WEB小説「角を曲がれば」episode 7

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仕事、恋愛、結婚、これからの暮らし。
シングル女子の前に現れる人生の曲がり角。
この角を曲がった先にはどんな未来が待っている?

episode 7

そして、運命の扉がひらく。

 博多駅の待ち合わせ場所に向かって歩いて行くと、先に来ていた母が私に気づいて手を振った。
今日はモデルルーム見学の日。たまたま見かけて資料請求した分譲マンションのことを母に話すと「お母さんもモデルルームを見てみたい」というので、一緒に行くことになった。と言うより「ついて来てもらった」という方が正しい。マンション購入を思い立ってからトントン拍子にモデルルーム見学までこぎつけたものの、いざとなると一人で決断するのはやっぱり不安だったのだ。

 博多駅から地下鉄に乗り、9分で大濠公園駅に着いた。
「博多駅から地下鉄1本で来れるなんて便利ねぇ。これならお母さんも道に迷わずに済むわね」
 母が感心したように言う。
「大濠公園のすぐそばだから緑も多いし、環境がいいわねぇ」

 母と話しながら歩いているうちに現地に到着。受付で営業マンに迎えられ、席に通されるとドリンクメニューを手渡された。ほどなくコーヒーとお菓子が運ばれ、落ち着いた空間に広がるコーヒーの香りが緊張をやわらげてくれた。一息ついてから来訪カードに記入し、物件の特徴について説明を受ける。

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「『デュオヴェール 大濠公園』の最大の特長は高い利便性にあります。地下鉄『大濠公園』駅へ徒歩6分、福岡2大商圏である“天神”は地下鉄で3分、“博多”へも10分でアクセス。自転車でもラクラク通勤できる距離ですよ!」
「ええ、駅からも近く、ここなら親としても安心です。」
母が言うと、営業マンがにっこり笑って近隣マップを差し出した。

「利便性の高さだけでなく、住環境もとってもいいんですよ!近隣にはカフェなどのオシャレな飲食店も多いですし、徒歩6分の場所にスーパーマーケットがございます。そして、大濠公園へは歩いて4分という近さ! 休日には大濠公園の散策やジョギングも楽しめますし、春には舞鶴公園の桜並木が見事で、植栽も多くそれぞれの季節を楽しむことができますよ。各種クリニックも近いので、いざという時にも安心かと思います。今回ご購入を検討されているのはお嬢さま……でよろしいでしょうか?」

「はい、そうです」
「当物件のコンセプトは『はたらく女性のための都市型コンパクトマンション』ですから、きっとご希望に添えるお部屋をご紹介できることと思います。中には将来結婚された場合をご心配される方もいらっしゃいますが、当物件のように立地条件の良いマンションは資産としての価値も十分にございますのでご安心くださいね!」

「その部分を一番気にしていたので、とっても安心しました。購入するならちゃんと売ったり貸したりできる場所で、と思うと、大濠公園まで徒歩4分で自然環境も豊かだなんて滅多にないですよね!」
「お気に召していただき良かったです。ではモデルルームへご案内いたします」
ついにモデルルームへ! 玄関から廊下を抜けると、私の今の家とは全く異なる、開放的な空間が広がっていた。

「こちらがリビング・ダイニング・キッチン。広さは約10畳です」
目線を遮らないカウンターキッチンのためか、広々とした印象だ。優衣や沙織、真央を招いてパーティーをしたら、キッチンで料理しながら会話が弾んで盛り上がることだろう。

「リビング・ダイニングの隣にはベッドスペースをご用意しました。リビング・ダイニングと一続きの空間としても使えますし、ライフスタイルやお好みに応じて仕切ることも可能です」

 ベッドスペースの奥には大きなウォークインクロゼット。今の部屋ではクロゼットに入りきらない洋服はむき出しのパイプハンガーに掛けるか断捨離するかしかなかったけれど、これなら洋服やバッグがたっぷり収納できるに違いない。キッチン側に物入もあるから、日用品の買い置きもできそうだ。

 「見て見て彩!水回りも使いやすそうよ」
母に呼ばれてパウダールームへ。明るく清潔感があり、洗面台も大きくてメイクがしやすそう。リネン庫も付いていて収納力も十分だ。お風呂は最新機能付きだし、トイレにはトイレットペーパーが18ロール丸々入る大きな吊り収納も付いている。

「女性が心地よく暮らせるアメニティに配慮しています。水回りに最新の設備が搭載されているのも新築物件ならではのメリットですね」

 あちこち覗いては感嘆の声を上げる母と私に、営業マンがにっこり笑って声を掛けた。
「よろしければご希望の間取りやご予算に応じた住戸のご紹介、資金計画のシミュレーションもいたします」
「お願いします!」
母と私は同時に叫んだ。

 営業マンの案内で相談ブースへ移動し、私たちは改めて説明を受けた。物件価格は、頭金なしで住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は1LDKで7万円ちょっとの支払い。将来のことを考えると手元にもお金は残しておきたいし、金利が安いなら借りた方が良いのかも。。

「今住んでいるマンションが築25年で家賃6万円だから……」
「毎月の負担はほとんど変わらず、新築マンションを所有していただけることになります。頭金をご用意いただければ返済額はさらに減額できますし、住宅ローン審査も通りやすくなります」

「彩、ここに決めたら?」
母が言った。
「ずっと頑張って働いてきたんだから、自分のお城を手に入れてもいいじゃない。頭金くらいお母さんが援助してあげるわよ」

 その時、マネーセミナーで聞いた言葉が頭をよぎった。
住宅ローンは借金返済ではない。自分を豊かにする貯金なのだ──。

「……住宅ローン審査の申込み手続きについて教えていただけますか?」

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 必要書類や印鑑がバッグに入っていることを確認し、私は家を出た。
無事に審査が通ってようやく迎えた売買契約の日。土曜日だというのにいつもより早く目が覚めてしまったのは、人生最大の契約手続きを前に緊張していたからなのか。

 思えば運命のマンションとの出会いは、駅で元カレ・黒田建斗と再会したのがきっかけだった。建斗と二人で歩いた街をひとりで歩き、時の流れとともにうつろう街並みを見た時、胸の奥にひっかかっていたわだかまりが消えていった。その時を待っていたかのように、建築中のマンションが目に飛び込んできたのだ。

 私はスマートフォンを取り出し、3日前の不在着信のナンバーを開いた。連絡先リストから消去しても覚えている、建斗の電話番号だ。あの時は出るのをためらってしまったけれど、今なら自然体で話せる気がした。

 私、あの街で新しい暮らしを始めるよ。
そう言ったら、建斗はどんなふうに応えるだろう。
呼び出し音が鳴り始めた。

Fin

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小説内に登場するマンションは、実在する物件がモデルになっています。
下記バナーより物件ホームページ(外部サイト)をご覧ください。
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 全7話・毎週金曜日配信
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