なるべく怒りたくないけれど、ついつい職場でイライラ、家庭でカリカリ…。ストレスは溜まるし、相手との関係も悪くなって…なんて悩む人も多いのでは。今月は「怒り(アンガー)」の感情に向き合い、上手につき合っていく方法を探してみましょう。
我慢するので、爆発したら誰にも止められない。他人にも自分にも。(30代・未婚/管理職)
言わなくていい一言を言って怒らせてしまう。(50代・既婚/専門職)
ついかっとなって、手近なものをたたいたり、物を投げたりしてしまう。何とかしたいけど、どうしようもない…。(30代・既婚/専門職)
ケンカやいがみ合いの場がきらいなので、逃げ出したくなる。(30代・既婚/営業)
怒り方がわからないので、相手に怒りや悲しみの感情を伝えられない。(20代・既婚/営業)
感情を出すのはわがままな気がして我慢してしまう。じわじわストレスが溜まる一方…。(20代・未婚/営業)
周りより怒りの沸点が高いようで「なぜ怒らないのか?」と逆に怒られる。(30代・未婚/事務)
すぐイライラする。 イライラしたら、表に表現したいタイプ。 言わずにはおれない…(30代・既婚/専門職)
昨日は許せたのに今日は許せないなど、気分で怒ってしまい自己嫌悪になります。疲れてる時は優しくできません。(30代・未婚/事務)
こらえていても、つい顔に出てしまう。(30代・既婚/接客)
本気で怒った場合、その相手との関係がどうなっても構わないと思ってしまい、相手を切り捨てるような怒り方をしてしまう。(40代・未婚/専門職)
いらいらすると、そのことばかりに気がとられて他の用事がすすまない。(30代・未婚/専門職)
その場では受け流すが、納得いかなかったことは後々まで忘れないので、対人関係が修復しにくい。(30代・未婚/営業)
自分が傷つけられた、侮辱されたと感じたとき
家族や親しい人が傷つけられた、侮辱されたと感じたとき
自分の価値観で不当だと感じることがあったとき
全体的に見て、自分自身よりも、家族や親しい人が傷つけられた、侮辱されたと感じたときに、強い怒りを感じる傾向にある。
【avanti働く女性研究所調べ】n=52 調査期間2014年9月25日~10月8日●年齢/20歳~24歳 0.0%、25歳~29歳 15.4%、30歳~34歳 42.3%、35歳~39歳 19.2%、40歳~44歳 7.7%、45歳~49歳 0.0%、50歳以上 15.4%
怒りをコントロールするにはどうすればいい?
アンガーマネジメント(怒りの感情を上手にコントロールして適切な問題解決やコミュニケーションに結びつけること)を推奨している、「日本アンガーマネジメント協会」の代表理事、安藤俊介さんに聞いてみました。
怒りの感情は誰にでもコントロールできますか。
はい、誰にでもできます。怒りはごくごく自然に人に備わっている感情なので、無理に抑える必要はありません。心理教育といい、技術的な側面があるため結果には個人差もありますが、練習すれば誰でもコントロールができます。
まず一番に知ってほしいのは、「あなたが怒る理由」です。人は自分が「こうあるべきだ」と思っていたことを裏切られた時に怒りを覚えます。「上司とはこうあるべきだ」「彼氏ならこうすべきだ」など。自分がどういう「~べき」を持っているのかが分かっていれば、怒った時に客観的に自分を見つめることができ、冷静になれます。どんな時に怒りを覚えるのか、書き出しておくといいですね。
アンガーマネジメントすることで、どうなれますか?
一番のメリットは、人間関係が適切に築けるようになることです。私自身、昔は頭に来ることがあれば、相手の考えを変えてやろうと思っていました。でも他人はなかなか変わらないし、変えようとするとお互いがすごくストレスなんです。それが分かった時からアンガーマネジメントをするようになりました。そうしたら「変えなくていいこともたくさんある」ことに気づきました。問題は全て解決しなくていいんです。上司やパートナーに苦手なところがあっても、その関係性を最終的にどうしたいのか、にフォーカスして考えれば、その1つ2つの苦手ポイントに囚われて、関係を壊すようなことにならずに済みます。人によって初めは時間がかかるかもしれませんが、怒りに振り回されない自分になるために、アンガーマネジメントは有効な手段です。
安藤 俊介さん
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事、ナショナルアンガーマネジメント協会日本支部長、感情理解教育家。怒りの感情と上手につきあうための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。文部科学省も注目している感情理解教育「アンガーマネジメント」の理論、技術をアメリカから導入する。
下の質問に○(当てはまる/2点)、 △(どちらかといえば当てはまる/1点)(当てはまらない/0点)で答え、テストごとに合計点を計算します。
※これは「正しい」「悪い」を診断するものではありませんので、素直に答えてみて自分の傾向を知りましょう。
診断で、一番点数の高かった項目があなたの怒りの傾向タイプ。それぞれの性質や対処法を参考にしてみて。
テストAの数値が高い人は、四六時中、思考が過去に戻って「思い出し怒り」をしてしまう怒りの持続性が高いタイプ。このタイプは、怒りを感じたとき香りをかいだり、掃除をするなど、「今」に集中する練習をしましょう。そして「怒りを原動力にして建設的な努力をする」ことを行ってみましょう。「自分はこうなりたい」「これを達成する」と目標を定め、ゴールへたどり着くまでにあると思われる困難やその乗り越え方、習慣にした方がよいことなど、具体的に道のりを書き出していくことで、昔の怒りが徐々に薄れていきます。
