ハウツー本も数ある「整理術」。いつも気になって本屋で手にしたり、何冊か買って読んだ経験も数知れず…。なのに、なかなか身につかないことにジレンマを抱えたこともあるのでは?
整理術を自分なりに持っている人は、仕事がデキたり、気持ちよく暮らしていたりするように見える。その理由は? 効果は?心と頭と時間をすっきり整理して、仕事や時間に追われるのではなく「やりたいことを追える」ような日々にするために、今月はこのテーマを取り上げる。
なぜ、みんな「整理が大切」と言うのか・・・、それは整理をすると実績が変わってくるから!実際にオフィス空間を工夫している企業の例を紹介。
キヤノンシステムアンドサポート株式会社 九州支社
│福岡市博多区綱場町│
『キヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)』のオフィスを見学して驚いたことは、机の上に何もないこと! 文字通り「何もない」のである。「ここはオフィスだろうか」と思うほどすっきりとした光景が広がっていた。
席についている人の手元にはノートパソコンと書類はあるが、いない人の机の上には何もない。聞けば、個人の机という存在がないという。個人の所有物は一 区画のロッカー内に収める。出社したら施錠つき個人ロッカーから道具や書類を取り出し、空いている椅子につき、仕事をするスタイルだ。今日は窓際、明日はプロジェクトグループごとに集まって…と日によって、時間によって席を自由に移動できる。足元に積まれた荷物はもちろん、ゴミ箱の一つもない。ゴミ箱はフロアに共有のゴミ箱があり、誰であってもそこへ捨てに行くそう。帰るときは、また机の上を片づけロッカーにしまって、退社。『キヤノンS&S』の社員たちは皆こうして毎日、仕事をしている。
OA機器の取扱いから、機器の補修、オフィスでのネットワーク構築・システム導入、ソリューションを企業へ提案する『キヤノンS&S』九州支社は、明治通り沿い綱場町にある新しいビルの中にオフィスを構える。このすっきりオフィスは、同区美野島から移転してきた2010年を機に大改革は始まった。
まず、各部署の中からプロジェクトメンバーを決め、どのようにすれば仕事の効率化が図れるかを話し合った。机や出力機のレイアウトも見直し、できる限り個人のものを持たず共有することを徹底。先に紹介した机、ゴミ箱のほか、個人単位で割り当てられていた営業車をカーシェアリングしたり、文房具も必要な分を共有の引き出しから取ったりする。これだけで、車の所有台数も減り、消耗品費も抑えられるようになった。
さらには、可能な限り書類を出力せずpdfで保管。必要な時に必要な分だけ出力をする方法へ変えた。特徴的なのが、パソコンから印刷をしても、IC社員証を複合機にかざさないと出力されない設定だ。そのため、廃棄プリント(出しっぱなしになって結局捨ててしまう印刷)が大幅に減ったという。
「以前はどこにでもある普通のオフィスだった」と社員が語る通り、引越し前は、机の下に荷物があったり、書類が山積みになっていたり…と、社内整備は社員の個々の裁量に任されてきたが、引越しを機に、全社を挙げて改善。チームを作り取組むことで、経費削減、人件費削減に成功している。会議のあり方も変化し、「会議原則」なるものも存在するそう。
とはいえ、徹底したやり方に社員全員がついてこられるのか、と尋ねたところ、「厳しいルールだと守れないことも過去にありましたが、自分たちで守れる最上ラインを目標にし、やりながら工夫をしています。仕事を通してお客様の役に立つことが本業ですから、片づけることが目的にならないよう、社員にかかる負担を極力減らしながらやっていっています」と担当者。最先端オフィス機器を扱う会社は、オフィス整備まで最先端だった。
ハウツー本を読んでも、断捨離を断行しても、すっきりしない…なんていう経験はないだろうか。デスク周りがすっきり整っていても、すぐ散らかったり、一見片づいているように見えて、仕事の効率が下がったりしていることはないだろうか。それには、理由がある。「片づけや整理の前にしなければならないステップを忘れているんです。それは あなたの価値観 をはっきりさせるということです」と語る宮崎佐智子さん。「ライフオーガナイザー」という名の資格を持つ、思考と空間の片づけ・整理のプロだ。米国で生まれ、日本でアレンジされた整理術「ライフオーガナイズ」を使って、自分だけの整理術を見つけよう。
一般的な、いわゆる「整理/収納」と「オーガナイズ」の手法の違いは、空間の整理より、「思考」や「感情」の整理を大切にすること。部屋の片づけをするにしても、どんなインテリアにしたいか、と考えるのではなく、「どんな生活がしたいか」「どんな人生にしたいか」ということを考えよう。
きちんとした細かな収納が得意な人、ざっくりと大まとめがいい人、それぞれの違いがあるのは、脳の使い方が人それぞれだから。インプットとアウトプットをそれぞれ右脳・左脳どちらを使っているか、まずはチェックし、どう着目すればよいかを考えていく。 「感覚的な右脳」「論理的な左脳」といわれるが、右左でそれぞれ特長がある。たとえば、左脳タイプの人は「これはもう使っていないので手放そう」と理性的な判断が得意で計画性も高い。一方右脳タイプの人は、形状や大きさに合わせた配置が得意、といった特長がある。右脳が優位の人は、ぱっと全体像を見渡すことが得意なので、おおまかに分類し、カラフルな色で分類をする。左脳が優位の人は、効率や機能性を重視するので細かく仕切ったりラベリングをして収納をするなど、自分の利き脳にあった方法を見つけると片づけや収納はとても楽になっていくはず。
「いつも時間に追われている」「ゆとりがほしい」。オーガナイズの考え方や手法は、時間の整理にも有効。自分の価値観をはっきりさせて理想が明確になったら、「そこに向かうためにいつまでにどうなっていたい?」「そのために毎日これをしよう」と逆算して具体的な計画を立て、行動の優先順位をつけよう。そのために「緊急・重要のマトリクス」(図1)を使用する。 後回しになってしまいがちな「大きな目標」に向かって、逆算して行動に落としていく。時間管理のポイントは、「今日は料理をしない」とか、「今は電話に出ない」といった、「しないことを決める」ということも一つの方法だ。
ものが少ない方が管理しやすく、収納や片づけが簡単になるのは事実。でも、オーガナイズで考える整理は、「減らす」はあっても、「捨てる」がすべてではないという。あくまでも自分が軸なので、例えば「一年着ていない服は捨てましょう」といった一般論に左右されなくてよいのだ。 基準は、私。大切と思うものや、持っていることで幸せを感じるものは、心ゆくまで手元に置いてOK。そして収納用品も安易に購入しないのが手。手元に置きたいものを厳選してから、その全体の物量に見合った収納を吟味することが基本。 また、ものを減らす時に大切なのは、考え方。左脳タイプは、「使用頻度」や「新しさ」などを基準にし、右脳タイプは「好き嫌い」「宝物・道具」といった基準でいる、いらないを判別するのもいいでしょう。 ものを減らす時に、「捨てられない」と思ったら、取っておく他にも「譲る」「リサイクルに出す」といった考え方もある。自分がしっくりくる方法で、手放せるかどうかを考えよう。