「養子縁組」で作る、新しい家族

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 自らが養子であると名乗る人物に初めて出会ったのは、90年代の韓国でだった。通っていた大学のクラスメートのうち、2人のアメリカ人が全くのアジア人の容姿で、彼らはそれぞれ「韓国で生まれ、アメリカ人に養子にもらわれた」「中国で生まれ、アメリカで養子にもらわれた」と語った。当時の私は何だかとてつもなくアンタッチャブルな事実を告白されたような気がして、慌てて話題を変えたのを覚えている。2人の底抜けに明るい性格が不思議な違和感として今も残っているのは、私の浅はかな先入観のせいに他ならない。

 その後、アメリカ人と結婚し、アメリカ人に囲まれる生活をして、「私は養子」という人がアメリカにとても多いことに気が付いた。調べてみると、アメリカでは毎年5万件以上もの養子縁組が行われているのだった (※1)。一方、日本の養子縁組数は年間約540件(※2)。生みの親と暮らせない子どもは約4万人おり(※2)、これがアメリカなら、(ざっくり言い過ぎだが)1年未満で0人になることになる。

 そして現在。すっかりアメリカの感覚に慣れてしまった私は養子縁組を夢見ている。自営業のため審査に通りにくいというのもあるが、たとえ審査に通ったとしても、養育はたやすいものではないだろう。養育過程では、血のつながった親子でも放棄したくなるほどのさまざまな問題が待ち受けているはずだ。そのため一般的に、親側は養子縁組の前にさまざまなセミナーを受講しなければならない。これは日本でも同じだ。

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 実際に「養子を考えている」と人に話したとき、アメリカ人と日本人では反応が全く異なる。アメリカ人の場合は「グッドアイデアなんじゃない?」と100%肯定的な意見が返ってくる(これが良いか悪いかは別として)。
しかし日本人に話したときは、「浅はかな考えはやめなさい」と最初からいきなりシャットアウトする人や、「血は争えないよ」とはなから養子を問題児と決めつける人もいた。概してほぼ否定的な意見だったが、若い世代に話せばもっと肯定的な意見が聞けるかもしれない。どうだろう? 血を大切にする日本では、養子縁組は進みにくいのかもしれない。でも私は人を血で判断したくないし、しない。血がつながっていてもうまくいかない家族もいるのだから。

 ここに養子縁組に関する日本の調査結果がある。「養親の95%は子どもを育てて良かったと思っており、迎えられた子どもの96%が養親から愛されていると感じている」(※2)。血に勝るものがあると信じられる世の中は温かい。愛されたい子どもが、愛したい私を、あなたを、今、どこかで待っているかもしれない。


※1 米国保健福祉省https://www.acf.hhs.gov/sites/default/files/cb/children_adopted2014.pdf
※2 日本財団ハッピーゆりかごプロジェクトhttp://happy-yurikago.net/about/

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猪股るー

元アヴァンティ副編集長。2016年1月にロサンゼルスにて広告代理店「Ru-Communications LLC」を起業し、日本企業の全米進出をサポートしている。著書に『愛する日本の孫たちへ』(桜の花出版)、韓国で出版された語学テキスト『チョルムン イルボノロ マルハジャ(今どきの日本語で話そう)』(サラミン出版)などがある。
WEB www.RuCommunications.com

written by 編集部