コラム

日本と香港の税制

魅力的な香港の税制

皆さんは香港で買い物をした際に、日本との大きな違いに気づくはずです。それは、消費税がかからないということなんです。ご存知でしたか?

香港に来たことがある方はご存知かもしれませんが、わざわざ免税店へ行って買い物をしなくても、消費税がかからないのです。もちろん免税手続きもいりません。

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これだけでも十分魅力的だと思いますが、香港は消費税の他に、投資で利益を出した際のキャピタルゲイン税、贈与税、相続税もかかりません。税金の仕組みがとても、簡潔なのです。

 

日本では、今挙げたもの全てに税金がかかります。税金について表にまとめて比較すると以下のようになります。しっかりとご覧下さい。

 

消費税 キャピタルゲイン税 贈与税 相続税
日本 8% 20% 10%~55% 10%~55%
香港 0% 0% 0% 0%

 

昔から日本では「3代続けば財産がなくなる」と言われてきましたが、これだけ税率が高ければ、それも納得です。

香港では、相続税がなく、子孫が資産を承継し、積極的に運用して増やしながら残すので、資産が増大していくのも道理なのです。

(なお、日本の贈与税、相続税は累進型なので金額が大きくなればなるほどたくさんの税金を納める必要があります。)

 

では、次に所得税や住民税について見てみましょう。

日本は、所得に対して国に納める所得税と住んでる地域に納める住民税の2本立てになっています。所得税に関しては、所得の金額によって納める金額が変わる累進型で、所得が大きければ大きいほどたくさんの税金を払う必要があります。それに対して、住民税は所得に関わらず一律10%です。(一部例外除く)

 

では、香港はどうでしょうか?

香港での所得税は基本的には17%です。しかし、一定金額までは、日本と同じく、所得に対して納める金額が変わる累進制度になっています。日本の住民税に該当する一人当たりの定率税に関しては、驚きの「なし」です!

 

所得税と住民税について表にまとめましたのでご覧下さい。

所得税 住民税
日本 5%~45% 10%
香港 2%~17% 0%

 

税率に大きな差がありますね。所得税は最高税率だけ見ても28%もの差があります。更に香港では、ここから所得控除もあり、結構な金額が所得から圧縮できます。

例えば、配偶者控除が日本は38万円なのに対して香港では約300万円、更に日本では廃止された子供扶養控除もあり、一人当たり約84万円も控除されます。更に、もし配偶者が語学学校に通っていた場合、この費用も控除され、家の家賃までも控除されます。

 

だからこそ、毎月の可処分所得は多くなり、その分、前稿で書いたように、老後の年金に回したり運用したりできるのです。

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「税金が低いからラッキー」とか「何も考えなくもいい!」とかではなく、税金が低いからこそ使えるお金をいかに賢く配分するかを考えるようになっているのですね。

 

ただ、税金の高い日本は高い反面、国民はたくさんの恩恵を受けています。

医療費の自己負担が全体の3割となったり、基礎的な年金が用意されていたりというメリットは享受できます。日本は、「大きな」政府。香港は、「小さな」政府という言い方も出来ると思います。

 

このように税金があるからこそ、社会保障制度が整備できるという面があります。ただ、日本が人口減少に転じた今、今後の社会保障制度のあり方は、変わることが予想されます。自分がそうした環境・状況に置かれていることを理解して、手元にあるお金を上手に貯蓄・運用して、将来に「備え」ることが大事です。

法人税はどうでしょうか?

法人税と聞くとあまり自分には関係ないように感じますが、国や地域の大きな税収の一つですし、企業活動の活性化や収益の増大は、様々な形で、企業からの分配として、個人所得に影響を与え、個人の消費や生活に繋がります。

 

そもそも法人税とは何でしょうか。法人税とは企業の利益に対して企業が納める税金のことです。日本では、年々減少傾向にあります(下図)がどれくらいの税率が課されているのでしょうか?

現在の日本の法人税

会社の資本金や売り上げの大小にもよりますが、法人税率は15%~23.4%です。かつては、一時、最高税率が43.3%まで上がった時期もありました。

※財務省HPより

 

この表から見て取れるように、法人税率は、段階的に引き下げが続けられてきました。これは、国際的にもひとつのトレンドです。経済のグローバル化が進み、企業活動が、ボーダーレスとなってくると、国と国の間で、企業を誘致しよう、あるいはそれへの対抗として、企業を引きとめておこうとする流れが出てきました。そこで、各国間で、法人税率の引き下げを競うようになったのです。

加えて、日本で法人税を納めている企業は全体の約3割しかいないことも奇異に感じられる事実でしょう。企業の7割は法人税を納めていません。

理由はそれだけ「赤字」企業が多いからなのです。法人税は、法人の利益に対して課されます。したがって、赤字決算をしていれば、税金を払う必要がないのです。

これでは頑張って利益を出した企業が報われませんね。そこで基本税率を下げ、稼ぐ能力のある企業の税金負担を軽くして、新しい事業や人材確保、従業員への還元を促すようにしているのです。

その結果、新しい工場を設立して雇用が産まれたり、従業員の給与が上がったりと個人に還元されていくのです。

 

香港の法人税

では、次に香港の法人税のお話です。香港での法人税は資本金や売り上げの大小に関わらず税率は16.5%です。

更には、2017年10月に発表された報道によると、実施時期は未定なものの、法人税の軽減税率の導入が検討されています。200万香港ドル(約2800万円)までの法人税の税率が、なんと8.25%まで引き下げられる予定です。

もともと香港の法人税率が16.5%と低い上に、軽減税率が導入されると、企業として手元に資金が残り、更に新しい事業を始めたり、従業員へ還元したりできますね。

そして、低税率な法人税は他国からも魅力的に映り、香港に法人を設立したり、香港で企業活動を行いたいという印象を持つ企業が世界中から香港にあつまり、国の税収が増えていく正のスパイラルが発生し続けているのです。

 

法人税をまとめたグラフになります。

法人税
日本 15%~23.4%
香港 16.5% (200万香港ドルまで8.25%米印時期未定)

 

 

これまで、税金と年金について連載してきましたが、改めて考えてみると日々様々な税金が課されていることに驚きますね。したが、それぞれの税金には意味があり必要なもの、ということも理解できましたね。

ABOUT ME
長谷川建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス)CIO。 京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。 2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。 >>長谷川建一氏登壇のセミナー:https://gentosha-go.com/articles/-/13973
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