山岡 均(やまおか ひとし)先生
九州大学大学院 理学研究院 助教
愛媛県出身。東京大学理学部天文学科卒業。天体物理学・天文学の研究活動を行う一方で、執筆や講演を通じ一般市民への天文学普及や広報にも力を注いでいる。福岡市内の居酒屋やBARでお酒を片手に星を語り合う「サイエンスパブ」を開催(次回6/29)、詳細は「サイエンスパブ」で検索。
星や宇宙について学び、夏の夜空を楽しもう!
7 月7日は七夕。夜空には天の川が流れ、織姫と彦星が一年に一度だけ逢えるというロマンティックな一日だ。昨年2012年は「金環日食」や「金星の太陽面通過」など数々の天体ショーが注目され天文イヤーと呼ばれていた。夏の夜空に浮かぶ星の楽しみ方、私たちをとりまく宇宙についてもっと知りたいと、今回は九州大学で天文学の研究を行っている山岡均先生を訪ねた。
天の川・七夕の恋人たちのひみつ
そもそも天の川はなぜ七夕の時期にしか見ることができないのだろうか? 素朴な疑問に先生はこう答えてくれた。「実は天の川は一年中見ることができます。ただ、天の川の中でも濃い部分がさそり座やいて座などの夏の宵に見やすい星座の方向にあるため、夏が天の川の季節と言われているのです。しかし時間を選べば、別の季節でも同じ星空を見ることができます。春の明け方で空気が澄んでいるときは、天の川を見るのにとてもいいのですよ。あとは街あかりのない場所で、月が出ていない時刻を選ぶこと。暗い星や天の川を見るのには、他のあかりは邪魔ですから」。
また、織姫・彦星は一年に一度しか会えない切ない恋人の象徴とされている。しかし先生はこんな風に語る。「星の一生の時間と人間の一生の時間を比べてみましょう。私たち人間の寿命を100年としたら、一年に一回会えたとしても100回しか会えません。ところが、織姫(西洋名ベガ)や彦星(西洋名アルタイル)の星としての寿命は約30億年もあります。なので、一年に一回会うと一生に30億回も会うことになります。そんな夫婦、そういませんよね(笑)」。織姫・彦星カップルは遠距離でかわいそうというイメージを私たちは持っていたが、意外とそうでないのかもしれない…なんて考えると、天体の魅力も増してくるのでは?
宇宙を知れば人間を形づくる材料がみえてくる!?
今年、山岡先生が制作に深く携わった「宇宙図2013」が完成した。先生は語る。「この宇宙図は半年間かけて、約2000通にもおよぶ制作チーム・デザイナーとのメールのやりとりを経てようやく誕生したものです。私たち人間の体は「小さな宇宙」ともたとえられますが、その体を作る材料は〝元素〞です。この元素が宇宙に輝く星々から生まれ、まき散らされたものであること、元素がどこからやってきたのかもこの宇宙図を見ればわかります。宇宙のはじまりや広がり方、宇宙の果てについても描いています。最近たくさん見つかっている、太陽以外の恒星をまわる惑星の情報もくわしく述べています」。
これはいうならば、宇宙のはじまりから現代を生きる私たち人間までの歴史・軌跡を記録した壮大な年表だ。宇宙と人間の不思議なつながりを、時間をさかのぼり紐解いていこう。
今回のゼミではまず星空の楽しみ方や、今いちばん天文学で注目されている話題など天文学の入門知識を聞き、さらに「宇宙図2013」について学ぶ。
2013年7月、あなたも天文について知識を深めてみない? このゼミを受ければ、今までただ見上げていただけの星空がより身近に楽しめるようになるはずだ。