佐藤 匡央(さとう まさお)先生
九州大学大学院農学研究院 准教授
1994年九州大学大学院農学研究院卒業。米国ルイジアナ州立大学医学部シュリーブポート校生理学科研究院、科学技術振興事業団 科学特別研究員を経て現職。博士(農学)。専門は栄養化学。動脈硬化と栄養素の関係など、食べ物(栄養素)と身体について研究。企業と合同で商品開発なども行っている。自身も食べることが大好きで、福岡のおいしいお店にも詳しい。
「健康的な食事」ってどんな食事?
考えてみよう、身体がよろこぶ「栄養と食事」のこと。
健康でありたいと願うのは人の常。「○○が健康にいい」と聞けば買いに走り、情報収集にいそしむ日々。でも本当に〝身体がよろこぶ健康な食事〞って、どんな食事をすればよいのかイメージできる? 今回は、九州大学で栄養について研究する佐藤先生から、食生活に関する話を聞いた。
健康にいい食物とは?〝相性〞で考えてみる
「食物は、食感や味、含まれる栄養素など、それぞれに個性を持っています。〝これひとつだけ食べればよい〞という完全な食べ物は存在しません。また、食べる側の私たちも、一人ひとり性質が違います。なので、一般に身体にいいとされるものが、自分にとってどうかを考えてみることは、実は大切です」と先生。
「たとえば緑茶に含まれるカテキンには、抗酸化作用やコレステロール値の低下など、健康によい影響があるとされています。しかし一方で、現代女性に不足している鉄の吸収を妨げるタンニンも含んでおり、貧血の人には若干相性が悪いという面も持ち合わせています。今はどんな食べ物を食べるかを選べる時代なので、知識を得たあとに、自分で選ぶことが重要です」。〝なんとなく身体にいいらしい〞ではなく、自分の身体との相性がいいかで選ぶ。意外と見落としがちなポイントかもしれない。
忙しい女子に朗報!簡単・栄養バランス
「また、栄養バランスを必要以上に難しく考える人もいますが、一番簡単な方法は、パッと目で見て確かめること。赤や黄色など、彩りのいい食事は目にも楽しいですし、栄養バランスもよいものです。茶色ばかりの場合、ナトリウムや炭水化物の摂りすぎの可能性があり、注意が必要です」。また、多忙女子に心強い栄養は「卵」なのだそう。「アレルギーの方など、これも相性を考えることは必要ですが、元来卵にはビタミンC以外のビタミンがすべて含まれ、カルシウムなどのミネラルも豊富です。忙しい朝には、卵かけごはん1杯でもいい。これに納豆がつけば、かなりの栄養素を補えますよ」とのこと。ちなみによく聞く「コレステロールが含まれているから、卵は1日に1個までしか食べてはいけない」は、誤解なんだそう。驚き!
食べることを「楽しむ」!
「食を考えるうえで最も大切なことは、実は何を食べるかよりも、食べる時間を誰かと共有して、食事がハッピーな時間になること」だと先生は語る。「完全な栄養を求めるなら、すべてサプリメントでもよいかもしれませんが、それだと寂しい、味気ないという思いがありますよね。誰かとおいしく食べること自体も、身体と心によい影響をもたらします。実際に人と食べると代謝があがる、という研究もあります。長い目で見て、健康によい食を考えたいですね」。
ゼミ当日はゲームも交えながら、「栄養と食事」についてアプローチしていく。最も身近で、不思議な食の世界を一緒に考えてみよう!