崎田 陽平(さきた ようへい)さん
wasou-ikiya 和造「粋家」代表
北九州市出身。私立常盤高等学校の美術部で油絵に没頭。数々のコンクールで入選、受賞する。九州産業大学芸術学部を卒業後、広告・看板業を10年経験し、独立。デザイン、看板、内装、家具の仕事を始める傍ら、NPO法人「平尾台自然塾」初期メンバーとしてボランティア活動やイベント企画にも意欲的に参加。2010年10月、黒崎にカフェ&アートスペース『REAL DEAL』をOPEN。
TEL/093-631-0011
住所/北九州市八幡西区熊手2-2-25
崎田さんへ3つの質問
1.この仕事に向いている人は?
人間らしく好奇心の強い人。
そして、老若男女関係なく、人との繋がりを大切にできる人。
2.あなたのバイブルは?
「日本のしきたり」。
社会人になるときに父がプレゼントしてくれて、今も時々見返します。
3.あなたのメンターは?
家族、周りの友だち。
“人が大好き”だから
繋がる場を創り、感化し合いたい。
黒崎の商店街を抜けた一角に、白い壁にダークブラウンの格子が走る店がある。『REAL DEAL』と書かれた扉を開くとすぐある木棚には、沢山のショップカードや、ハンドメイドの雑貨がずらり。頭を上げると大正時代のランプが堂々と下がり、2Fには個展などを開催できるイベントスペースもある。個性的な店構えにのまれていると「いらっしゃいませ!」と声をかけてくれた人が崎田さんだった。
芸術家への夢を諦めた20代。
体を壊しゼロになった30歳。
父は剪定師、母は裁断師という家に生まれた。自然と感性が磨かれ、芸術に強く惹かれるようになり、高校で芸術部に入部した。作品が入選することも多々あり、一時は芸術家になることも夢見たが、20代半ばで諦めた。「自分の中で限界が見えてしまったんです。プロの芸術家が頑張れるところまで、僕は頑張れなかった」。
一つの夢が消えたが、芽生える夢もあった。アートギャラリーがあるカフェを開きたい。大好きな人たち同士が繋がりあえる場所を作りたい。そんな思いを漠然と抱えながら働いて10年。忙しすぎる生活に過労で起き上がれないほど体調を崩し仕事を辞めた。職はない、健康も余裕も失った。だからこそ周囲の有難みが身に沁みた。「ここから始めよう」とリセットできたのが、ちょうど30歳のころだった。
これからもずっと出会い続ける。
回復後まもなく『wasou-ikiya 和造「粋家」』を立ち上げた。事業内容は“設計・デザイン”。建築設計がメインかと思えば、名刺やフライヤー、看板デザインも受注、オリジナルの椅子を製作するなど、何でもこいのスタンスだ。同時期に関わった『平尾台自然塾』では自然を体験できるイベントを企画。中でも北九州のアーティストと一緒に平尾台に雑貨や音楽などを一堂に集めた「山中マルシェ」は思い入れが強い。「人と出会うと新しい考え方に触れ、刺激になる」と改めて感じた経験だ。当時の作家との縁は今も続き、冒頭に登場した店に作品が並ぶ人も。「カフェにデザインに設計、どれがメインなんですか、ってよく聞かれます(笑)。でも人と人が繋がる場を創るという点では、僕の中では全部同じことなんです。思い通りに行く事は少ないですが、純粋に物事を楽しみたい」。
芸術家にはなれなかったけれど、彼らをサポートする側にはなれた。目標はたくさんの人に出会い続けること。そして「コカ・コーラのCMに出演すること! あの世界観とコーラが好きなんです」と愛嬌たっぷりに話す。彼のもとで起こる化学反応に、今後も注目したい。