人と同じことはしない。
やってダメなときは、道を変えれば、ゴールできる。
誕生石に見立てたラインストーンがラベルに貼られた、可愛らしい瓶やケース。中身は高品質の石鹸だ。花びらのように削った1枚を1回で使い切る、機能的ながらも誕生月で選べるといった、女性のハートをくすぐる要素がつまっている。
この「バースデーストーンソープ」を開発・販売するのは福岡にあるIT企業『デキャンタージュ』。IT企業がなぜコスメを開発したのか。
開発担当であり、代表取締役社長の小林由紀さんにはITの世界に長年身を置くなかで生まれた、ある「思い」があった。
バーチャルではなく、実物・本物を届けたい
アプリやソフト開発を続ける中、バーチャルの中だけでコミュニケーションが完結する人が多いことに問題を感じていた。「現実の体験や実物を直接ユーザーに届けたいという思いがあり、それを実現できないかと始めたのが石鹸です。」。
肌が弱く、親類の石鹸工房で特別に作ってもらい愛用する石鹸。これを商品にできないかと女子向けに照準を定めた。
しかしコスメ販売は未経験で、すでに市場は飽和状態。
そこで「人と同じことはしない」「百貨店で販売してもらえる商品にする」と目標を決め、徹底的に「女子」研究をした。
大量の女性誌を読み、天神で直接若い女性に声をかけリサーチ。女子の心を探るため経験のなかったつけまつげやネイル、カラーコンタクトまで試した。「体験しないと分からないでしょう」と持ち前の遊び心が垣間見える。
そうして「大人だけどかわいい。かわいいけれど中身は本物」を柱に、贈る人も相手も幸せになれる「コト」を売るメッセージ性のある商品が完成した。狙いと小林氏の営業努力が実を結び、わずか半年で百貨店のイベント出店を果たす。
また、東京ギフトショーへの出店を契機にゲーム会社や有名ホテル、大手企業との契約を次々と決めた。
尽きない探究心と創造力
小林さんの原動力の源はどこにあるのか。
「昔からクリエイティブなことが好きでした」という小林さん。中学生の頃は、一人で劇団を立ち上げ、作・演出、主演で上演。自分のイメージを形にするために、近所の高校に照明や小道具を直談判で借りるなど、とにかく行動した。
抜群の交渉力や企画力、度胸は少女の頃から実践で鍛えられた賜物だった。
大学卒業後は普通の会社員に。だがWindows95の登場で、仕事環境や社会が一変するのを目の当たりにし、「パソコンの時代が来る」と直感して独学で資格を取得した。
30歳でパソコン講師に転身し、さらにはパソコンがどうやって動くか知りたくて分解し、カスタマイズパソコンを作るまでになった。
ハードの次はソフト、と探求するうちにエンジニアの道に入った。興味を持ったらとことん追求する性格だ。
「やってみて、ダメなら次の手を考え、ゴールに何としてでもたどり着く道を考えます。昔からそうですね」。石鹸も、当初の企画にこだわらず液体やキューブタイプなど選択肢を用意したことが販路拡大につながった。
「悩んだり落ち込んだりすることもあります。でも感情的になると冷静な判断ができないので、悩みを書き出して客観視し、次の行動を考えます」。
粘り強く物事に当たる小林さん。2017年9月には女性起業家大賞優秀賞を受賞。当時福岡商工会議所でお世話になった女性の先輩に恩返しをしたい一念で応募を決め、必死に実績を作っての受賞だった。
現在は海外を視野に入れている。
「メイド・イン・九州の商品で、世界での九州の認知度を上げたい。そして「メゾン・エ・オブジェ」に出店してヨーロッパをターゲットにした展開を考えています。そして脈々と続く博多の経営者魂を引き継げる存在になり、私も地域を支えることができたらと思います」。
最近ではホテルの女性向け宿泊プランのアメニティとしても採用が決まった。届けたいと願う小林さんの気持ちは、確実に女性たちに届きつつある。
※メゾン・エ・オブジェ パリで開催される欧州最大級のインテリア関連のデザイン見本市
質にもビジュアルにもこだわり、完成した「バースデーストーンソープ」。大切な人への贈り物や、自分へのご褒美にぴったり。ホテルのアメニティとしても取り扱われている。
「バースデーストーンソープ」は通販、または博多リバレイン1F「九州マルシェ」で購入できる。
→ バースデーストーンソープのホームページはこちら
株式会社デキャンタージュ 代表取締役社長
小林 由紀さん
三重県出身。OLから独学でマイクロソフト認定資格を取得し、パソコンスクールの講師に。その後メーカーのシステム開発などに従事。2013年、システム設計・開発、スマートフォンアプリ開発、ホームページ作成を業務とするIT企業『デキャンタージュ』を設立。平行して誕生石で選べる石鹸「バースデーストーンソープ」を開発。2015年よりコスメ業界に本格参入する。第16回全国商工会議所女性会女性起業家大賞優秀賞。