中村七之助さんにインタビュー「二月花形歌舞伎」

博多座に歌舞伎界の若手が勢揃い!2月上演「二月花形歌舞伎」


2018年2月、歌舞伎界の若きイケメンが博多座「二月花形歌舞伎」で勢ぞろいします。
演者は中村勘九郎、中村七之助、尾上松也はじめ、歌舞伎のみならず数々の舞台や映画でも活躍する、歌舞伎界期待の若手たち。来福した中村七之助さんが、「今回の舞台は、普段『歌舞伎って難しそう』と思っている歌舞伎初心者にこそ観にきて欲しい」と話してくれました。

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― 5年ぶりの博多座ですね。
はい。やっと来ることができました。博多座で若手の歌舞伎を、という話は前々からあったのですが、今回実現できて本当にうれしいです。僕と同じ年代の歌舞伎俳優は、兄の勘九郎と尾上松也ぐらいなので、この仲のいい3人でやれるのは楽しみです。演目もかなり考え抜いて、面白いものを選びました。

― 七之助さんが7つの役を演じ分ける『お染の七役』は、今回で3度目の上演ですね。スピーディな早替わりで七役を演じ分けるのが見所のひとつです。

お家騒動に若者たちの恋が絡み、様々な人間の欲望が渦巻く「お染の七役」は、とても面白いお話ですが、最初の設定が分かりづらいため、今回は初めて脚本に手を加え、“お家騒動から始まる物語である”ということを分かりやすくしました。これは博多座が初お披露目なので、楽しみにしていただきたいです。他にも兄が演じる喜兵衛にも早替わりしてもらおうかなどと、色々と考えている最中。とにかく「面白くしたい!」という一心です。役の早替わりは、僕も大変ですが、衣裳を脱ぐ位置や角度など、一つ手が狂うとめちゃくちゃになるので、裏方も戦場のようです。初役の時、(坂東)玉三郎さんに「早替わりショーになってはいけない」と教えていただいたので、単に衣裳が変わるというだけでなく、一つひとつのキャラクターを掘り下げて演じ分けることも意識しています。

― 七役を演じ分けるのは大変そうです。
そうですね、でも慣れてくると、どこでスイッチが入るのかはわかりませんが、不思議と徐々に役に入っていけます。「さあ、切り替えるぞ」という意識はありません。どの役にもそれぞれの思い入れがありますが、「土手のお六」は一番粋な女性で、演じるのが面白いですね。意外と難しいのが物語の主役である「お染」。七役のベースとなる役なので、バランスが難しいです。

お染 質屋油屋の令嬢。丁稚の久松と道ならぬ恋に落ち、駆け落ちしようとする。このお染の行動と様々な登場人物の思惑が複雑に絡み合い物語が動いていく(撮影:渡部孝弘)

お染/質屋油屋の令嬢。丁稚の久松と道ならぬ恋に落ち、駆け落ちしようとする。このお染の行動と様々な登場人物の思惑が複雑に絡み合い物語が動いていく(撮影:渡部孝弘)

土手のお六  亭主の鬼門の喜兵衛と莨(たばこ)屋を営む。伝法肌(威勢が良く激しい気性)で悪事も働くが、過去に受けた恩に報いようとする一面も(撮影:渡部孝弘)

土手のお六/亭主の鬼門の喜兵衛と莨(たばこ)屋を営む。伝法肌(威勢が良く激しい気性)で悪事も働くが、過去に受けた恩に報いようとする一面も(撮影:渡部孝弘)

ー 女形を演じるうえでは、どのような所作を意識していますか
全身に思いをめぐらせ、指先まで感情が届くように意識します。この『お染の七役』でも、お染はお嬢様に見えるよう、首をかしげる仕草をするのですが、頭のてっぺんにあるお茶碗から、水が垂れているような仕草にしなさいと玉三郎さんに教わりました。声を変えなくてもお染だと分かるように、可愛らしい娘の「型」で演じています。

― ファンはもちろん楽しみな舞台ですが、歌舞伎初心者はどのように観劇したらよいでしょうか。
今回は、「お染の七役」をはじめ、どれも分かりやすくて楽しめる演目を選んだので、初めてという方こそ、歌舞伎にはまるきっかけになると思います。ストーリーや場面の説明をするイヤホンガイドがありますが、それが無くても分かるくらい。観て後悔させない自信はあります。福岡のお客様は、演者が本気でまっすぐにぶつかっていけば、その情熱を受け止めてくださって、まるで舞台と客席の垣根がなくなるような土地柄なので、僕は大好きです。ぜひ多くの方に見ていただけたらと思います。

◆お染の七役あらすじ◆

質店油屋の娘、お染には、奉公人の久松という恋人がいるが、義母の貞昌は、山家屋清兵衛の縁談話を進めていた。久松は元は武家の息子で、紛失した御家の名刀「牛(ご)王(おう)吉光(よしみつ)」と折紙(鑑定書)を探している。しかもお光という許嫁もいた。一方、お染の兄の多三郎は、芸者、小糸を身請けするため、店から「牛王吉光」の折紙を持ち出し、番頭の善六に金に換えさせようとする。しかし、善六には、あわよくば、店もお染も手に入れようという魂胆があった。
 一方、久松の姉で奥女中の竹川は、刀を買い戻すための金の工面を、土手のお六に頼む。だが、お六の亭主、鬼門の喜兵衛は油屋から金をだまし取ろうと画策しており…。
 お家騒動に若者たちの恋をからませながら、善人、悪人、さまざまな身分、職業の男女が入り乱れ、人間の欲望が渦巻く鶴屋南北独自の世界が展開していく名作。

 

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中村七之助 プロフィール〈中村屋〉
1983年生まれ。十八世中村勘三郎の次男。中村勘九郎は兄。1986年9月歌舞伎座「檻(おり)」の祭りの子勘吉で初お目見得。1987年1月歌舞伎座「門出二人桃太郎」の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名乗り初舞台。父勘三郎や母方の祖父七世中村芝翫の教えを受け、「金閣寺」の雪姫や「京鹿子娘道成寺」の白拍子花子など女方の大役を次々と演じ、今最も美しい女方のひとりと言われている。また新作歌舞伎、新派の舞台でも清新な魅力を発揮、その一方、白塗りの二枚目役もこなす。

二月花形歌舞伎
期間/2018年2月2日(金)~25日(日)
昼の部 11:00~ ◆磯異人館 ◆お染の七役
夜の部 16:00~ ◆義経千本桜 渡海屋・大物浦 ◆鰯賣戀曳網

会場/博多座 
観劇料(税込)
A席 15,000円、特B席 12,000円、B席 9,000円、C席 5,000円

博多座「二月花形歌舞伎」ホームページ
written by 編集部