< 決意 >

翌朝目覚めたとき
切ったお腹を無意識にかばっていたのか
身体の色んなところがしびれた感じがしていた

看護師さんは優しく私に日常をスタートさせてくれた
歯磨き・・・といってもブラッシングとグチュグチュ程度
洗顔・・・タオルで顔ふき
術後の私にはそんなことも、やっとの作業だった

一通りの朝が終わったころ
執刀医のH医師が「おはよう」ってICUに入ってこられた そして
「手術で胃は取れんかったんよ・・・」って
私の右斜め前に立って さりげなく 私を見るような見ないような微妙な体制で
手術できなかった理由を はっきり教えてくれた

先生方はいつもそうだった
正直に口ごもることもなく スパッと事実を伝えてくれる
そのお陰で私はずーと先生方を信頼することができた

やっぱり・・・胃がむかむかするからそうかなぁって思ってました」って答えた
不思議だけど 心に妙な安心感が広がった
先生にはどう映っていたかはわからないけど
冷静に考えれば、お腹開けてそのまま閉じたと聞けば「最悪」と感じるはずなのに
その時は正直「ほっと」した

なぜなら 手術前の説明での合併症のことが物凄く怖くて
それを避ける事が出来るなら 手術できない方がいいと  少し思っていて
だから 胃を取っていないと聞いた時 これで合併症には苦しめられないと思った
そこが素人というか・・・
病気の優先順位がよく理解できていない 相手は 手強いスキルス胃がん なのに

最初の心の動きはそうだったけど すぐに 手術できなかった事は心に「ズシン」ときた
そりゃ 「お腹開けたけどそのまま閉じた」 と聞かされて 「平気」なはずがない
ただ なんて表現したらいいのか
心に準備ができていたというか 予感みたいなものが既にあったから
わりと冷静に受け止められたんじゃないだろうか
本当に クールだった その時の私

続けて先生が
「抗がん剤治療に切り替えるからね。1か月をワンクールとして6クール」
「先生 抗がん剤で胃は元にもどるんですか?」
「劇的に効けばね。元に戻る場合もあるよ。」
その言葉は私に期待させるような響きではなかった ただ淡々と ―――

「6クールか ・・・ じゃ6か月は生きられるってことですね?」
私は半分冗談のように尋ねた
「・・・・・・」
先生は無言だった

当然返事が出来るわけがない
家族には2~3か月と告げられているのだから
そんな事を知らない私は
先生がいつも通り優しい顔をしていたので
質問の答えを「肯定」されたと思い込んで

すべてに見捨てられたわけじゃない まだ抗がん剤治療がある!それならそれに賭けよう!
そうすれば半年後にはまたみんなと一緒に 普通の生活に戻れる!!
絶望感は よぎりもしなかった
その時は抗がん剤の辛さも知らないから 頑張れると思った

そして腹も決まった
だって後戻りできるものじゃないし 前に進むしかない
強く決意した 「私は負けない!!」
☆いっこ☆

written by 編集部