「北九州は新鮮な魚が簡単に手に入るなど食材に恵まれているので、料理が楽しいです。それに“人のネットワーク”が残っていますね。子育てをする環境には大切なんですよ」と笑顔で語る麻田さん。休日は、単身赴任中の麻田さんに会いに、月に最低1回東京からやって来る夫と、近場の観光地に出かけるそう。
麻田 千穂子さん
北九州市副市長。1961年生まれ。中学・高校時代を福岡で過ごす。厚生労働省入省後は、労働政策の企画立案に携わる。2004年から職業家庭両立課長として、育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法を担当。主に子育て支援や地域の雇用対策などに取り組んできた実績を買われての抜擢。
昨年10月、北九州市で3人目の副市長に就任した麻田千穂子さん。市制発足以来、初の女性副市長誕生ということも相まって注目を集めた。
麻田さんは東京大学を卒業後、旧労働省に入省、以来ずっと中央で日本の政策形成を担ってきた。そんな輝かしい経歴を聞くと“バリバリのキャリアウーマン”をイメージしてしまうが、お会いした印象は物腰柔らかでユーモアあふれる女性。肩肘張らず、しなやかでいつも自然体の魅力を感じさせられる。
与えられた仕事がいつの間にか専門分野に。
麻田さんは入省後、男女雇用機会均等法や最低賃金、労働時間、雇用対策など、労働問題に広く携わってきた。中でも男女雇用機会均等法に関してはチーム発足時から関わってきたので思い入れは強い。しかし女性問題専門を希望していたかと言えば、それはNO。
「当時は“女性には女性問題をやらせる”ということであったと思います。私は今でもこういった考え方にはあまり同意していません」。同期の男性と比べたとき、彼らは重要なプロジェクトに配置され、自分はそうではないと感じる時期があった。
しかし「人がやらないことを長く続けることで、逆にそれが自分の専門分野となり、強みになることがわかった。これってとても素敵なことだと思います」と当時を振り返る。実際、麻田さんは女性の問題にずっと携わってきたからこそ、副市長のチャンスを掴むことができたのだ。「たとえ与えられた仕事に不満があっても、正面から向き合えば必ず財産になる」と語る。
どんなことでも言葉にする。どんなことでも交渉できる。
自分が思ったことは臆することなく発言する麻田さん。それは留学時に身につけたのだそうだ。麻田さんは27歳のとき、公共政策を学びに単身アメリカへ渡っている。
「何か発言しないと落第。そんな追いつめられた状況でした。でもおかげで、“自分がわからないことを質問すれば先生に自分の理解度を知らせることができる”“同じ疑問を持つほかの人の役に立つ”、そうポジティブに考えられるようになりました」。
何事も言葉にしないと前進しない、逆に考えれば、どんなことだって交渉できる。そう考えられるようになったのだと言う。「仕事の場合でも、自分の心に壁は作らず、利害関係が対立する人ほど早目にコミュニケーションをとり、オープンに話して交渉すれば、ことが運びやすいのではないでしょうか」。
さらに、今までの自身の経験を踏まえて「女性にも、組織の命運がかかるようなプロジェクトに参加させるべき」とも語る。「精神的にも肉体的にも大変な仕事は、どうしても男性に任せられることが多いです。しかし自分の実力以上の仕事をこなすことで、レベルがワンランク上がり視界が広がる。そうすると、もっと仕事がやりやすくなります。この醍醐味をぜひ女性にも味わってほしい」。
働く女性の先輩として、副市長として、これから越えるべき課題はたくさんある。
「子育てや働く女性への支援、ワーク・ライフ・バランスのすすめなど、“女性が活躍できるまちづくり”というコンセプトに役立つような政策に取り組んでいます。この動きが『熱心だったよね、麻田さんがいたころは』で終わらないように、志を持った人を育成し、組織に根付かせたい」と最後に熱く語ってくれた。北九州市はまさに今、女性がもっと活躍できるまちになろうと生まれ変わりつつある。そう感じる言葉だった。


















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