今回は、世界一の長寿国としての香港をご案内したいと思います。
あれ?長寿国といえば日本じゃないの?と思われるかもしれません。
実は香港は2017年に日本を抜いて世界一の長寿国になったのです!

以下の表は、2017年12月にWorld Economic Forumというスイスの機関が発表した長寿国の世界ランキングです。※1

上位のどの国も、平均寿命に大きな差はありません。世界は全体としては、やはり長寿化していると言えます。
今回はなぜ香港が長寿国になれたのか、その秘密を探っていきたいと思います。香港人の長生きの秘訣とは何か、独断と偏見ですが、いくつかご紹介しましょう。
・国が狭い
香港の国面積は1,104km2で、分かりやすく例えると東京23区の約2倍の面積しかありません。※2
面積が小さいので、何かあった時にすぐに駆けつけられ、万が一を防げているかもしれません。
・メイド文化
以前のコラムでお話したと思いますが、香港は夫婦共働きが当たり前の国です。そのため、多くの家庭にはメイドさんがおり、子供だけでなくご年配の方のお世話もしてくれます。
介助付きではあるものの、外出をしている高齢者は多く、車椅子でお出かけしている様子をよく見かけます。
高級レストランでお洒落をして食事を楽しんだり、ローカルな飲茶の店で友達と大声でおしゃべりしたり、カフェで犬とゆっくりしたり、公園でのんびり散歩したり・・・いくつになっても、充実した毎日を過ごせているのは秘訣かもしれませんね。
・太極拳
香港のおじいさん、おばあさんは早起きです。
朝7時くらいに公園やちょっとした広場に行くと、太極拳をしていたり音楽に合わせて体を動かしている様子をよく見ます。
適度な運動は身体に良いといいます。とにかく動くことによって健康管理に繋がっているようです。
・食べ物
香港人は、冷たいものをあまり食べません。とても暑い夏でも暖かい飲み物や温かいデザートを好んで食べます。これは、東洋医学からきている知恵で体を冷やさないためだそうです。
また、広東料理にはツバメの巣やアワビ、フカヒレなどの高級食材から蛇スープや亀ゼリーなど日本になじみのないメニューがあります。
お肌を綺麗にしてくれたり、体を温めてくれたり、解毒作用があったりといいことづくしの食材ばかりです。
体を温めて、毎日の食事から病気になりにくい身体を作っているということですね。
・漢方
病気予防の意味を込めて日常的に漢方薬を煎じて飲んでいます。
香港の漢方専門医では、都度カウンセリングをして、その人、その時にあった漢方を処方してくれます。毎日飲んで、病気になりにくい体を作っています。ちなみに、旅行者でも処方してもらえますよ。
・自己管理
これも前のコラムでご紹介しましたが、香港には健康保険や年金がありません。そのため、病気になった際の自己負担がものすごく大きいです。更に仕事もできないとなると、とても困難な生活が待っていることになります。そうならないために、若いときから病気にならないよう、日々の生活を心がけます。その結果が長寿に繋がっているのではないでしょうか。
香港は、昔から「医食同源」の考えが根付いており、自然と毎日の食事や生活で健康な体が作られているのです。
香港の医療制度
さらに、興味深いのが、香港の医療制度です。
香港には、大きく分けて3種類の医療機関が存在します。
・私立病院
大型の私立病院で、専門科も多く、医療機器もサービスも充実しています。中には日本語通訳のサービスまで提供している病院もあります。外国人の患者も多く見かけます。支払いは100%自費での負担となり、かなりの高額です。日本では健康保険が適用されるので、100%自費負担というだけでも高い印象になりますが、それよりも高いという感覚で、自分で掛けた医療保険も無しだと躊躇するほどです。なお、カード決済も可能です。事前に予約していくことで、ほぼ待たずに診察を受けられ、スムーズに終えることができます。
・公立病院
香港政府が管理・経営する病院です。地区にひとつは設置されていて、かなりの大型総合病院です。基本的に通訳はおらず英語か広東語での会話が必要です。公的なサービス提供の一環として香港政府が管理しているので、香港永住者や香港居住者(=香港ID保有者)には費用が安くなるように設定されています(下表参照※3)。香港へ旅行でいらしている方は、下表よりも高い費用が請求されます。
種類 | 金額 |
一般外来 | 50HKD(約700円) |
事故や緊急事態 | 180HKD(約2,520円) |
注射 | 18HKD(約252円) |
入院費/1日あたり | 120HKD(約1,680円) |
私立病院に比べると驚くほど安いです。ただし、いつ行っても長蛇の列で、余程の急患でないと、とても待たされます。
・クリニック(医院)
大きな病院に属さない、個人医師が開設している医院です。医師の専門により何科を診療するかが明示されています。医師を探すときには、基本的に専門医・専門クリニックを探すことになります。香港の医師の多くは英国やオーストラリアで学んで学位を取ってきた医師が多いことも特徴です。なお、英語での会話はほぼ問題ありませんが、医師自身が何語で話をしてくれるかには差があります。費用は私立病院と同じく、100%実費負担となり、クレジットカード決済が可能です。診察の予約も必要です。
この3種類の病院を比べると、注目すべきは「公立病院」の費用の安さです。実際に請求額を見ると驚きます。さんざん待たされるのですが、支払いの時に、費用を見ると安いので仕方ないなと、風邪をひいて苦しんでいるのに冷静に納得してしまうほどです。
香港には、公的年金や健康保険制度がないために、日々の生活や食事に気を遣い、病気に備えているとお話したと思いますが、万が一怪我や病気になっても公立病院へ行けば、非常に安く、医療を受けることができます。
たくさんの人が公立病院で医療を受けるので、先生方の患者さんを診る数がとても多く、数をこなしているため、熟練度や技術の高い医療を受けることができると言われます。(もちろん、医師の技術に個人差はあります。)
自分の置かれた環境や収入に合わせて、病院も多様な選択肢が用意されている点は、素晴らしいですね。医療水準も相当に高いといわれています。そうした点も、香港の長寿の秘訣のひとつになっているのだと思います。
※1 文献:World Economic Forum (最終閲覧日2018年10月22日)
「Global Competitiveness index 2017-2018-Competitiveness Rankings」より
http://reports.weforum.org/global-competitiveness-index-2017-2018/competitiveness-rankings/#series=LIFEEXPECT)
※2 文献:ウィキペディア(最終閲覧日2018年10月23日)
「香港」より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E6%B8%AF
※3 醫院管理局HP(最終閲覧日2018年11月9日)
Fee and Chargesより