女性活躍の波、今後どうなる? [Women Empowerment ]

国を挙げての政策「女性活躍」。この動きで私たちを取り巻く状況はどう変わっていくのか、私たちはどう状況を見通して構えるべきか。組織論・リーダーシップ論を中心に第一線で研究を進める法政大学の高田教授と弊誌アヴァンティの村山がおしゃべりしてみました。

村山 由香里
【 株式会社アヴァンティ 代表取締役会長 CEO 】 
地元ミニコミ誌で編集を経験後、1993年自宅マンションでアヴァンティを起業。社長兼編集長として17年たった2010年、社長を退任して福岡県男女共同参画センター「あすばる」館長に就任。在職中は、女性起業家支援、企業における女性活躍に力を注ぎ、男女共同参画センターが経済界と連携する基礎をつくった。2015年同館長退任し、6月より現職。自治体や企業で講演・研修多数。

管理職や役員に挑戦して欲しい。
なってみると 世界が拡がり、
裁量が増えて、やりがいがあります。

村山 女性活躍推進法が成立し、ようやく国が働く女性の問題に本腰を入れたと期待しています。この法律によって、日本社会は変わるのでしょうか?
高田 この30年間、日本における正社員の男女比率はほぼ7:3で変わらず、結婚や出産で6割の女性が辞める状況も長年続いてきました。でも、この法律によって企業が具体的な数値目標を打ち出すことは一定の効果があり、女性の管理職が増えると思います。労働人口が減少する中、国も企業も女性の活躍に本気で取り組まざるを得ない状況にありますから。
村山 今まで、「わが社は公平に評価しているので、女性だけの目標は必要ない」とおっしゃる経営者が多かった。行政も企業も、女性管理職率や数の目標値を出す ことに、とても抵抗があったんですよね。
高田 女性管理職がこれだけ少ないのだから、いつまでにどうするという目標を設定しないと増えません。
村山 先行モデルとして、2013年に発足した「女性の大活躍推進福岡県会議」があります。200を越える企業や自治体が女性管理職目標などを登録しています。
この取組みは全国に広がり、今年の内閣府の「女性のチャレンジ支援賞」を受賞しています。
高田 福岡、がんばっていますね!
村山 福岡は中小企業が多いですが、小さい会社ほどやる気と能力で抜擢され、活躍する女性も多いです。
女性はしなやか信仰に縛られている
村山 女性は部下の能力を引き出すのがうまいと思うのですが、男女でマネジメントの仕方に違いがあると思われますか?
高田 一般的に、女性は調整型といわれます。ただ、男性は母数が多いので多様性があり、女性は少なくて実態がつかみにくい面があります。私は女性管理職について10年ほど研究してきましたが、残念ながら女性管理職は辛い・苦しいというイメージを持たれがちで、目指す人があまりいません。
村山 本誌の調査では、管理職女性の8割は「なってよかった」と回答しています。なってみるとやりがいを感じるけど、なる前は想像がつかないからでしょうか、なりたくない人が圧倒的です。
高田 働く女性は  しなやか信仰  に縛られているんじゃないでしょうか。女性はしなやかに働くのがいい、つまり戦わない、調整型、母親・お姉さん型という枠にはめられて、カリカリ数字を上げると叩かれる。私、それは違うと思うんです。数字の上げ方は人それぞれで、男女関係なく自分らしくやればいい。マネジメントしていたら、戦うべき局面もありますから。女性は社会のしなやか信仰 から解き放たれてほしいですね。

高田 朝子さん
【 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科
教授/経営学博士 】 
立教大学経済学部卒。モルガン・スタンレー証券などを経て、米サンダーバード国際経営大学院で修士(国際経営学)。慶応義塾大学大学院経営管理研究科で修士、博士(経営学)。高千穂大学などを経て2008年より現職。日経CNBC「夜エクスプレス」ゲストコメンテーター。現在、「ハッピーな女性管理職」についての本を執筆中。

勝利の方程式がない
これからの時代を生き抜くには
人と交わる力、表現力、 プロデュース能力

村山 「しなやか」は、「女らしさ」の言い換えでしょうか。雑誌でもいい意味でよく使います。日本の働く女性は、仕事の評価だけでなく「しなやか」つまり「女らしさ」も求められるんですよね。
高田 自分の個性を活かしたマネジメントでいいと思います。
村山 日本では仕事に加えて家事と育児を女性がするものだという空気も、大きな負担になっていると思います。
高田 全部やろうとするから辛くなる。できない部分は外注でいいんです。私自身はそう割り切って仕事と子育てを両立してきました。女性は真面目だから、完全なロールモデルを求めがち。美しさに気を遣って仕事ができて家庭のこともきちんとして…それでは息苦しくなります。
リーダーシップを学ぶには、旅に出るのが一番。
村山 ところで、リーダーシップを学ぶには、どうしたらいいのでしょう?
高田 旅に出るのが一番いい。ヨーロッパでは15・16世紀から若いうちに旅に出されて、いろんな経験をして王様になったり大きな企業を継いだりする文化があるんですよ。
村山 なるほど。 
高田 昔は安くていいものを作れば売れる時代でしたが、今は価値観が多様化して、勝利の方程式がない。そんな混沌とした中で働く女性が増え、管理職に抜擢される機会も増えていくことでしょう。 派遣から正社員になる道も広がりそうです。これからの時代を生き抜く上で必要なのは、まずいろんな人と交わる力。自社だけにこもっていたら苦しくなるから、外にネットワークを広げたほうがいい。それから、表現力も磨きましょう。いろんな人を巻き込んでいくために、10歳の子どもにでも理解できる言葉で相手にわかりやすく伝えるスキルが重要です。それに管理職としては、全部自分で抱え込まずに人にふること、プロデュースする能力も欠かせません。 
村山 会社外のネットワークを広げていただこうと、アヴァンティでは人と人をつなぐ場を多数つくっています。混沌とした時代だからこそ、女性にとってチャンスでもありますね。諸外国でも経済が停滞したときに女性が活躍する仕組みができあがりました。 
高田 チャンスが増える一方で、女性を取り巻く状況は厳しくなるという見方もできます。管理職に引き上げられて、メンタルを病む女性が多くなると私は予想しています。過渡期ですから、最初の10年は辛いこともある。女性は覚悟して臨まなければいけません。
村山 そうですか。でもどんと構えて受けて立ってほしいなあと願います。高田先生は今、ハッピーな女性管理職をテーマに本を執筆されているとか。ハッピーに過ごす秘訣を教えてください。 
高田 厳しい環境とはいえ、女性でも努力した分だけ結果が出る社会になるでしょう。管理職でもそうでなくてもハッピーなキャリアを送るためには、日々の小さな喜びや幸せを見つけることが大切。「今日はタイミングよく電車がきた」とか、「きれいな花を見た」とか、そんな些細なことでいいんです。小さな喜びを感じたり、小さな目標をクリアしたりすることで、人はハッピーになれるから。一方で、自分のキャリアについて大きな目標や野望を描いておくことも忘れないでくださいね。 
村山 女性活躍推進法は10年の時限立法。10年後の日本が楽しみです。ありがとうございました。

written by 編集部