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私が27歳の頃[北九州]

アヴァンティでは「27歳」を人生のひとつのターニングポイントと捉えています。社会人になって数年、自分の人生はこれでいいのか、もっと他の道がないのかと模索の真っ最中。この頃、悩んだり、一生懸命何かをしたことが、その後の人生につながっていると仮定して、福岡で活躍する女性たちに「私が27歳の頃」をテーマにインタビューしています。

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池田 智鏡さん / 俺が俺がの「我」を捨ててお陰お陰の「下(げ)」で生きる。

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池田 智鏡さん
日陽山毘沙門天 天台宗 普光寺 住職
いけだ ちきょう / 1944年北九州市生まれ。高校卒業後就職。22歳で結婚し、その後離婚。輸入雑貨卸業の会社を10年間経営。37歳のとき真言宗毘沙門天総本山信貴山で得度。北九州市善光寺別院「毘沙門堂」の復興に携わる。その後、真言宗から天台宗に転派し、日陽山毘沙門天普光寺の住職となる。琵琶演奏を交えた講演やエイズ撲滅等の活動に取り組んでいる。

いくつもの地獄を乗り越えて


 「人生に無駄なことは何ひとつないんです」。池田さんが語ると重みがある。何度も地獄を見たという波乱の半生を乗り越えてきた人の言葉だからだ。

 27歳の頃は「我がままで自分勝手」な女性だった。姉夫婦が経営する会社に勤めながら、アートフラワーやロシア語などあらゆる習い事に熱中し、夢ばかり追っていた。しかし28歳のとき姉夫婦の会社が倒産。突然家族で何億もの借金を抱える地獄に突き落とされたのだ。それからは経理や探偵業など様々な仕事に携わり、ひとり娘は兄夫婦に託し仕事に没頭した。その後、離婚。30歳で輸入雑貨卸業の会社を立ち上げ、次々と事業を拡大していくが、やがて借金が5000万円にも膨らんだ。事業欲と焦りから、足元を固めないままに展開させた結果だった。借金を返済するために、本業の他に保険会社と化粧品店を掛け持ち、毎日睡眠3時間でがむしゃらに働いた。どちらも商才を発揮したが、その非凡な才能ゆえに部下を追い詰めた。売れないのは部下のせい。商品のせい。カリカリしている日々の中、仕事関係の人がふらりとやってきてある言葉を残していった。

 「俺が俺がの我(が)を捨てて、お陰お陰の下(げ)で生きる」。このたった一言が胸に突き刺さった。「思わず号泣したんです。『神仏拝むなら我拝め』と言っていた私が、自然に手を合わせるようになり、頭を下げることができるようになったんですよ」。そして借金の苦しみのなか得度する。37才だった。

信条は、無から有をなすこと


 思えば、9才違いの姉に憧れ、姉に追いつくために自立しようと必死だった。家が貧乏で大学に行けなかったことも、このままでは終わらないぞとパワーの源となっていた。そんな背景が池田さんを突き動かしてきたが、借金を返済し終えた40才の時、全てまっさらにして尼になる道を選んだのだ。

 しかし仏門の道に入ってからも、さらなる苦難は待ち構えていた。寺興し町興しのために13年間無住で荒果てた寺の住職にと地域住民より乞われ、真言宗から天台宗に転派し赴いたものの、すぐには住職になれなかった。どんなにもがいてもどうにもならないことがあるのだと知った。この時期は借金していた時より苦しかったが、この寺が私を必要とするならば必ず道は開けると信じ、「耐える」ことを学んだ。「今思えば仏様から与えられた試練だった気がします」と振り返る。

 平成11年に晴れて住職となり、わずか3年で、新本堂を落成。道路を整備し、茂り放題だった竹を整え、誰もが驚くほど寺を見事に復興させた。「無から有をなす──それが私の信条。何もないところに創り上げるからこそ意義があるんです」と強烈なパワーに圧倒される。それはまさに、池田さんの生き方そのものだ。

 今では、人生経験豊富な池田さんの切れ味のよいトークと琵琶の演奏が人気を博し、講演依頼は後を絶たない。夢は「広い土地と田畑を借りて雨露しのげる家を建て、ひきこもりの人やホームレスの人たちが自立する場をつくること」。「忘己利他(もうこりた)」という伝教大師(最澄)の言葉があるそうだ。自分を忘れて他人のことを考えるという慈悲の極みだという。「助け合うこと。自分さえよければいいという考えは、自分も滅ぼし社会も滅ぼします」と訴える。かつての己と地獄を乗り越え、池田さんは多くの人たちの心の支えとなり、光となっていく。


2007年01月31日 13:06 | TrackBack
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