五月 【第十二回】

◆江戸に倣う、北九っ子の粋。江戸前鮨と天心特別純米酒てんしん
◆素材の旨味を活かしてこそ。岡山県産の白みる貝と麹屋純米吟醸

江戸に倣う、北九っ子の粋。
江戸前鮨と天心特別純米酒てんしん

天心(てんしん) 純米酒
720ml 1,208円
山田錦
精米歩合60% 米・米麹
アルコール15度以上16度未満

食に合うように香りはあまり高くなく、純米酒だけどさわやかさのある味。
溝上酒造 株式会社
福岡県北九州市八幡東区景勝町1-10
TEL:093-652-0289
至極シンプルなラベルが、蔵元の人柄を語る。『溝上酒造』の溝上智彦さんは、十数年前、全く知らなかった酒造りの世界に飛び込み、二年目には杜氏になったという異例の経歴。

大学や研究所で学んだ経験はなく、ただ自分の舌を信じて、米と水を相手に格闘し、いまや毎年賞を取るお酒に育ててきた。この叩き上げの蔵男が目指すのは、味はあるけど透明感があって後味のキレる酒。「色々講釈は言わんで、呑んでみておいしければいい」。ぶっきらぼうだけど心はアツい。

そんな心意気がまるで江戸っ子のようだ、と江戸前鮨と合わせた。「風呂上りにふらり屋台で、鮨をアテに酒をくいっ。これがにぎり鮨の生まれた江戸後期の鮨屋の形」とは『二鶴(にかく)』の二代目船橋節男さん。

彼が握る、酢飯に砂糖を使わない鮨は、北九ではちょっとした噂だ。塩と酢、甘くない醤油を使うとこんなにもネタとシャリの味がストレートに伝わるものかと驚く。鮨ひとくち、酒ひとくち・・・どちらも後味の引きがよく、手が止まらない。この北九州の鮨職人と蔵男の粋は、多くは語らずとも咀嚼すればわかる。
【料理協力】
江戸前鮨 二鶴(にかく)
北九州市小倉北区足立1-4-31/TEL:093-531-2442
http://www.edomaezushi-nikaku.com/
ランチ1人前 2,100円~(赤だし・デザート付)、おまかせにぎり 5,000円~、おまかせコース 7,500円~

素材の旨味を活かしてこそ。
岡山県産の白みる貝と麹屋純米吟醸

麹屋 純米吟醸
720ml 1,313円
精米歩合55% 米・米麹
アルコール度数15~16度未満

米の旨味をそっくり酒味に。フルーティーな微香と香味のバランスが綺麗。
株式会社 高橋商店
福岡県八女市本町2-22-1
TEL:0943-23-5101
『福酒』をほとんど知らない時に人に勧められ飲んだのが、高橋商店の代表銘柄『繁枡』だった。きれいなお酒ってこんな感じなのかと、その時の印象は今でも記憶に残っている。後に聞けば、全国新酒鑑評会で18回の金賞受賞をしているとのこと。

そんな高橋商店でロングランの逸品が『麹屋』だ。すっきりとしたのどごしと、ふくらみのある高い香りが愛され、既に20年になるという。この爽酒を旬の海鮮に合わせたくて、訪れたのは今春4月高砂にオープンしたばかりの『酒剛』。「酒に合ううまい食材をシンプルに楽しんでほしい。一人でも安心して通ってもらいたい」と店主の河野剛さん。カウンター8席、テーブル2つという小さな店だが、料理は看板メニューの沖縄のアグー豚の溶岩焼き、博多赤どりの刺身に、自慢の鮮魚と充実している。

5月は貝類が旬を迎える。身も大きく、甘みも増し酒の肴にはもってこいということで、白みる貝をメインにした刺し盛を注文。乳白色の身にシコシコの歯ざわり、口中に広がる磯の香りと甘みは米の旨味を活かした『麹屋』に良くあった―。
【料理協力】
酒剛 
福岡市高砂1-15-7 シルバー高砂1F/TEL:092-531-3810(要予約)
営業時間18:00~
刺し盛 1,575円 溶岩焼 2,079円~ 地鶏刺盛り合せ 1,029円 日本酒 630円

