仕事に育児に、毎日があわただしく戦争のようなママたち。
そんなママたちの抱える課題や解決策を、今月は「職場との連携」面から見てみよう。
◎福岡市の待機児童は九州では最も多い
893人で4年連続増加。(2012年4月1日時点)
北九州市は2012年4月時点で待機児童ゼロ。
北九州市の「元気発信プラン」に従い、保育所を設置したり、定員を増やす計画を進めたため。
待機児童日本一だった横浜市は1552人(平成22年)→179人(平成24年)と激減。
新設や増改築などによる認可保育所の定員増加や、市が助成する認可外の「横浜保育室」の拡充、保護者の相談に応じる専門の「保育コンシェルジュ」を全区に配置したことなど、さまざまな施策が功を奏した。福岡市にも期待したい。
◎家事分担、育児分担の割合は依然として夫より妻。
子どもが病気になった時の対応で「自分が仕事を休む」と回答した割合
男性 34.8% 女性 87.3%
(ムーブ 「未就学児を育児中の労働者のワークライフバランスに関する現状」調査 2012年)
就学前児童の母親に対し、出産前後(それぞれ1年以内)に離職したかと質問
出産1年前に就労していた母親のうち、約7割が離職
(福岡市「次世代育成支援に関するアンケート調査」2010年)
就学前児童を持つ親の平均家事時間
母親 週に約36時間(2187分/週) 父親 週に約2.4時間(148分/週)
就学前児童を持つ親の平均育児時間
母親 週に約49.8時間(2993分/週) 父親 週に約10.6時間(711分/週)
(次世代育成支援に関するアンケート調査 (就学前児童) 福岡市 2010年)
永田 弘美さん(30歳)
看護師・北九州市在住
【家族構成】
夫(会社員)・長女(4歳)、長男(1歳7カ月)
現在1時間の時短勤務中(8:30~16:30)
「使い勝手がいいミニトマトは常備!」「シリコンスチーマーで根菜類をチンすれば、火の通りが早くて時短になるよ」「1週間の食材買い溜めは常識」などママ同士が集まれば時短話に花が咲く。
「最初は少しパニックになりました」と永田さん。兄弟は同じ保育園になるよう便宜を図ってもらえるものだが、当時長女が通う保育園の職員数が足りず、別の園に通うことに。復帰直後で業務のカンも戻らない中、予想以上に大変だったのは園ごとの「保育園ルール」。オムツの種類やヨダレかけなど準備するものが園ごとに違う。食事はいつ何を食べたか、授乳、排便、就寝の時間は、など連絡帳に書くことも山のようにある。「下の子は私、上の子は夫が保育園に連れて行き、帰りは私が迎えに行きました。2カ月後に同じ園に通えることになり、本当によかったです」。
職場復帰して身体が慣れるのには少なくとも1カ月はかかった。長男が毎日のように熱を出し、仕事にならない時も。「どうやったら早く仕事を終えられるか、を常に考えるようになりました。毎日最初に今日は何をどういう優先順位でやるか、という計画をたて、何事も早めに終わらせます」。子育て前と比べ集中力は格段に上がった。最初の子の時には夫ともケンカしながら家事や育児の分担を決めていった。「私が全部家事をすればそれが当り前になる。でも『こうしてほしい』と伝えれば案外やってくれるんです。子育てしながら働くには夫の協力は絶対必要。自分がしなきゃと思い込んでいたのは私の方だったかも」。一人目で育児の勝手が分かり、今は夫の協力もスムーズだ。今も「夜、目を閉じるまでが戦いです」という永田さん。「でも子どもと離れる時間があるからこそ、一緒にいる喜びは大きい。母ではない時間があるのもよい気持ちの切り替えになります」。仕事は続けたいのだと笑顔を見せてくれた。
知っておこう、地域で行う子育ての相互援助活動
ファミリー・サポート・センター事業
市町村が子どもの預かりや保育所への送迎など、子育ての支援を受けたい人に支援したい人の組織を作って行う、相互援助活動。
◎こんなことをサポートしてくれます
・子どもの預かり
保育施設の保育開始時や保育終了後/学童保育の終了後/学校の放課後/冠婚葬祭や他の子どもの学校行事の際/買い物等外出の際
・保育施設までの送迎
子どもを預ける依頼会員と預かる提供会員は、事前にセンターで顔を合わせて打合せをするので「どんな人に預かってもらうの?」という不安はない。提供会員は講習を受けており、安全を第一に預かる。平成21年度から、病児・病後児の預かり、早朝・夜間等の緊急時の預かりなどの事業(病児・緊急対応強化事業)も始まっている。
※利用料金は1時間500円~1,000円程度。(地域により差がある、確認を)
※現在県内に30カ所程度
ファミリーサポートセンター福岡 http://fukuoka-fsc.cocolog-nifty.com/
シルバー人材センター
高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献する組織。
◎働くママにはこんなサポート
・育児サービス
