁や漬物、野菜や魚の煮物など発酵食品、野菜や海草、魚の煮物などヘルシーな旬の食事にすれは、体の調子を整えて温め、内側から健康にしてくれます。


調味料選びは慎重に

毎日口にする調味料、特に醤油や味噌は、米・大豆・塩・小麦の4つのシンプルな原料からできているものを選びましょう。それ以外のよく分からない原料や添加物の入っているものは避けたほうが安心です。よい醤油は酸化しやすいので、1カ月ほどで使いきれるサイズを。また、塩はミネラルの入った自然海塩などがおすすめ。


“砂糖と油”は控えめに。

砂糖と油は、脳が「もっと食べたい」と指令を出すので、食べ続けると常に欲しくなってしまいます。体を冷やす元凶なので、摂りすぎには気をつけて。特に砂糖やブドウ糖は、コーヒーや清涼飲料水などで意外に摂っていることもあるので、飲み物はできるだけ水かお茶に切り替えて。


空腹を楽しもう

“空腹感”は体の声を聞くための大切なサイン。間食が多いときは体の調子が乱れている証拠です。ちょこちょこ間食がやめられないときや「食べすぎたな」と思ったら、「ごはんが食べたーい!」と思うまで胃腸を休めてあげましょう。


“普段着食”と“よそ行き食”を使い分けよう!

「毎日和食にしなきゃ!」とストイックに考えすぎても辛いですね。時には外食や飲み会などの“よそ行き食”でリフレッシュして、その後は分づき米や雑穀湖畔味噌汁をベースにした腹八分目の“普段着食”にする、などうまく使い分けて、旬を楽しみ、よく噛む食生活を続ければ、美しく健康な自分へと変われますよ。

もっと知りたい食とカラダ。
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written by 編集部