テストBの数値が高い人は、常にイライラしている怒りの頻度が高い人。ストレス度が高い状態にあります。こんな人は、今の自分が抱えているストレスを書き出してみましょう。これだけでも自分を客観視できます。次に書き出したストレスを「自分でなんとかできるか否か」に分け、なんとかできるストレスの解消にのみ集中しましょう。「嫌いな上司が異動しないかな」ではなく「今の部署はイヤだけどこの仕事はがんばれる」など。ウォーキングやヨガなど体を動かしたり、お気に入りの音楽を聴いたりと、気分転換になるメニューをたくさん用意しておくことも有効です。
テストCの数値が高い人は、ちょっとしたことでも強く怒りすぎてしまいがちな、怒りの強度が高い人。このタイプの人は、怒った後に、その怒りに「7点」「3点」など点数をつけてその時の怒りのレベルを考えてみることで、「今のは怒りすぎたのでは?」など自分を振り返ることができます。また、怒りそうになったときに、「リセット」「落ち着こう」など、反射的な怒りを鎮めるための言葉を決めておくのもよいでしょう。どうしても自分を抑えられないなら、その場をそっと離れることも有効です。
テストDの数値が高い人は、怒りへの耐性が強いタイプ。自分の中の「~べきである」と異なる出来事に出合っても受け入れることができるので、たいていのことは大目に見られる穏やかな人です。このタイプは、①自分と同じであるべき範囲②自分の「~べき」とは違うが許容できる範囲 ③自分とは違うので許容できない範囲、という3つのゾーンのうち③が狭く、②が広い人です。ですが、ほとんどの人が怒りの線引きはあいまいで、実は②でも③と勘違いすることがありますから、冷静に③であるかを見極める訓練をすることで②を広げていくことができます。
なぜ人は怒るのか
怒りの原因は自分の「コアビリーフ」(=自分が正しいと思っている信念や価値観)にある。出来事そのものが怒りを生むのではなく、自分の中での意味づけに原因があるのだということを知ろう。
自分自身の「~するべき」というコアビリーフが何かを知り、判断基準をなるべく広くゆるやかにしていくことが怒りをコントロールするのに重要となる。
イラッとした瞬間に怒りを収める方法は…
●ブリージング…「鼻から息を吸って、口からフーッと音を立てながら吐く」シンプルだが効果的。怒りを収めようとするのではなく、体をリラックスさせることが目的。
●コーピングマントラ…「肩を揉む」「自分で決めたフレーズを唱える」(「怒ったら負け」「ネタになる」)などすぐに起こせるアクションを決めておく。動作で怒りを数秒遅らせることで、気持ちが落ち着く。
自分ルールを客観的に見直してみる
自分のコアビリーフに基づいたルールを見直してみると、視点が変わって客観視でき、怒りは収まりやすい。
1. 私は今、どのルールを乱されたから怒っているの?
2. そのルールって突き通す価値はあるの?
3. そのルールって、ここを変えればハッピーじゃない?
アンガーログをつけてみる
アンガーログとは自分が怒りやイライラを感じたときにつける記録。これを続けて見返すと、自分が何をきっかけに怒りやすいのか、怒りの頻度やパターンを知るのに役にたつ。
例)
日時:11月5日(水)
場所:会社
きっかけ:部下に頼んでいた資料ができていなかった
その時の自分の言動:なぜ間に合わなかったのか、と強い口調で責めた
思ったこと:仕事が遅い。私は軽んじられているのか。
結果:資料が足りず、仕事が進まずにさらにイライラした。
相手にして欲しかったこと:間に合わないなら事前に伝えて欲しかった、間に合うように準備してほしかった
怒りレベル:7/10
後で見返すことで、「自分は約束や期限を守らないことによく怒っているな」「これを防ぐには『できるだけ早く』ではなく『○日までにできる?」など期限を切るようにしよう』『途中で進捗状況を聞くようにしよう』など、自分でも対策が立てられるようになる。
自分が正しいと思い込まない
相手には相手の事情があり、コアビリーフがある。「どちらが正しいか」にこだわるとお互いが疲弊するので、「自分とは意見が違うけれど、この人なりの事情もあるんだ」と考えてみよう。
自分の思い込みで被害者ストーリーを作らない
イライラやケンカの原因で多いのは「相手の言動に対して自分の中で勝手にストーリーを作り、相手を評価してしまうこと」。自分のコアビリーフ「こうあるべきだ」が裏切られたため、被害者意識を持ってしまいがちなのだ。こうならないためには、自分の親しい相手に同じことが起こった場合に、自分がどう声をかけてあげるかを考えてみるといい。
例)仕事上の小さなことで誰かに指摘を受けた
被害者ストーリー▶この人は私の邪魔をしようとしている
客観ストーリー▶より完成度の高い仕事になってよかった
相手を「機能」で見る
自分の「好き嫌い」のメガネで人を見てしまうと、苦手な人や嫌いな人には必要以上にイライラしてしまうもの。そんな時には相手を「機能」で見るとストレスが減る。
上司:「仕事を教えてくれる人」「自分を成長させてくれる人」
部下:「必要な資料を集めてくれる人」「自分をサポートしてくれる人」
怒っている人に接するときは…
人は自分の「~すべき」が裏切られたときに怒りを感じるので、怒っている人に対しては、「この人はどんな『~すべき』を裏切られたんだろう」と相手に置き換えて考えてみると、冷静に相手を見ることができ、建設的な解決策も生まれやすくなる。