産前・産後の手伝い、学童保育の補助、サークル活動時の託児、園児の送迎、登下校の付き添いなど
・家事サービス
掃除、洗濯、留守番、食事の支度、買い物、衣類の整理など
※県内に託児所を持つ人材センターもある。(現在筑紫野市、大牟田市など県内5箇所)
※県内に40カ所程度
※家事1時間800円程度(地域により差がある、確認を)
●公益社団法人 福岡県シルバー人材センター連合会 http://www.fscr.or.jp/
優秀な人材は会社も手放したくない。
自分が前向きで楽しくいられる選択を。
極東ファディ株式会社 代表取締役社長
秋本 修治氏
●業種/卸売・小売業 ●社員数/147名(うち33名女性)●パート社員/320名
次世代育成支援対策推進法による一般事業主行動計画で、総合職社員が育児休業後、3年間短時間勤務等就業形態を自由に選択できる制度が整備され、今期、運用がスタートする。
わが社では今年10月、総合職の女性が1年間の育児休業を経て復帰してきます。これは会社として初めての例で、それまでは出産を機に退職、復帰するとしてもパート勤務がほとんどでした。能力のある社員であっても本人の希望であれば仕方のないことだと思っていました。でもこの女性社員は出産しても同じ総合職で復帰したいという希望を伝えてきたのです。それが今回、子育てをしながら働き続ける制度を新しく整えることに繋がりました。接客、主婦目線の企画など、わが社の事業展開のために女性の力は大きい。「子どもを産んでもやめない」という雰囲気を作ってあげることが大切なのかもしれません。復帰か退職か、どちらにしても自分が前向きに楽しくいられる選択をして欲しいですね。子育てしながら働きやすい環境にするための希望があればこれからも柔軟に対応していきたいと考えています。
目的、目標、理念を明確にする。
社内のルール(内部統制)を作ることが会社の発展や働きやすさに繋がる。
コンダクト株式会社 代表取締役
和田 克之氏
●業種/不動産業 ●社員数/25人(うち女性10人)
「トップのリーダーシップによる働きやすい職場環境づくり」で第3回北九州市ワーク・ライフ・バランス表彰 奨励賞を受賞。
10年前に、会社の上場を考えた時、内部統制を整えるためにすべての業務を洗い出し、社内ルールを新しく作りました。不動産業ではまだ少ない週休2日制にし、長時間労働防止のために労働時間を管理してサービス残業をなくし、子育て中の従業員の勤務時間も柔軟に対応しています。以前は現場の管理職から私へ提出されていた日報も全社員が共有できるようにし、仕事の見える化を図りました。また数年ごとに部門の中で業務の入れ替えを行い、急な人事や事態にも対応できるようにし、コストはかかりますが2重体制をとっています。子育て中の社員に限らず働きやすい職場環境は不可欠。現在も4半期に一度は会社の改善計画を全社員に出してもらい、できる端から導入しています。会社も社員もお互いの義務をきちんと果たすことが理想だと思っています。
大事なのはできることを見つけ、成果を出していこうとする姿勢。
ロー紀子さん
MAMA-PLUG代表、プランナー&異文化交流コーディネーター
自身も小さい子を持つ母として子育て中のママの“新しい仕事のカタチ”を提案していく「MAMA-PLUG」で商品開発や書籍の出版を行っている。
MAMA-PLUG http://ameblo.jp/mama-plug/
香港にいた頃、管理職として働くワーキングマザー(WM)が多いことに驚いた。香港は残業が少ない上、標準的な共働き家庭では家政婦が雇える等、WMが働きやすい環境が整っている。香港が羨ましい…とはいえ、日本の現状を嘆くのではなく、WMの当事者として働きやすい環境を整えたい…その実験的な試みがMAMA-PLUGだ。昨年、スタッフの1人が自宅保育のまま、広報の仕事をやり遂げた。できる仕事やキャパシティなどは、その都度相談しながら進め、私や同僚が保育をすることもあった。試行錯誤の結果、彼女の成果「メディアで紹介して頂いた件数」は、直近1年で50件以上。経営者なら、見逃せない数字だ。
子どもの急な発熱による早退等、WMである以上、会社や同僚に迷惑をかけることは避けられない。それを自覚した上で、できることを見つけ、成果をあげていくことが周囲の理解にも繋がり、キャリアの継続も可能になるのではないだろうか。残念ながら「WMは大変」が日本の現実だ。でも、親の背中を見ながら子が育つことを考えると、困難にぶつかった時こそ、どんな姿勢で望むのか? を大切にしていきたい。
※お詫びと訂正
9月号「ママたちのお仕事戦記」 p17 (北九州版 p19)
「知っておこう 働くママの権利 お金のこと」
⑤育児休業者職場復帰給付金と⑥育児休業給付金は2010年4月1日より統合され、「育児休業給付金」として支給されております。
読者の方ならびに関係者の皆様にはご迷惑をおかけしました。
申し訳ございませんでした。