両親が元気で、まだ考えてない人が多いかもしれないけれど、いつかは直面する「親の介護」。若くても脳卒中や脳梗塞といった病気も増えているし、今月はいざというときに困らないために、介護について知っておきたいことを特集しました。



40歳以上の人が加入
介護保険制度は、市町村や特別区(東京23区)が運営主体となり、介護が必要な人を社会で支えあう制度として2000年4月からスタート。保険を利用し、費用の1割負担で、介護(予防)サービスが受けられる。



介護保険を利用できる年齢は2つに分かれる
●65歳以上(第1号被保険者)
介護や支援が必要であると「認定」を受けた場合に、介護(予防)サービスを利用することができる。
●40歳~64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)
介護保険の対象となる、加齢に伴う16種類の病気(特定疾病)が原因で介護や支援が必要であると「認定」を受けた場合に、介護(予防)サービスを利用することができる。
【老化が原因とされる16種類の病気(特定疾病)】
❶がん(がん末期)❷関節リウマチ❸筋萎縮性側索硬化症❹後縦靭帯骨下症❺骨折をともなう骨粗しょう症❻初老期における認知症❼進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病❽脊髄小脳変性症❾脊柱管狭窄症❿早老症⓫多系統萎縮症⓬糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症⓭脳血管疾患⓮閉塞性動脈硬化症⓯慢性閉塞性肺疾患⓰両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

65歳になったら被保険者証が交付される
要介護認定の申請や介護(予防)サービスを利用する際に必要なので大切に保管を。



介護保険ってどの地域でも同じ内容なの?
介護保険の基本的なサービスは同じだが、それぞれの自治体(市町村や特別区)の人口割合や地域独自の事業があるなどして、地域ごとに保険料やサービスの内容が異なることがある。なかには支払う保険料が2倍くらい違うことも。同じ要介護度でも、引っ越したら保険料は上がったのに紙おむつのサービスがなくなった、などということもあるので、居住地域の介護保険内容は確認しておくことが大事。

ケアマネジャーってどんな人?
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、要支援または要介護認定を受けた人が適切な介護サービスを受けられるように介護サービス計画(ケアプラン)を作成する専門家。介護を要する人の状況や、家族がどんなことに困っているのかを理解し、計画を立て、必要なサービスを受けられるようにサービス事業者へ手配・連絡・調整等を行ってくれる。認定を受けたらまずは居宅介護支援事業者に連絡し、担当のケアマネジャーを決めるところから始めよう。
※居宅介護支援事業者/ケアマネジメント(居宅介護支援)を実施する事業者のこと。訪問介護や訪問看護のサービス提供事業者と併設されていることも。ケアプランセンターとして病院と連携している場合も多い。

介護保険で利用できるサービスはどんなものがある?
大きく3つに分けられる。どのような介護が必要かによってケアマネジャーと相談しながら、一人ひとりケアプランを作り、それに沿ってサービスを利用できる。
●在宅サービス
ホームヘルパーによる訪問介護、訪問看護、施設に通うデイサービスやデイケア、施設に短期間泊まるショートステイなど
●自宅での生活環境を整えるサービス
車椅子や歩行器など福祉用具の貸与・購入、住宅補修(改修費上限めやす約20万円、利用者負担約2万円)など
●施設サービス(施設入所)
特別養護老人ホーム(生活介護が中心)、老人保健施設(介護やリハビリが中心)、介護療養型医療施設(医療が中心)
※利用者負担めやすは月に約2~4万円+居住費・食費
※居住費・食費は施設との契約で決まる

介護費用はどのくらい支給されるの?
在宅サービスを利用する場合、要介護度に応じて利用できる金額に上限(支給限度額)がある。例えば「要介護1」の人が受けられるサービスの上限は月に約165,800円。自己負担は1割の約16,580円だが、1カ月に165,800円を超えたサービスは全額自己負担になる。

【自宅介護のめやす例】
●「要介護1」 で1回8時間、週3回のデイサービスに通った場合
(施設で食事や入浴介助、生活機能訓練、レクリエーション)
18,000円/月 (1回1,500円)
(自己負担800円+食事・おやつ・リハビリ等料金700円)×12日
●「要介護5」 で特別養護老人ホームの相部屋に3日間ショートステイ
(入浴、排泄、食事など日常生活の介助や機能訓練)
9,000円/月 (1日3,000円)
(自己負担1,100円+食事3食1400円+滞在費500円)×3日

実はこれからの日本、待ったなしの「大介護時代」がやってくる。団塊世代(第1次ベビーブーム期1947~49年生まれ)が、要介護割合が増える75歳に達する2020年代前半から要介護人口が急増するのだ。さらに団塊ジュニアは兄弟が少ない傾向があるため、子ども1人あたりの負荷が増える未来が見えている。
みずほ総合研究所 「懸念される介護離職の増加」レポート(政策調査部主任研究員 大嶋寧子)より

総務省の「就業構造基本調査」によれば、介護・看護を理由に離職や転職した人は2006年10月~2007年9月で14万4,800人。4年間で約50,000人増えている。離職者全体の82.3%が女性であり、女性が「主な介護者は自分である」と思う傾向が強いという、社会的な問題も伺える。

2002年10月~2007年9月に介護離職した元雇用者(50.2万人)の年齢別内訳は、男性元非正社員を除き、40~59歳層が中心。働き盛り、管理職世代が介護の問題を抱えている。この世代が離職すると再就職は難しく、人材を失う企業も大きな損失となる。
