「ひやっ」「どきっ」を解消し、より多くの人命を助けるために。/AUTHENTIC JAPAN 株式会社

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 資本金1億9千万円。まもなく増資して2億5千万円になる予定。そんな莫大な資本がつき、2020年に上場を目指す会社が福岡にある。

 「いったい、どんな会社?!」と、大名小学校跡地のスタートアップ施設「フクオカ・グロウス・ネクスト」に入居したばかりの、オーセンティック・ジャパン社長、久我一総さんを訪ねた。

 ネットで注文したという黒の机と茶色の椅子は男っぽく、フローリングの床に敷いたカーペットがいい雰囲気を出している。窓から明るい日差しが差し込み、新緑の葉がきらきら輝いていた。

世の中にないものって、あるんだ!

 オーセンティックジャパンの商品「ヒトココ」は、全く新しいヒト探索機器だ。GPSがあるから、そんなのいらないじゃないかと思っていたら、大間違いだった。

 親機でサーチをかけると子機の電波をキャッチしてその電波をたぐり寄せ、子機を持つ人に辿りつく。たとえば、デパートなどの施設の中で子どもが迷子になったときや地下街では、GPSは機能しない。徘徊して見当たらなくなった認知症のお年寄りを探すのにも威力を発揮する。そんな商品、今まで世の中になかったのだそう。

 さらに、山岳遭難時に、ヘリコプターで探索する「ココヘリ」は、「ヒトココ」の子機を会員証として送付し、年会費3,650円でまかなう。「登山した家族の行方がわからない」とコールセンターに連絡すると全国7台の契約ヘリコプターが上空から無料で探索し、警察につなぐ。東京消防庁のハイパーレスキューをはじめ、全国の警察・消防・自衛隊で活用されている。当初、数万円で販売していたが、会員に無料で貸し出しするという仕組みを一年前に考えつき、変更した。

「お客さんって無理言うんですよね。もっと安くしろとか、タダにしろとか、すぐ来いとか。だったら、タダにして会費をいただこう、ヘリコプターを出そう、とか考えて。去年思いついたんです。思いついて2ヵ月後に始動しました」。「ココヘリ」は、昨年、雑誌「経済界」の「金の卵発掘プロジェクト 2016」でグランプリを受賞した。

上場までの道のりは

 久我さんは、地元の西南学院大学卒業後、大橋の九州松下電器株式会社に入社し、バイヤーをしていた。理系でもなんでもない。アジア各地を出張し、5年間イギリス駐在をした。楽しいサラリーマン人生を送っていて「起業するつもりは全くなかった」という。

 初めての出張先はマレーシアだった。担当していたPBXという商材は、企業などの施設に設置し、電話機同士で内線通話や外線との接続を行う電話交換機だった。実は、この商材が、「ヒトココ」の発想の元になっているという。

 「ヒトココ」は、人のための仕組み。子どもが小さく、おばあちゃんがいて、こんなものがあったらいいなと思っていた。同僚の技術職の友人と話すうち、2人で起業することになった。会社員時代の2011年に登記をし、2012年に創業した。

 「シリコンバレーにはスタートアップを支援するエコシステムがある」とよく聞く。「ベンチャーのエコシステムは、①税制や施設など行政のサポート、②資金調達、③作ったものを広げる仕組み、④人材確保だと理解しています。日本は、②と④が弱いと思う。名もなきベンチャーは人の採用に本当に困ります。資金調達の仕組みも成熟していない」と久我さん。アメリカでは有名大学出身者がベンチャー企業に入るのは普通だという。

 さて、「ヒトココ」利用者は約1万人を超え、「ココヘリ」は現在毎月1000人以上が入会している。ネット販売、口コミがほとんどだという。上場までの道のりは、40万個販売すること。そのために、今年から、集めた資金を広告に使う。「ひやっ」「どきっ」を解消し、より多くの人命を助けるために。

img1707_venture2大名小学校跡地に5月にオープンしたスタートアップ施設「FUKUOKA growth next」。 

img1707_venture3小学校の教室がベンチャー企業のオフィスになり、カフェや泡バーもある。

img1707_venture4小さくて軽い「ヒトココ」。この商品で世界を変える。

村山取材メモ

さわやかな青年起業家に期待大!

◎ピッチを磨け!
◎受賞は信用につながる。
◎アイデアを商品に。販売の仕組みはあとから思いつく。
◎英語は武器。海外経験は、新しい発想を開く。

AUTHENTIC JAPAN 株式会社
代表取締役

久我 一総さん
福岡県生まれ。西南学院大学文学部外国語学科英語専攻。3人の子どもの父親。大学時代にアメリカ留学。2002年九州松下電器(現・パナソニックシステムネットワークス)入社。イギリス子会社へ5年間出向。10年に帰国後、12年に同社を退職し、起業。


AUTHENTIC JAPAN 株式会社http://www.authjapan.com/

企業理念/良品を通じ、人々の生活と心をより豊かなものに変えていく
創業/2012年
代表取締役/久我一総
資本金/1億9,100万円
主要株主/AUTHENTIC JAPAN 株式会社、CBC株式会社、株式会社DOGAN、佐銀キャピタル&コンサルティング、テレネット株式会社、株式会社ヴィンテージ
事業内容/人命探索機器「ヒトココ」の製造販売
社員数/8人
社員構成/男:女=7:1
平均年齢/44歳