
研究室訪問・今月の名物教授
| →研究室訪問に戻る |
原詩から広がる、「詩の世界」 / 船津 建先生

船津 建先生
福岡教育大学 国際共生教育講座 講師
ふなつ・はじめ / 東京外国語大学大学院修了後、福岡教育大学に勤務。講義ではドイツ語の他に、主に映画を題材としてマイノリティーや共生社会の問題を説く。趣味は日曜大工。自宅内に友人の協力を仰いで建てたログハウスの中で本を読んだり、音楽を聴いたりする時間が至福の時間。
緑に囲まれたとても清々しいキャンパス。校舎の中、迷路のような廊下を抜けて研究室に辿りつく。少し緊張しながら戸を押すと、「遠いところを、ようこそ」と笑顔の船津先生。机の上にコーヒーカップをキレイに並べ、迎えてくださった。
『ローレライ』に隠されたヒミツとは?
先生の専門はドイツ語。ドイツと言えば、詩や音楽などを育み、発信してきた文化大国だ。ドイツ語を研究していく中で詩の世界の魅力にどんどん惹かれていった先生。
最初に、ドイツの有名な詩『ローレライ』について教えてくれた。
ある伝説をもとにハインリヒ・ハイネが詩をつけ、生まれた『ローレライ』。ライン河沿いにある大岩ローレライ、その昔難所ともいえるこの場所には行く船人を美しい歌で惑わして進路を狂わせて難破させ、川底に沈めていく美少女がいたとの不思議な言い伝えがあった。この伝説は、今や中世ヨーロッパがもたらした負の遺産とされている“魔女狩り”を語り継いだ伝説だとの一説もあると先生は説く。このような歴史のタブーを歌ったとも言われるハイネの『ローレライ』だが、実は詩自体が、歴史に翻弄されながらも強く生き残ったというストーリーを持つ。ナチスの時代、ユダヤ人であったハイネのこの詩を歌うことは禁じられていた。だがこの詩を愛していた民衆たちによって、ハイネの『ローレライ』は作者不明という仮面を被らされ、根強く歌い継がれていったのだそう。この『ローレライ』は、日本でも訳詞がつけられ親しまれている歌だ。「日本の唱歌の中には外国の歌をもとにして作られたものも数多くあるのですが、日本語訳詞がつけられたときに原詩が持つニュアンスや重要なセンテンスが抜け落ちてしまっているものもたくさんあるんですよ」と先生。
詩は、原詩とじっくり向き合って初めて、その意味や深さが窺い知れるのだ。
詩の心を知って、
詩と共に生きるということ。
ドイツ語を皮切りに、先生は韓国語や英語の詩など、様々な国の詩への造詣を深めていったそう。「恋の歌や仕事の歌、故郷の歌、戦争の歌など、誰が作ったのか最初に誰が歌い出したのか分からないまま私たちの日常に溶け込んでいる歌の原詩を調べてみるのも面白いですよ」。生活を楽しむためだったり、辛さを忘れるためだったり。人はいつの時代も想いを歌に託し、歌に乗せた想いは国を超え、何百年もの時間を超えて私たちの心に訴えかけてくる。例えば大切な故郷や母親を偲んだ詩は普遍的であり、実際日本と韓国にそっくりな歌があるらしい。戦時中に世界各地の若者によって歌われた歌の中にも、同じように悲しみや希望をつづった歌がある。
「目で追って理解し耳で楽しみながら、詩に込められた想いに心を動かされる。異なる時代や国で生きている、生きていた人々と通じ合える。それが原詩を知る魅力ですね」と最後に少年のような瞳で語ってくれた先生。
毎日をちょっと豊かにしてくれる詩の世界があなたを待っている。発見あり、感動ありの2時間を楽しもう。
イベントレポートはこちら
→3/23 アヴァンティ・ゼミ 「耳に心地よく、触れて楽しい詩心」
2006年02月22日 11:20 | TrackBack