四月 【第十一回】

◆青い春。筍の田楽と博多百年蔵しぼりたて新酒 タンク直詰・量り売り
◆キラめく春。アスパラとアオリイカの耳の春香ドレッシングと金襴藤娘大吟醸新酒

青い春。
筍の田楽と博多百年蔵しぼりたて新酒 タンク直詰・量り売り

しぼりたて新酒 タンク直詰め・量り売り
720ml 1,000円
精米歩合70%
米・米麹・醸造アルコール・糖類
アルコール17~17.9度

一切加熱処理をしていないお酒。この時期にしか味わえないフルーティさがいい。
石蔵酒造株式会社
福岡県福岡市博多区堅粕1-30-1
TEL:092-651-1986
青々とした杉玉が、蔵の軒先にかかる。「今年もお酒を搾り始めましたよ。おかげさまでいいお酒ができましたよ」という、この季節恒例のお知らせだ。

さて、今年のお酒はどんなできだろう。今回は、今だけしか飲めない新酒を二蔵から取り寄せた。通称“博多百年蔵”としても知られる『石蔵酒造』からは、生原酒。槽の口からこぼれるお酒をそのまま柄杓でいただいているかの様な、生まれたての勢い漲る味。合わせる料理も博多のお店を、と。

石蔵酒造から目と鼻の先、石堂橋のたもとにある『白つぐ』の店主に「春のしぼりたての生原酒に合うものを。ちょっと甘めのお酒です」というオーダーでアテをお願いする。出てきたのは、青々とした緑が美しい、筍の田楽。味噌、木の芽、山椒を練ってほうれん草の色素で色づけされた特製味噌を、熊本産の若い筍にのせて炙ったもの。

口に含むと山椒の香りがたちこめ、噛むと味噌とまだ若い筍の甘みがさらに香る。しぼりたてをあわせると、味噌とお酒両方のほろ甘さが引き立ち、これはもう春以外の何ものでもないだろうという青い味がする。

キラめく春。
アスパラとアオリイカの耳の春香ドレッシングと金襴藤娘大吟醸新酒

金襴藤娘 大吟醸 新酒
720ml 3,150円
精米歩合38%
米・米麹・醸造アルコール
アルコール17度

「花大吟」は、 そのナデシコの花からとったという珍しい花酵母で仕込んだ大吟醸。
合資会社 後藤酒造場
福岡県八女郡黒木町大字黒木26
TEL:0943-42-0011
創業1677年(延宝5年)の老舗。福岡で2番目に古い蔵『後藤酒造場』からは大吟醸の新酒。季節限定で、しかも大吟醸、という「今だけ、ここだけ、いいもの」に弱い女心にはたまらない。

このお酒のキラキラしたネーミングやラベルにも合う、金色のからすみが入ったドレッシングがかかっているのは、太い元気なアスパラとアオリイカの耳。アスパラは昆布だしでさっとゆがいていて、気づくか気づかないくらいのところできちんと和食の仕事がなされているのが心憎い。

ヤリイカでもコウイカでもなくアオリイカを選ぶのは、歯ごたえとやわらかさのバランスのよさ。アスパラの柔らかすぎない食感とアオリイカの耳の歯ごたえは、山のものと海のもの別のものなのに、“新鮮な”という共通の印象を残す一皿だ。お米をよく磨いたいい大吟醸の新酒だからこその、ちょっととんがった強さを、からすみがさらりとかわす感じがおもしろい。

同じ新酒の生酒にも関わらず、明らかに性格の違うこの2種類のお酒に、この2品を合わせた白次氏に脱帽の春だ。
【料理協力】
石堂橋 白つぐ 
福岡市博多区中呉服町10-1
<昼>定食 1,200円~(コーヒー、デザート付+400円)、コース 3,200円 
<夜>コース 5,250~7,350円 ほか各種一品料理 ※コース内容は相談に応ず

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