アヴァンティでは「27歳」を人生のひとつのターニングポイントと捉えています。社会人になって数年、自分の人生はこれでいいのか、もっと他の道がないのかと模索の真っ最中。この頃、悩んだり、一生懸命何かをしたことが、その後の人生につながっていると仮定して、福岡で活躍する女性たちに「私が27歳の頃」をテーマにインタビューしています。

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牧野 絹子さん Art&Cafe「EL SUR」オーナー

200704.jpg牧野 絹子さん
Art&Cafe「EL SUR」オーナー
まきの きぬこ / 1949年熊本県生まれ。東京で大学中退後、ジャーナリスト養成学校で学ぶ。雑誌社で見習い社員として働き始めたとたん、会社が倒産。ふと立ち寄った工芸作家の店で働くことに。23歳で結婚し、3人の娘をもうけるが33歳で離婚。39歳で最初の画廊を開き、8年8カ月後に閉廊。一昨年、再び画廊喫茶「エル・スール」をオープンする。

ほとばしるような何かを感じられる作品が好き

 10人ほどでいっぱいになりそうな画廊喫茶。日比野克彦作のテーブルが置かれ、壁には思わず見入ってしまうような味のある絵画が飾られている。自閉症の人々の作品らしい。「有名無名を問わず、ほとばしるような何かを感じられる作品が好きだし、応援したくなるんです」と愛しそうに作品を眺めながら牧野さんは語る。

 祖父が茶道を嗜んでいたため、幼い頃から古陶器に馴染みがあり、興味を持っていた。そのせいか東京で働き始めた雑誌社が倒産すると、まるで導かれるように工芸作家の店で働くことになる。そこでは後に人間国宝となる松井康成の作品をはじめ、大勢の作家と出会い、アートの世界に魅せられていった。
 その後23歳で結婚。九州に移り、しばらくは主婦業に専念した。この時期だけはアートに携わらず家事に没頭。27歳の頃は納得のいく味が出せるまで一週間毎日同じ料理を作り続けるような、凝り性で一風変わったお母さんだったという。
 33歳で離婚してからは、博多人形の絵付け、印刷、保険など様々な仕事に就き、3人の子供を育てるために無我夢中で働いた。その傍ら、百貨店などの展覧会を企画するアートプランナーの仕事を学び、陶芸店でお茶の世界について勉強した。そして「今やらなければ」と自分の店を出すことを決意。39歳だった。

中傷、そして娘一家の事故死という苦しみの果てに

 お世話になった陶芸店とたまたま同じビルでの出店となったため、これまで扱ってきた陶芸品から現代絵画に切り替え画廊をオープンした。どんな仕事をするときも「ここまではやろう」とハードルを立て、それを越えてきた牧野さんは「自分が取り扱った作品を美術館に購入してもらうこと」を次の目標にした。それからは純粋に好きな作品に出会うと日本全国どこへでも赴き、展覧会をさせてほしいと作家に猛アプローチをかける日々。「一生懸命やれば結果は必ずついてくる」と努力を続けるうちにある有名作家と出会い、作品展を手掛けさせてもらう。それが成功を収め、作品は美術館に購入され、画廊の仕事は軌道に乗った。
 しかし、心を貫かれるような出来事が起きる。友人が陰で、成功した牧野さんを中傷していたのだ。さらに愛する娘一家の事故死という残酷な運命が襲いかかる。人に会うことができなくなり、一切の気力を失い、何もできない時期が続いた。中傷事件から合わせて8年。あまりにも長く苦しい年月だった。
 無気力の中、唯一できたのが山での散策。山を歩きながら空き家を探した。絶望の中で見つめていた一筋の光は、「山に来て、寛いでもらう」画廊喫茶をつくること。残念なことに物件には縁がなかったが、いつしか山に癒された牧野さんは街に目を向け始めていた。そして「苦しみは人生を濃ゆくしてくれる」と思えるようになった一昨年、かねてから好きだった街・室町で再び画廊を開いたのだ。
 27歳の頃に凝った料理の味を活かし「喫茶」にも取り組む。そして20世紀後半のアートを伝えていきたいと考える。「あの時代のアートには哲学があったんです。今、芸術の閉塞状態が続いていますよね。時代を超えて熟成された20世紀後半のアートを吸収してもらい、若い人の力で新しいアートを創り出していってほしい」と願う。自らの人生も熟成期に入った牧野さんはまたひとつハードルを立てる。「この街でアートフェスティバルを開きたいんです。若い人たちと一緒に」。

コメント

一言どうぞ
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私も昨日観てきました! ...
たかまる
(2009/01/07)
>sunmaさん かわいいとも...
はな
(2009/01/06)
mineさん>ぴったりとした...
はまじ
(2009/01/05)
明明さま 素敵な記事あり...
かんりにん
(2009/01/04)
>きみこさん あけまし...
いっこ
(2009/01/04)
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