
職場の皆が参加した送別会で、上司から「最近太った?」などと言われ、二の腕を触られました。突然のことに驚き何も言えなかったのですが、その場にいた同僚が「それはセクハラですよ」と言ってくれました。しかし上司本人は「ただのコミュニケーション。胸を触ったわけでもないのに。スキンシップは必要でしょ。」と言っていました。上司のしたことはセクハラにならないのでしょうか。上司の顔を見るだけでも嫌な気持ちになってしまいます。

とても嫌な思いをされましたね。結論からいうと、上司のしたことは、セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」といいます)です。
■ セクハラとは
最近特に「セクハラ」という言葉を耳にする機会が多いですね。 セクハラとは、人格権の侵害です。職場において、その地位を利用して、相手に性的な言動をすることで相手の人格を傷つけることをいいます。権利の侵害であり、許されることではありません。
厚生労働省の指針(注1)では、職場におけるセクハラには、「対価型」と「環境型」があるとしています。分類することに意味はありませんが、セクハラとは何かを理解する一つの方法です。
■ 対価型セクシュアルハラスメント
「対価型セクハラ」とは、職場で、働いている人の意に反し、性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し、減給などの不利益を負わせる行為です。性的な関係を断ったら、それに対して報復的な措置をされた場合をいいます。
■ 環境型セクシュアルハラスメント
「環境型セクハラ」とは、性的な関係を強要するわけではないけれども、職場において、働いている人の意に反して、性的な発言や行動をして働く人たちに不快な思いをさせ、職場環境を損なう行為をいいます。
■ 飲み会の席のことでもセクハラになるの?
あなたの上司の言動は、会社の中ではなく、送別会の席上でのことでした。しかし、例え飲み会の席上であっても、職場の皆が参加するもので送別会という会社の恒例行事といえるものであるなど、職場の延長線上のことといえることがあります。 過去には、会社の新人社員歓迎会の二次会の席上の出来事について「勤務時間外・職場外ではあるが、新人社員歓迎会の二次会は職務と密接な関係があった」として責任を認めた裁判例があります。また、三次会終了後の帰宅途中のタクシー内での行為について、どのような会だったかを分析して、「会社の業務に近接して、その延長において、上司としての地位を利用して行われたものであり、会社の職務と密接な関係がある」として責任を認めた裁判例もあります。
■ それはセクハラです
あなたの上司は、「太った?」と身体的な事柄を口にし、さらに二の腕に触るという身体的接触も行いました。勤務時間外の送別会の席上であっても、職場の皆さんが参加するものであって、職場の延長線上と考えられます。上司の行為はあなたの意に反する性的な言動で、あなたに不快感を与えるものであり、セクシュアルハラスメントにあたります。
■ セクハラ被害にあったら
セクシュアルハラスメントは権利侵害であり、不法行為です。セクハラ被害にあったとき、これってセクハラ?と悩んだとき、ぜひ専門家へご相談ください。
(注1)「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号。最終改正:平成28年8月2日厚生労働省告示第314号)
熊本県出身。九州大学法学部卒業、九州大学法科大学院修了。
2015年、弁護士登録・当事務所に入所。依頼者に寄り添う優しく、問題解決のために尽力する強い弁護士となることが目標。趣味はミュージカル鑑賞と手芸。最近ではホームベーカリーでパンを焼くことにはまっている。
女性協同法律事務所
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。