
2017年9月号のカルチャーでご紹介した映画監督MJさんの『kitakyushu stories(北九州物語)』。第1章の予告編を見て、「全編を見てみたい!」という反響をたくさんいただきました。世界のショートフィルム祭で次々に賞をとり、上映されていますが、残念ながら日本での上映会はもう少し先になりそうです。
そして昨日ビッグニュースが!
「北九州物語」の第4章で、スティーブンキング著作の「愛するものは全て 運び去られる (All That You Love Will Be Carried Away)」 を使用することに、スティーブンキングご本人から正式な承認が、MJの元へ届いたそうです。キングストーリーが日本で映画化されるのって初めてじゃないでしょうか。MJすごい!
また、「第2章:虚空」が10月に無事クランクアップ。尺八を吹いているオーストラリアの人と、ビデオを回しているカナダの人、外国人2人が北九州市の街中で、和気藹々と何か面白そうなことをしている…と気になっていた人いませんか? 監督のMJさんと、第2章主役のロアンさんにその辺のお話を聞いてきました。
「第2章:Kokū」は、愛、眺めるだけの恋、そして、愛おしくても二度と会えないかもしれない恋愛。まずは監督のMJさんにインタビュー。

―「第2章:Kokū」には音楽が象徴的に使われてるね。
僕はミュージシャンを心から尊敬してて、彼らの才能が羨ましい。楽器を通してあんなに感情を表現できるのが信じられないよ。音楽は世界中のどこででも理解される共通語だ。「第2章:Kokū」は音楽からインスピレーションを得て、愛と、失われた愛を探求する物語にした。
僕の日本語解釈が正しければ「虚空」って何もない空間とか、雲ひとつない大空のことだよね?でもこの言葉は、心の状態を表すときにも使える。色も形もない、心。空しい気持ちだったり、逆に孤独を打ち消したり。それで僕は第二章を、毎日同じ場所に行ってひとりで同じ曲を黙々と演奏してる尺八奏者についての物語にしたんだ。
―俳優はどうキャスティングしたの?
主役のロアンとは北九州市のストーリーエグゼクティブプロデューサーのマット・ロウレスを通じて知り合ったんだ。ロアンにはジョン・ウェインやハンフリー・ボガートみたいな、ザ・映画スターの風格があって、この映画を次の次元までもっていってくれた。この配役もひとつの決め手で、僕は第二章をモノクロでとることにした。愛を素朴に映画の中で語るうえで、この物語に色を想像することができなかったんだ。
―第2章で表現したかったことは?
映画や音楽、絵画、彫刻、どんな芸術作品の裏にも、何かの答えを求めて理解しようとしてる芸術家がいる。「第2章:Kokū」では愛、眺めるだけの恋、そして愛おしくても二度と会えないかもしれない恋愛について掘り下げていった。
「真実の愛って?」僕の作品が、その答えを見つける助けに少しでもなれたら嬉しい。
M.J.DiRocco カナダ・モントリオール出身。film production Concordia University卒業。幼稚園で英語教師をしながら、映画制作や絵本制作を行う。
演技がはじめてなんて信じられないほど、“俳優”の風格。尺八の師範で英語講師というユニークな経歴の持ち主でもあるロアンさんに、映画出演についてインタビューしました。

―撮影はどうだった?
楽しかったよ! ほとんどMJと2人での撮影だったから、のんびりとリラックスして、いつも通りに演奏できた。でも他の人がいる中での撮影もなかなかおもしろかったよ、だって「外国人2人」が何をしてるのか、不思議そうに見てたからね!
友達からの紹介でMJに会って、1作目を見せてもらいプロジェクトの説明を受けたんだ。とても興味深くてぜひ参加したいと思った。自分の役も、もちろん演じてみたいと思ったしね。
―撮影での演奏は普段と違う?
発表会で演奏するのとは、全く違うものだったよ。撮影はいろんな角度から撮るために、監督(MJ)がOKを出すまで何度も同じシーンをやるからね(笑)。
とてもいい経験になったよ!MJとは知り合ってまだそんなに長くないけど、昔からの付き合いのように感じるし、彼の演技指導は分かりやすかった。撮影中にローカル局がいくつか撮影に来たんだけど、それを見た通りすがりの人たちが「何の撮影!?」と足を止めるのも面白かった!
―18年習っている尺八について教えて!
師匠の川原先生に出会えたことは、僕にとってとてもラッキーなことで、紹介してくれた友人にもとても感謝している。(Thanks, BEN!)
最初に尺八をテレビで見たとき、演奏するのは難しいと思った。でも川原先生に毎週指導してもらって、楽しみながら練習してきた。おかげで師範になれたけど、今でも毎週お稽古に通ってるよ。毎日練習しないとすぐに吹けなくなるからね! 尺八を通じて知り合えた人たちにも本当に感謝してる。言葉の壁はあっても、楽しい時間や素晴らしい経験を共有してもらえてるからね。
―MJの表現しようとしている「虚空」に、尺八との共通点を感じる?
ある程度は共通点があると思う。人々は誰しも、より良い人生を求めて答えを探しているからね。「虚空」で演じた役もそうだと思う。尺八との共通点はどうだろう・・・師匠に聞いてみるよ!
―北九州についてどう思う?
第二の故郷といえるくらい長く住んでる。来日したのが1998年で、最初は黒崎に、2008年からは小倉に住んでるからね! 街の様子はもちろん変わったけど、周りにいる人たちは相変わらずみんな親切で優しい。小倉は特に、さまざまな施設がコンパクトにまとまっていて、すごく便利で住みやすい街だと思う。
―日本語の吹き替えについて一言。
吹き替えについてはちょっと心配だった。みんなもそうだと思うけど、自分の声はあまり好きじゃない。あとは正しい発音だったかどうか!日本語は難しいからね、変な日本語に聞こえないといいけど…。
Rohan Smith オーストラリア・メルボルン出身。E-English英会話講師。オーボエ演奏の経験を持ち、来日後出会った尺八の音色に見せられて「都山流」に師事。現在師範。黒崎ひびしんホールでは、和楽器の貴公子・藤原道山先生と「箏・三絃コンサート」で演奏。室町まつりや八坂神社の「夏越祭り」など、屋外イベント出演も。
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「北九州物語 第2章 Kokū 虚空」予告編
Koku from M.J. Di Rocco on Vimeo.
Crowd funding is until December 17
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Special Thanks翻訳協力 Touma Frank、Juri Soeda