インタビュー

中村 佳奈さん/障がいを越えて、人と社会を結ぶ仕組みづくり。

中村 佳奈(なかむら かな)さん
NPO法人北九州小規模連『一丁目の元気』担当理事、作業療法士、『小倉リハビリテーション学院』副学院長
Profile/1963年愛媛県生まれ。地元の高校を卒業後、香川県の国立善通寺病院付属リハビリテーション学院に進学。卒業後は作業療法士として松山市のリハビリ専門病院に就職。結婚を機に24歳で北九州に転居し、一般病院に勤める。2003年『下関リハビリテーション学院』の開校に伴い専任教員となる。2008年に障がい者の自立支援ショップ『一丁目の元気』を立ち上げる。2012年『小倉リハビリテーション学院』副学院長に就任。

障がいを越えて、人と社会を結ぶ仕組みづくり。

小倉の中心を流れる紫川沿い、商店街の一角にある『一丁目の元気』。市内の小規模作業所などで障がい者が作った商品を販売する、北九州初のアンテナショップだ。木のぬくもりを感じる店内で、マネージャーの中村佳奈さんに話を伺った。

専門学校の教員とショップ運営を両立
高校生のとき、偶然テレビで見た作業療法士に興味を持った中村さん。大学進学が当たり前という環境の中、仕事に新鮮な魅力を感じ、「もっと知りたい、やってみたい」と思った。

作業療法士とは、病気や事故などで生活に支障をきたした人にリハビリを行う専門家。理学療法士が、立つ、座るなど基本動作を支援するのに対し、手先を使う家事や仕事など日常生活の機能回復をサポートする。精神疾患や発達障害にも対応し、社会復帰のリハビリや心のケアを行う。

中村さんは24歳で同業の夫と結婚。翌年に長男が生まれ、生後7カ月で保育所に預けて職場復帰した。30歳で次男を出産したときは、2カ月後から働いた。めまぐるしい毎日だったが、一度も仕事を辞めたいとは思わなかった。

「患者さんの状況や想いはみんな違う。“家に帰りたい”、“早く回復して娘と一緒にバージンロードを歩きたい”。そんな一人ひとりの希望を叶えたくて、一生懸命でしたね」。

40歳を目前に専門学校の教員を依頼され、「新しい体験もいいかな」と引き受けた。さらにその3年後、『一丁目の元気』の開店準備に着手。障がい者の地域生活を支える団体に関わっていた中村さんは、北九州市から打診された常設店の構想に自ら手を挙げた。リハビリをして自宅に戻った後、社会と関わることが難しいケースを見てきただけに、「障がいのある人の活動の場を広げられる」という一心で、教員業の傍らオープンに向けて尽力した。

可能性に光を当てプラスの力を伸ばす
開店後も休まず走り続けたが、3年前に突発性難聴を発病し、中村さんに変化が訪れる。運営に対してさまざまな意見が寄せられ、受注を促進する一方で作業所に生産を強いることもできず、狭間で悩んでいた時期だった。

「ダメなときはダメ、助けてほしいときは助けてって言おう。そう思えるようになったことが、前に進むきっかけになりました」。

考え方が柔軟になり、経営も少しずつ好転していった。「人生の大きな転機は、肩の力が抜けるようになった去年です」。一つの組織だけで考え、仕事を回そうとするから無理が生じる。いろいろな機関と連携する “協働” のアイデアが浮かび、新しいブランドづくりのプロジェクトを立ち上げた。

当面の目標は、商品開発と販路開拓。「市や企業と協働で、北九州のお土産にできる商品を開発しています。いくつかの作業所が共通の商品を作れば、安定した生産ができる。みんながもっと楽に仕事をできる仕組みを創造していきたいですね」。

緻密な作業を続けられる特性を活かしたもの作り、心に響くメッセージの発信。障がいがあるからこそ、できる仕事がある。マイナス要素があっても、人は必ずプラスの力を伸ばせるのだ。 中村さんが作業療法の現場で培った経験は、可能性を信じ、人を支える強さと優しさになっている。

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