皆様こんにちは。
前回コラムまで主に歴史を中心としたコラムを掲載してまいりました。
今回は、経済コラムを2話に亘って掲載させて頂きます。
今、現政権が推し進める経済政策、いわゆる「アベノミクス」。
実際、アベノミクスってなんなの?と言わる方もたくさん多いのですが、これは、安倍首相の「アベ」と経済学を指す「エコノミクス」を合わせた造語になります。
かつて、米国でレーガン大統領時代に、レーガン政権の経済政策を「レーガノミクス」と言われましたが、その日本版に当たります。
このアベノミクスを推し進める現政権ですが、そもそも報道などでは、
日本は復活もできない経済状態である!!
日本は破綻するのではないか??
とまで言われています。
さらには、
日本政府の借金が1000兆円あるから、これは国民が一人当たり800万円借金していることになる・・・。
そういう報道を耳にしたことあるのではないでしょうか?
日本は借金で大変だー!!・・・
日本は破綻するー!!・・・
しかし、逆にこういう報道も注目されませんがあります。
「過去最高!日本国の対外純資産は世界一の367兆円!!」(財務省2014年末データ)
「外貨準備高、中国に次いで世界第二位の12,600億ドル」(財務省2014年末データ)
今回のコラムでは2話に亘って、日本国全体の資産と借金とは?日本は誰から借金しているのか?そして日本は本当に破綻するのか?ということを検証していきます。
第1話の今回は、対外純資産と日本政府の借金相手についてお送りします。
まず、対外純資産とは、
日本の「政府」「金融機関」「民間企業」による、外国への「投資」の合計から、外国から日本への投資の額を引いたものを言います。
日本政府は、外国への投資として主にドルを中心とした外貨を持っています。
外貨を買うには、円を売ってドルを買います。
皆さんも、外国に旅行する際に、空港やホテルで両替しますよね?
あれは、円を売って、ドルを買っているので、日本からすれば、円を渡しドルを手に入れているので、商行為、すなわち投資ということにあたり、ドルを持つとは外貨資産を持っていることになります。これを「外貨準備高」と言います
続いて、金融機関ですが、日本の金融機関は、銀行・証券会社・保険会社が主にありますが、外国へ「投資信託」を行ったり、外国の株を買ったり、銀行なら海外企業に「貸付」を行ったりします。それも投資として資産を保有していることになります。
民間企業では、海外に出店すると、土地や建物を海外に持っていることになりそれは海外投資資産になります。
対して、外国人が日本の株を購入すると、その外国人は日本の株資産を持つことになります。外国企業が日本に出店すると、日本の土地や建物を外国企業が保有することになります。
このように、外国人や外国人企業が日本に資産を持つということは、日本からすれば外国人に対して負債を持つことになります。
では対外純資産とは、
「政府の外貨準備高+日本の金融機関の海外投資資産+日本の民間企業の海外投資資産」
から
「外国人の日本への投資額の合計+外国企業から日本への投資資産合計」
を差し引いたものを表します。
これを金額に直すと(2014年現在財務省データ)
日本全体の海外投資額 「945兆円」
外国から日本への投資(日本の対外負債) 「578兆円」
差し引くと
対外純資産「367兆円」ということになります。
すなわち、これは言いかえれば、日本は外国に対して367兆円の黒字資産を持っていることになります。これは前代未聞の世界最高額であり、二位中国の214兆円に比べ、150兆円も引き離すぶっちぎりの世界一です。
これだけ、外国に対して日本国全体としてぶっちぎりの資産を保有しているのに、報道ではあまり注目されず、ひたすら日本の借金1000兆円!!国民一人当たり800万円の借金!!ばかりクローズアップされます。
何故なのでしょうか?
これは、事実関係を整理していないからこういった報道になっているのです。
何事も望遠鏡を見ながら顕微鏡を見なければならない、マクロを見てこそミクロが見えるということです。
ここまで、対外純資産が世界一というお話をしましたが、報道等で言われている日本の借金1000兆円!!という部分についてを述べましょう。
そもそも、1000兆円の借金といいますが、
借金とは、誰が、誰に、どんな通貨で借りているのでしょうか?
「日本の借金、日本の借金」といいますが、実際は誰が誰に借りているかを知らない人もたくさんいます。
まず、報道等で言われるいわゆる日本の借金は、「日本国政府」の借金です。
では、「誰が」はわかりましたから、次に、「誰に」借りているのか?です。
よく言われるのは日本は外国にお金を借りているのではないか?と言われます。
現に、2010年に借金危機に陥ったギリシャは、借金の70%を外国から借りていました。
借金というのは、前出のとおり、誰が誰にというのが重要です。
100借りているならば、必ず100貸している人がいます。
では日本はどうでしょうか?
円グラフ1をご覧ください。
割合1位:35.5% その他金融機関(大半が日本銀行)
割合2位:25.4% 保険・年金基金
割合3位:22.9% 民間銀行
割合4位: 5.5% 社会保障基金・地方自治体
割合5位: 5.5% 海外
割合6位: 2.6% 投信・証券など
割合7位: 1.4% 個人・家計
割合8位: 1.0% その他
海外からの借金は、わずか5%に過ぎないのです。この比率はこの10数年以上にわたってほぼ変わりがありません。
つまり、日本政府は外国からはたった5%しか借りておらず、95%は日本人から借りていることになっています。
では、グラフ2を見て頂きましょう。
2015年度現在の日本の資産と負債の貸借対照表です。
日本政府は1013兆円の借金がありますが、680兆円の資産を有しています。
通常、資産から負債を差し引くと正味の額が出るのです。これを純資産と言います。
当たり前ですよね。
ある人物Aさんが
クレジットの支払いなどの借金が100万円あります。
しかし、貯金は200万円あります。
と、なればこのAさんの実際の帳簿は、100万円の純資産ということになります。
ならば日本政府はどうでしょうか?
資産から負債を差し引くと、日本政府の純資産はマイナス333兆円ということになります。
と、言うことは、国民一人当たり800万円の借金ではなく、ちゃんとした会計で考えれば国民一人当たり266万円なのではないでしょうか?
実は、これも違うのです。
今回はここまで。次回は
「一体、日本の借金というのは実はなんなのか?」
という真相に迫りたいと思います。
文/西坂智成
プロフィール
西坂智成
株式会社Brain Communications代表取締役
産経新聞西部本部 電子新聞販売顧問、「ジャーナリスト井上和彦」海外取材・講演企画テクニカルオペレーター、ファイナンシャルプランナー
福岡県嘉麻市出身。地元高校卒業後、大手スーパー、地場コンクリート会社、外資系生命保険会社を経て、企業会計分析・創業支援コンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして、「新聞経済欄が理解できるようになる」経済塾を開講。
また、会社経営の傍ら、ジャーナリスト井上和彦氏のオペレーターとして師事し、日本の近現代史の真実を広めるため、井上氏と共に積極的に海外取材を行う。