おおいたに暮らす VOL.1

本当のゆとりを知って、働き方も暮らし方も、豊かさ満喫!

福田 まや グラフィックデザイナー 京都→中津市耶馬溪移住

福田 まや グラフィックデザイナー 京都→中津市耶馬溪移住

奈良出身の福田まやさんと大分県を引き合わせたのは、彼女の両親が働いていた会社の同僚。その方が30年前に耶馬溪に移住して以来、福田さんは毎年、親に連れられてこの地を訪れるようになった。

「子どもの頃は良さがよくわからなかったけど、大きくなるほどどんどん好きになって」

そんな福田さんが、夫婦で大分に移住したのが6年前、27歳の時だ。
夫は京都で10年修行した植木屋さん。付き合い始めの頃から二人で耶馬溪に遊びに来ていて、「早めにリタイアして、“いつか”ここに住もうね」と話していた。その計画が大幅に繰り上がったのは、2011年の東日本大震災がきっかけ。福田さんは東京の外資系広告会社に勤務し、世界的に有名なタバコの広告デザインを手掛けるなど着々とキャリアを積み上げていた。震災はその矢先のこと。たくさんの方が亡くなり、福田さんも13階にあるオフィスが激しく揺れて、死を思った。

「 “いつか” というのを置きっぱなしにしてはいけない。やりたいことはすぐに実現しないと。震災を体験し、そう強く思いました」

夫の説得には少し時間がかかったが、元来自然が好きな人。移住後は、植木とデザインの二事業による「星庭」を設立して活動している。

地に足付けた暮らしに安らぐ

自宅と事務所を兼ねた家屋は、耶馬溪でも山手にある。なんとこれは夫婦で手作りしたもの。

「家探しをしている時、柱と屋根だけの建てかけの家があって、自分で何とかするなら住んでいいっていう話が舞い込んできたんです」

2年がかりで完成した家屋は、2階建ての3DK。周囲の自然に溶け込む木造りのかわいらしい外観のお家だ。耶馬溪の冬は寒いので自然エネルギーの薪で燃やして沸かす床暖房もつけた。米、野菜などの“食”作りも始めた。夫はなかでもスイカ作りが得意で、去年も10㎏近い大物ができたそうだ。

一方で福田さんはといえば、優しい猟師さんに出会って、自らも狩猟の免許を取得。イノシシやシカをさばくこともできる。東日本大震災時の東京で “食べること” “暮らすこと” といった生きるための要素が分断されるのを経験した福田さん。移住当初は、自給自足的生活が一番だという思いに駆られていた。

「だからこそ、家造りも畑作りも猟もしたいと思ったんです。でも、暮らしていく中で少しずつ変わってきました。そんなに力んでサバイバーになる必要はなく、もっと力の抜けた、地に足付けた暮らしが一番、大切。田舎ですごくいいのは、自然がすぐ近くにあって生き物としてバランスやリズムが取れているなって思えるところ。そして、田舎だからこその人とのつながりも。助けてもらったり、助けたり。なんだかすごく安らいで暮らしています」

移住2年後の2014年には長女を、17年に次女を出産。移住後は人生の大事業の連続だが、彼女が難なくこなしてきているように見えるのは、自然体だからこそ出てくるパワーも手伝っているのだろう。

2▲福田さんの自宅。庭とデザインの事務所『星庭』のオフィスも兼ねている。この自宅は夫婦の合作。

地方では希少な
マルチタスクなデザイナーとして活躍

もちろん、福田さん自身、パワフルにキャリアを積んできた人である。

早くデザイナーになりたいと、高校を途中で辞めて、印刷会社で見習いを半年間。その後、デザイナーとして地元の観光業の企業に就職し、Webサイトの制作やグラフィックデザイン、空間デザインなど、幅広い業務を経験。その間に著名なグラフィックデザイナーのワークショップを受けたのをきっかけに、その人が講師を務める大阪のインターメディウム研究所(彩都IMI大学院スクール)で3年間勉強した。グラフィックデザイン、現代美術、映像などを横断的に学びながら、さまざまな社会的プロジェクトにも携わることができたという。

同校の学生時代に、バイクで旅した北海道の民宿で、ひょんなことから民宿雑誌の仕事を一冊丸ごと受け、これが実質的な独立になった。24歳の時、より広い世界を求めて、東京の外資系の広告代理店に入社。大型広告制作のスキルを積んだ。

これだけのキャリアを積むと、チャンスの多い中央から離れるのは不安もリスクも大きそうだが、案ずるより産むが易し。幅広くスキルアップしてきた福田さんは地方では希少な人材で、プロモーション全体を依頼される案件も多く、仕事は成長軌道を描いている。

移住2年後の2014年には、福岡県飯塚市のチョコレートショップの立ち上げに携わり、ブランドのコンセプト作りからネーミング、ロゴ、パッケージなどデザインを担当。大分の百貨店トキハ本店などにお店を持つ『耶馬溪ライフ』の依頼で、耶馬溪の素材をつかったドレッシングのパッケージを制作するなど、大分県内の企業と協働事例も多い。

また、大分は全国的に地域デザイニングが活発な県でもある。福田さんは、CPO(CREATIVE PLATFORM OITA:クリエイティブな手法による新たな産業創出を目指す、大分県版クリエイティブ産業)からの紹介で、化粧品メーカーが開発した温泉水『Beppu ゆ』のプロモーションやパッケージデザインにもリサーチ段階から関わっている。先日、世界温泉地サミットが同県で開催され、この温泉水を温泉地サミットへの提供飲料にしたのは、彼女のアイディアだ。

デザインの力で、大分の食やものづくりを全国へ発信していくことは彼女の目標の一つだ。

仕事はあっても最高、なくても最高!

