「あなたは『嫌われる勇気』をもてるか」
経済誌「週刊ダイヤモンド」が7月23日号で「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)を特集した。フロイトなどと並び「心理学の三大巨頭」の一人、アルフレッド・アドラー(1870~1937年)の心理学を分かりやすく教えてくれるのが「嫌われる勇気」だ。2013年12月に刊行され、100万部を超えるベストセラーに。刊行から2年半が過ぎて特集が組まれることに驚く。今年2月には続編「幸せになる勇気」が刊行された。こちらも約40万部のヒットで「勇気の二部作」と評判になっている。
私が「嫌われる勇気」を読んだのは2014年2月。おもしろくて一気に読み終えたが、これほど長く売れ続けるとは思わなかった。日本ではバブル経済の頃に「NOと言える日本」という本が売れた。このときは経済的な繁栄により、自信を深めた日本人に読まれた。
多くの日本人はなかなかNOと言えない。周囲から嫌われるかもしれないような言動もしない。スマートフォンで「LINE」をしていて、既読スルーができない人も、嫌われる勇気が足りない。企業社会だけでなく、友人や家族に対しても。何とかしたいけど方法が分からない。それが今、「嫌われる勇気」を多くの日本人が読む理由なのだろうか。
「ダイヤモンド」の特集を読み、「勇気の二部作」は女性の読者が多いことを知った。男性管理職の立場では「人に褒められるためでなく、自分がしたいことをやれ」「嫌われる勇気を持つことで人は変われる、未来も変えられる」と諭されても「それはそうだけど」で終わる。
東京都の初の女性知事になった小池百合子氏の選挙戦を見ていて、彼女の嫌われる勇気に感心した。日本の政治も経済も、女性たちが嫌われる勇気を持って行動することで大きな変化が生まれるのかもしれない。
西日本新聞社 編集局 経済部長
椛島 滋さん
1963年生まれ。西南学院大学文学部外国語学科卒。本社経済部ほか東京、熊本、中国総局(北京)等で勤務。2012年から九州経済面の部長コラム「気流」執筆。アヴァンティ主催イベントにも出没している。