<スキルス胃がん 「告知」>

どれくらい 泣いていただろう・・・
なぜ泣いていたのかも 未だに理由をはっきり言葉にできない
「ショック」という言葉じゃ マッチしないし
「まっ白」でもない
今までの人生が 一瞬にして 白黒になって止まってしまったような
色のない世界に一人ぽつんといるような・・・そんな感じで
周囲の何も見えていなかった
何も受け入れられない 心が置き去りになっていた
そして ただ 泣いていた

旅行から戻りすぐに紹介状を持って消化器内科へ直行
「スキルス胃がんを疑っているから・・・」と言われ
すぐにネットで「スキルス胃がん」を調べてみたけど
その結果があまりにも厳しいことばかりで 検索するのをやめた
自分の思考スピードより速く 色んなことが一気に加速してきた
その時はそんな感じだった

がん拠点病院の「胃がんのプロ」といわれる先生を紹介され
お話するだけで心が温まるような そんな優しい笑顔の先生が
CT ・ 胃透視 ・ そして胃カメラの検査直後の検査室で
「スキルス胃がんで間違いありません」 と あっさり「がん告知」
胃カメラを外したばかりで 少しボーっとしていたけど
先生は 「早期ですか」   の問いにも 「NO」
「じゃ 末期ですか」 の問いにも 「NO」 だった
がんの告知って こんなもんなんだ
もっと仰々しくて重いと思っていたから さらーっと一言で告知されて ちょっと面食らった

診察室に映し出された私の胃の写真 まるで枯れ枝のように細くなっていた
・・・これが 胃なの?!
私がずーっと感じていたみぞおちのコリコリは
がんに覆われ硬く細くなっていた胃だったんだ
――― ようやくコリコリの正体がはっきりした
先生がその写真を見ながら 呟いたひとこと
「なんとか 助けてあげたいな・・・」そんなに・・・厳しい状態なの?
様々な想像が頭の中を一気に駆け巡った

私は細胞検査でもがんは発見されず、腫瘍マーカーも正常値だったけど
胃透視での胃の形やCTでの胃の壁の厚み、胃カメラでの胃の狭窄状態などが
スキルス胃がんを示していた
「スキルス胃がんで間違いない。すぐに手術しましょう」と
もちろんそんな枯れ枝のような胃なんか早く取ってほしいと思ったけど・・・
だんだん 得体のしれない何かに自分自身が包み込まれてしまい
突然大粒の涙が一つ落ちた
びっくりした 意識外だった 泣くなんて・・・
それから 冷静に手術の説明を聞いている私と
ずーと涙が止まらなくなって泣いている私と
両極端の私がそこにいた
泣きながら「大丈夫ですから 大丈夫ですから ・・・」と先生に言いながらも
涙だけは止まらなかった ずーと ずーと
近くにいた母のことも忘れて  ずーと ずーと 泣いていた
今、その時の母の気持ちを思うと  また 胸が詰まる・・・
☆いっこ☆

written by 編集部