インタビュー

渡辺 晃司さん/仏教は生きる知恵の宝庫。 お寺を地域の人が集う拠点にしたい。

渡辺 晃司(わたなべ こうじ)さん
日蓮宗浄泉寺 副住職
福岡県北九州市出身。福岡県立小倉高等学校、立正大学仏教学部卒業。4年間の修行生活を経て、2013年に実家である浄泉寺へと帰ってくる。「お坊さんとティータイム」「寺子屋ヨーガ」などユニークな活動を展開。「お坊さんからの手紙」を毎月発行、Facebook「寺子屋浄泉寺」でもメッセージを発信中。

 

渡辺さんへ3つの質問

Q. この仕事に向いている人は?
A. お坊さんを生き方としてとらえられる人。お役に立ちたいという志がある人。

Q. あなたのバイブルは?
A.「法華経」。仏さまの教えと御心が凝縮されています。私の実践書です。

Q. あなたのメンターは?
A. お坊さんという生き方を示し、この道に導いてくれた師である父。

仏教は生きる知恵の宝庫。お寺を地域の人が集う拠点にしたい。

“お出かけ”するお坊さん

平尾台の麓にあり、豊かな自然に囲まれた浄泉寺。副住職の渡辺晃司さんは、月1~2回小倉のカフェで「お坊さんとティータイム」を開いている。誰でも自由に参加でき、費用はドリンク代のみ。ワイワイおしゃべりをしながら、参加者のリクエストに応じた説法もする。

「幸せは、一人ひとりが感じていくもの。『ありがたいなぁ』と恵みに気づけた時、幸せを感じるのだと思うのです。苦しみは、思い通りにしたいと欲する心に生じます。乗り越えるためには、諦めも大切。納得して想いを断ち切るポジティブな諦めは、次の行動につながります」。

幸せ・苦しみ・諦めの3点セットは、人気の説法メニューだ。わかりやすい言葉で仏教を伝え、幅広い年齢層の人に親しまれている。「仏さまの教えはとてもシンプルで実践的。もっと身近に感じてもらいたくて、自分から外に出て話そうと思いました」。

厳しい修行で見えたもの

渡辺さんは7年前に僧侶となった。高校時代は建築士を目指して大学を受験したが、結果は不合格。住職の父とは、建築学部に受からなければ、仏教学部へ進学する約束をしていた。「本当にやりたいならもう一度がんばったほうがいい。お坊さんというのは職業ではなく生き方だから」と父から言われ、改めて自分の道と向き合い、僧侶として生きる道を選んだ。

大学卒業後、東京の寺で4年間住み込みの修行、そして100日間の荒行に臨んだ。日蓮宗大本山の寺にこもり、朝2時半から夜23時まで1日7回水をかぶる。ひたすら経を読み、食事は朝と晩の粥だけ。寒さと空腹と睡魔で極限状態に追い込まれ、何度も心が折れそうになった。「小さなことでイラつき、理想とかけ離れた醜い自分を見てすごくショックでした」。 苦しさを越えられたのは、一緒に修行をしている仲間、応援してくれる両親、友達など周囲の人の温かい支えだった。自分の未熟さを素直に認めたとき、感謝の気持ちが湧き上がり、「恩を返したい、支える人になりたい」と心から思った。

お寺が変われば日本が変わる

志を持って寺に戻ったが、渡辺さんは悶々とした1年間を過ごす。小さな寺に僧侶が二人もいて経済的に重荷ではないか。思いが空回りするばかりで行動できずにいたとき、寺の創始者である祖母が他界。それをきっかけに自分のあり方を問い直し、心が決まった。

渡辺さんは寺を飛び出し、人と会う機会を作った。縁がつながり、手さぐりで始めた「お坊さんとティータイム」は大盛況となった。「お寺はコンビニの数より多い。お寺が変われば日本が変わると思うんです。地域の人たちに喜ばれ、元気になれる場所でありたいですね」。 今を生きる処方箋として仏教を伝え、共に学び、自立した者同士が支え合える場を目指す。

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