離婚の時につくる公正証書って、どんなもの?
お金の取り決めをした場合に、その合意に、強制執行力を持たせることができる書類です。家庭裁判所をとおさずに離婚をする場合に、作成を検討してみてください。
「離婚」をする方法に、①協議離婚(当事者同士で離婚届を提出して離婚する)、②調停離婚(家庭裁判所の調停手続をとおして離婚する)、③裁判離婚または裁判上の和解離婚(家庭裁判所の裁判手続をとおして離婚する)などがあることを、以前にお話ししました。
調停離婚、裁判離婚などの場合は、調停調書・和解調書・判決書といった公的な書類が作成されます。これらの書類があるのに、約束したお金の支払いをしてもらえないという時には、権利者(債権者)は、義務者(債務者)の財産の差押え(強制執行)をすることができます。
一方、協議離婚の場合には、このような書類がありませんので、いろいろと取り決めをしても、何もしなければ口約束で終わってしまう心配があります。口約束で十分という場合もあるでしょうが、お互いに誤解があったり、後々約束が守られなかったりした時に、約束をした・していないという水かけ論になって、せっかくの合意の意味がなくなってしまう心配もあります。
後々のトラブルを防ぐためには、話し合いの結果について、自分達の間で合意書を作ったり、重要な取り決めや財産に関することについては公正証書を作ったりしておくことが大切です。特に、養育費・財産分与・慰謝料など、財産についての取り決めがある場合には、「公正証書」を作成しておくことをおすすめします。
公正証書とは、公証役場という場所で、公証人(「公証」を役割とする国家機関)に、法律行為や権利について、確かにその合意をしたことを公証してもらう書面です。公正証書には、調停調書・審判書・判決書など裁判所が作る書類と同様に、強制執行力があります。
公正証書は、全国各地にある公証役場で作ることができます。どのような内容の合意をして、これを公証してもらうのかについて話し合いがついた後に、当事者同士が公証役場に行って作成します(代理人をたてることもできます)。
作成時には、本人確認書類のほか、取り決める内容により必要書類があります(不動産に関する取り決めの場合は、不動産全部事項証明書、いわゆる不動産登記簿謄本など)。作成手数料は、取り決める内容と金額などによって異なります。
このように、必要な書類や手数料なども異なりますし、具体的な書類の文言の調整が必要なこともありえますから、作成前には、当事者のどちらか一方からでも、公証役場に相談をしておかれる方がよいでしょう。
公正証書を作成するには手間や費用がかかりますが、せっかく話し合いをして大切なことを取り決めするのですから、後々後悔のないように、必要に応じてしっかりとした書類を作っておけるといいですね。
長崎県出身。西南学院大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了。2015年、弁護士登録・当事務所に入所。 関わる人たちの悩みを解消して、心からの笑顔を取り戻す手助けをしたいと思い、弁護士を目指す。趣味はミュージカル鑑賞や、室内インテリアのシミュレーション。
女性協同法律事務所
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。