岡部 千鶴先生
久留米信愛女学院短期大学 ビジネスキャリア学科長 教授
お茶の水女子大学修士課程を卒業後、企業研究所の研究員を経て1994年より久留米信愛女学院短期大学にて教鞭を執る。ビジネスキャリア学科長としてジェンダー論などを教える傍ら、久留米市の女性・子育て・街づくりに関する審議会の活動にも積極的に参加。日本家政学会九州支部長。
「様々なライフイベントを抱える女性のキャリアデザイン」について
自分らしく、輝く女性になるために。もう一度、キャリアビジョンを意識しよう。
「ゆるキャリ」「転職」「プチ起業」。結婚や出産などを機にキャリアの積み方に悩む女性に、最近ではさまざまな「キャリア観」が紹介されている。法改正や景気変動などで、将来に漠然とした不安を抱えている女性たちの道標となるアドバイスを、ビジネスウーマン育成に携わる岡部先生に聞いた。
キャリアを簡単に捨ててはいけない
先生が学科長を勤める「ビジネスキャリア学科」は、ビジネス社会で即戦力となる女性を育成する学科。キャリアウーマン志向の学生が多そうな雰囲気だが、最近では学生の間で逆の動きが起こっている。「結婚したら専業主婦に」「出産後に落ち着いたら、バイトを始めてゆっくり社会復帰したい」。そんな学生たちに、先生は危機感を抱く。「一度止めてしまったキャリアを再びスタートさせる、その困難さを理解していない。メディアでは成功例が紹介されていますが、その裏にある失敗や挫折は多く語られず、そういった事例がごく一部であることを理解できないと、就職してから漠然とした悩みや不安を抱えることに」。
働く女性たちの間に広がる「漠然とした不安」。これは幼少期からのキャリア教育の欠如が一因という。「『いかに生きるか』『どうありたいか』という哲学的なことを意識しないまま社会に出てしまうことが、就職後の不安を招きます。理想や夢といった将来像を、具体的に希望を持って意識できていない。さらにメディアでは景気や法改正、環境についてネガティブな情報を流している。この2つが重なって、将来ではなく目の前や、身の回りにある『そこそこの幸せ』で満足し、停滞してしまう。これはすごくもったいないことです。みなさん未知数の可能性を秘めているのに」。
就職後、多くの人がキャリアデザインに悩む原因には、ロールモデルの不在もある。いま現役で働いている女性たちの、もっとも身近なモデルはやはり「母親」。しかし母親世代は「出産を機に退職」してきた世代なので、出産後の具体的な職場復帰の方法などを教えてくれる人が少ないことも不安の要因となっている。
キャリアデザインのために、意識すべきこと
そんな状況から脱し、理想に近づくためにできることは何だろう。「結婚や妊娠、出産など、ライフイベントの多い女性だからこそ、起こりうるリスクをきちんと想定し、頼れる制度などを知っておくこと。これだけでも、理想に近づく可能性が見えてくるし、キャリアデザインがより現実的・具体的になります」。可能性が発揮でき、理想に向かって前向きに働ける女性が増えるよう、先生は授業でもプロジェクトワークやキャリアガイダンスを行っている。
今回のアヴァンティゼミでは、女性が生きる・働くうえで実際にどのようなリスクが起こりうるのかを、最近の事例を紹介してもらいながら学び、そしてその対処法を知ることができる。先生のアドバイスを聞きながら、もっと素敵な自分になるためにキャリアビジョンを見つめなおそう。