「離婚訴訟」になると、もう話し合いはできないの?
裁判がある程度進行すると、代理人の弁護士と担当裁判官は、将来下されると思われる判決の内容を予測しながら、ご本人にとって少しでもよい解決になるように模索し、裁判所の下で、話し合いによる解決ができるかどうかを試みる、ということがよく行われます。
離婚問題を抱えているとき、誰しもが、強いストレスに晒されます。
夫も妻も、お互いに離婚はやむを得ないと思っている場合であっても、過去のつらい出来事を思い出したり、将来への不安が募ったりして、冷静になれないことがしばしばあります。また、様々な不安、たとえば離婚の手続きのこと、仕事や生活のこと、子どものこと、転居のこと、財産・ローンのことなど、考えなければならないたくさんのことで、頭も気持ちもいっぱいいっぱい、という状況になりがちです。
ましてや、いずれかの当事者が離婚に納得できないという場合には、お互いの意見や気持ち、考えがぶつかりあうため、なおさらそういう状態になりがちです。
その結果、当事者同士の話し合いや調停の場面では、お互いがつい感情的になったり、落ち着いて考えられなかったりして、話し合いがまとまらないことがあります。
この点、訴訟(裁判)になると、多くの人は弁護士に代理を依頼しますので、弁護士が、それぞれの当事者の言い分について、法的観点をふまえて主張し、証拠も提出し、それぞれの主張が認められるのかどうかを、裁判所の下で整理していきます。そうした主張と整理の過程を経ながら、当事者も少しづつ冷静さを取り戻し、話し合いの見通しがたってくることも多くあります。
裁判がある程度進行すると、代理人の弁護士と担当裁判官は、将来下されると思われる判決の内容を予測しながら、ご本人にとって少しでもよい解決になるように模索し、裁判所の下で、話し合いによる解決ができるかどうかを試みる、ということがよく行われます。
これは、和解手続きといわれるもので、双方の円満な話し合いさえ整えば、判決よりも柔軟かつ幅広い解決が可能となります。
例えば、子どもの学資保険について、金銭評価して現金精算するといった硬直的な対処ではなく、契約者名義を夫から妻に変更するといった和解もありえます。
また、離婚後の自宅の名義は夫となるけれども、子どもが学校を卒業するまでの間に限り、母と子が引き続き自宅に居住し、卒業と同時に自宅を夫に明け渡すといった、個別の事案に即したデリケートな約束事をすることも考えられます。
このように「和解」という訴訟内での話し合いで解決する事案も多くありますので、裁判になったからといって、話し合いを全てあきらめる必要はありません。
お互いが、裁判まで進んだことを踏まえて、現実のなかで少しでもよい解決を模索して話し合うことは最後まで可能ですので、ぜひ円満かつよりよい解決を目指してみてください。
なお、訴訟は、絶対に弁護士をつけなくてはならないわけではなく、ご自分で提訴をすることもできます。もっとも、上記のとおり、法律に則った主張立証が要求され、手続きも調停と比べて複雑になってきますので、少なくとも弁護士への相談だけはして、弁護士に依頼をする方がよいのかどうか、御自身にとっての正解を見つけていってください。
修猷館高校、九州大学卒。44期。松坂法律事務所を経て1994年に現事務所に入所。弁護士登録以来、薬害HIV,薬害肝炎事件などの集団訴訟に携わりながら、子どもの権利に関する事件に一貫して関与している。特にセクシュアルハラスメント事件や性被害、DV被害の事件を多数手がける。 趣味は、図書館や美術館巡り、エレクトーンなど。あこがれの山登りや一人旅にも行きたいと考えている。
女性協同法律事務所
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。