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舞台はとある進学校。毎年恒例の大イベント「歩行祭」を迎える朝から物語は幕を開ける。高校三年生の甲田貴子にとって高校最後の「歩行祭」には特別な意味があった。ある賭けをすることにしたからである。それは同じクラスの西脇融(とおる)に話しかけ、答えてもらうこと。同じクラスになった彼とは一度も口を利いたことがない。そんな簡単なことができない理由があった。貴子には親友にすら打ち明けていない秘密があったのだ。
それは融もまた同じだった。別の意味でお互いを意識している二人を見て、勘違いしたクラスメイトはこのイベント中に二人をくっつけようとする。そうとは知らない貴子は高校生活の清算をするため「歩行祭」に臨む。賭けの先に待つものとは…?
とにかく、ひたすら歩き続ける話です(笑)。「歩行祭」とはその名の通り、ただただ歩くイベントです。しかも夜通し80キロ。朝の8時から翌朝8時まで一昼夜、歩き通す伝統行事です。
この「歩行祭」は作者である恩田陸さんの母校にあった行事で、「いつか小説にしてやろうと、デビュー時から温めていた」とのこと。恩田さんは執筆にあたり、実際に舞台となる土地を歩いたそうです。てことは80キロ!?パワフルです…。
この「夜のピクニック」。物語中に劇的な変化もイベントもそれほどなく、恩田作品にしては珍しくファンタジー色も濃くありません。少しずつ少しずつ物語が動いていって、読み終わると何だかすがすがしい気持ちになる、不思議なお話。
主人公の貴子はシングルマザーの母親に育てられたせいか、どこかすべてをあきらめていて、達観したようなところがあるが普通の女の子。一方、融も父親の不倫という苦い経験をし、その後父を病気で亡くしたため妙に大人な面があるが、これまた普通の男の子。
普通の女の子と普通の男の子のお話なのですが、普通の子だからこそ、読み始めると主人公に同化したように物語に吸い込まれて自分まで「歩行祭」に参加しているような気持ちになります。
登場人物はクラスにこんな子いたいたっていう子ばかり。それほど物語にリアリティがある。お気に入りのシーンは融の親友、忍が融を説教するシーン。
「ナルニア国物語」を最近読んだ忍が「なんでもっと子どもの時に読んでいなかったんだろう、読んでいたらもしかしたら人生変わっていたかもしれないのに。
だからお前を見るとなんでもっと今を楽しまないんだろう、今だからできることがたくさんあるのにって思う。後で後悔したって遅いんだ」
といった感じでどこか冷めている融を諌めるのですが、この忍というキャラクターがやたら大人で物語をギュッと締めてくれています。
この「夜のピクニック」も高校生のときに読めていたら…と少し思いますが今読むからこそ、あの頃がより輝いて見えるものです。誰もが経験した青春が詰まった作品。読後はもう一度高校生活を楽しんだかのような得した気分になれますよ☆



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