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「でもね、仕事があっても最高だし、なくても最高なんです」

と、福田さんはなぞかけのような言葉を放った。

「仕事がゼロになっても、ここだったら暮らせる。お米や野菜を作っているし、地域全体が豊かなので、たくさんのお金がなくても食べることには困りません。無理をして自分の意に沿わない仕事をしなくてもいいって、本当に豊かな働き方です。そのゆとりが、挑戦するエネルギーにもなります。自分が本当にこういうことを世の中に出したいんだということに対して、すごく熱意を傾けられるのは幸せなことです」

仕事と子育ての両立も順調。集落で二人しかいない幼児だから、近隣のおじいちゃん、おばあちゃんたちがとてもかわいがってくれる。ご近所にお茶をしに行ったり、ベビーシッターをお願いするのは日常茶飯事だ。

「大分に暮らすなら、山奥もいいですよ。仕事柄、徹夜はするんですけど、夜はフクロウが一緒に起きていてくれるし(笑)、日が昇ると小鳥のさえずりが聴こえ始める。これぞ自然、地に足付けた生活です。さっき“挑戦できる”って言いましたが、地面とつながっているからこそ、安心してやりたいことに向かってジャンプできるんです」

働き方、人生……本当の豊かさという飛距離をどこまで伸ばしていくのか、福田さんの大ジャンプから目が離せない。

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ふくだ・まや 1985年生まれ、奈良県出身。インターメディウム研究所、関西・東京での広告代理店勤務などを経て、京都より2012年に大分県中津市耶馬溪へ移住し、デザイン事務所『星庭』設立。ブランディング、パッケージ、ロゴなどのデザイン、森でのイベントなどさまざまなプロジェクトを行っている。

今回の取材でお邪魔したのは……耶馬溪のおしゃれカフェ『陶cafeしきろ庵』

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ギャラリー&カフェで供されるスイーツは
すべて手作り無添加

取材場所の「陶cafeしきろ庵」は、移住者仲間の陶芸家の末安心太さんが営むカフェ。福田さんがロゴ、パッケージデザインなどを担当した。「しきろ庵」とは、末安さんの窯元の屋号。敷地内には、カフェのほか、作陶のためのアトリエがある。

末安さんは、8年前の2010年に、作陶に向いた場所を求めて、福岡県久留米市から耶馬渓に移住した。近隣の山々の間伐材を燃やした灰や、地元で取れるお米を燃やしたものなど自然の釉薬を作品に使うのが特徴だ。ギャラリーでは生活の器だけなく、前衛的なオブジェ作品も並んでいる。購入もできる。

また、「しきろ庵」のある地区は、45年くらい前、全国に先駆けて有機宣言をした下郷農協が核。カフェで提供される「フレンチトースト」やケーキの材料はすべて手作り無添加。

末安家には今年7月に第4子が誕生する予定。子どもたちを自然の環境、自然の食べ物で育てられることは移住の大きなメリットの一つだったという。

<メニュー 一例>

 珈琲&バニラアイス(かき氷)850
 フレンチトースト 950
 フレンチトースト(バニラアイス付き)1100円 

 

しきろ庵

▲しきろ庵の外観。末安さんは、移住後に約300坪の土地を購入。敷地内にはカフェやギャラリー、アトリエがある。建物は自宅以外、すべて自作。

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▲ギャラリー&カフェ『しきろ庵』を営む末安さんは、移住者としては、福田さんより2年先輩。「久留米にいた頃は、病院があるから安心だと思っていましたが、子どもたちは病気にならないから、病院がいらないんです(笑)。病気にならないのはやはり食べ物が良いから。頼るべきは病院ではなく、人間がもともともっている自然治癒力なんです。現代人が見失っている当たり前のことを、当たり前に享受しています」。

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▲優しい丸みを帯びた大ぶりのコーヒーカップは、末安さんの作品。ギャラリーでは、食器やオブジェも販売されている。夏はかき氷をお目当てに来るお客様も多い。季節の果物を使ったケーキやパンはすべて自家製。

6C6A255001 陶cafeしきろ庵     
住所/大分県中津市耶馬溪町大字金吉862
営業時間10:00〜17:00
定休日毎週火・金曜日
09079273161
フェイスブックページ⇒ www.facebook.com/cafeshikiroan/

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written by 編集部