みなさんは貯蓄や資産運用に取り組む際、その「目的」や「目標」を、はっきりと持っていますか? 資産運用をしたいというお客様のお話を聞いてみると、意外とこの点が明確でない方が多いのです。多くの方はただ漠然と、手元にあるお金を殖やせたらいいと思っている傾向があります。
投資の目的はいろいろあります。例えば、車を買い替えたいとか、子供の学費が将来必要になるので、それに備えておきたいとか、老後の生活を十分に楽しむために資産を殖やしておきたいなど、様々です。
目標の設定次第で、運用する期間が変わってきます。つまり投資の「時間軸」が大きく異なってくるのです。そして、その時間軸の差異は、運用する手段である「金融商品」の選択に大きく影響します。
【目的に合わせて金融商品を選びましょう】
例えば、みなさんには新しい車が欲しいなとか、ちょっとした贅沢をしたいなとかいう目標なら、比較的近い将来に利益を実現できる投資でないと絵に描いた餅になってしまいます。この場合は、短期間で利益が期待できる株式や株式ファンドを選択することが現実的でしょう。
<株式・株式ファンド>
株式や株式ファンドは、上下動が激しく必ずしも利益を生むものではありませんが、株式なら配当や株主優待もつきますし、景気拡大や買収・提携、新製品の発売など、様々な材料により会社の将来への期待が膨らんで価格が上昇することがあります。しかし、その逆もありえますので、十分「リスク」を理解して投資を始めましょう。
子供の将来の学費のために備えておきたいという目標であれば、時間軸は10-15年あるでしょう。あるいは老後の生活を楽しむために、お金を殖やしたいという目標であれば、人によりますが30-40年という時間軸にもなります。その場合は、比較的安定した運用ができる、保険や債券または債券ファンドなど、長期間でお金をじっくりと育てる運用がいいでしょう。
<年金保険>
年金保険は、保険の仕組みを使って、定期的・継続的に受け取れる年金を用意する金融商品です。まとまった資金で始めてもいいですし、何年かかけてゆっくり育てていく方法もあります。
定年退職したあとは、安定的な収入がなくなります。年金保険で運用しておけば、国から支給される年金に加えて、自分独自のプラスアルファの収入を作ることができます。
<債券・債券ファンド>
債券は、一般的な利付債券であれば、利払い日と満期日があらかじめ決められて利払いや元本の返済が行われます。そのため、将来入ってくるお金の見当がつくという利点があります。預金よりも魅力的な利率で、安定的な運用を目的に債券を購入して運用手段として活用することも一つの方法です。
ただし、その債券の発行体は会社や国の「借金の証文」です。債券はその発行体の負債なのです。もし、購入した会社が倒産してしまった場合、利息どころか、投資元本も戻ってこないこともあります。したがって、債券を発行する会社や国がその債券の条件に沿ってお金を支払えるかどうか、情報を集めて確認しなければなりません。表面の利率などの条件だけで決めずに、発行体もよく確認しましょう。
債券ファンドとは、運用会社が皆さんから集めた資金を、債券に特化して投資し、そのリターンをお返しする金融商品です。ファンドにどのような債券が組み入れられているかを確認して、投資判断をしましょう。
また、前回のコラムでお話した、「72の法則」を使って、どれくらいの期間、年率何%で運用すればいいか、自分なりの運用の目安を持っておくことも良いことですね。
人は皆、背丈や体格が異なり、それぞれに合わせて衣服を選ぶように、資産運用にもフィットするものとしないものがあるのです。
そんな視点で、一度自分の貯蓄や資産運用を考え直してみましょう。「時間軸」がはっきりしているからこそ、取り得るリスクも分かってきます。もちろん目的はひとつではないでしょうから、短期と長期の資産運用を組み合わせることもできます。そうすることで、自分の目的に合ったポートフォリオ(運用資産の組み合わせ)が見えてくるようになります。
さて、もう一つ大事なことがあります。それは金融商品を選ぶ際、「確かなもの」と「不確かなもの」を理解しているかどうかです。株も債券もファンドも保険も、すべての金融商品には、必ず「確かな要素」と「不確かな要素」が含まれています。その点を明確に理解して、投資するかどうかを判断するように、心がけてください。
来月号では、まずは「株」について、「確かなもの」と「不確かなもの」のお話をしたいと思います。