コラム

経済的DVのお話 ~離婚の理由になるかな?~

ユリは、帰宅時間が近づくと、オフィスの給湯室で、また、深いため息をひとつ、ついた。
今日は会社の給料日。夫のマサシは、昨日、ボーナスの支給日だった。

けれど、ユリは、マサシが幾らボーナスをもらったのか知らない。ボーナスどころか、月々の給料も、実は全く知らない。知らされていない。
正確に言うと、結婚してから5年間、マサシの会社の給料明細書なんて一度も見たことがない。
というか、何度も「私だって、知りたいのよ」と言って見せて欲しいと頼んだことがあるが、「そんなの、お前は知らなくていいんだよ。」の一点張りで、次第に何を言っても、もうムダだってあきらめるようになったのだ。

なのに、マサシは、ユリの給料明細書は必ず渡すように迫る。そして、ユリは決まった額のお小遣いをもらうだけで、家計の管理は全てマサシがしている。ユリの給料が、何にどう使われているとか、預貯金は、誰名義で貯まっているのかいないのかさえ、とんと分からないのが“俺たち夫婦のやり方”。

結婚当初は、「俺に任せてれば大丈夫さ。」という自信満々に言うマサシが頼もしく思えたし、結婚生活ってそんなものか、とあまり悩んだりはしていなかった。
だけど、お小遣いさえ、「何に使ったの?」と使い途を細かく聞いてくるし、最近では、日用品一つ買うときでさえ、いちいち、マサシに“お伺い”を立てないといけなくって、ユリは、もうウンザリしていた。
窮屈でたまらなくなった。大学を卒業してからずっと働いているけど、最近では、そういうのが面倒くさくなってきたから、独身時代に貯めた貯金を随分取り崩している…。

「もう、限界かも…」。

そう思って、ネットで何気なく検索してみると、『経済的DV』っていう言葉が出てきた。女性弁護士の解説コラムだった。ユリは食い入るように読んだ。

「これも、DVだったんだ!」。

早速、ユリは、そのウェブサイトに法律相談の予約メールを送った。
法律事務所で会った女性弁護士は爽やかなブルーのストライプのワンピースで、若々しい感じを受けた。でも、話し始めると、とてもしっかりした口調で、穏やかにアドバイスをしてくれた。

「それは、いわゆる経済的DVですね。」

弁護士によると、ユリのようなケースも、“暴力”の一種にあたるようだ。
離婚、の2文字が頭に浮かぶようになっていたユリは、結婚生活で苦しかったことを一気に弁護士に話し始めた…。

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