インタビュー

椎葉 亮さん・椎葉 裕さん/障がい者、健常者の境界線を取り払い、 互いの個性や不足を補い合う社会に。

椎葉 亮(しいば りょう)さん
『社会福祉法人共栄福祉会 障がい者支援施設
板屋学園』園長

生活に必要なスキルや人との関わり方などを、入所者が自然と身につけられるよう、応用分析学を活用した個別支援計画を立てるなど、従来にない新しい視点で独自の支援活動を行う。入所者の描いた絵をポストカードやタオルなど商品化・販売するなど、『板屋学園』の人たちの感性の素晴らしさを社会へ発信する、アート活動にも力を入れている。

椎葉 裕(しいば ゆう)さん
株式会社パインズ 取締役/タレント
東京大学文学部卒業後、教員として9年間、県立筑紫丘高校や県立田川高校で勤務した後、ラジオ制作の現場に転職。『FM福岡』の社員を経て『パインズ』へ。現在、『FM福岡』の「GOW」「うわさのかぎかっこ」などのパーソナリティやディレクターとして活躍中。2013年からは、福岡ソフトバンクホークスの主催試合でスタジアムDJを務める。

2人への2つの質問

Q. お互いのよいところは?
A. 兄・亮さん/私の言うことを聞くところ(笑)。男兄弟ではなんとなくの上下関係ができているんです。たまに知力でやり返されますが…。弟・裕さん/人懐っこくて愛されキャラなところ。交流の幅が広いことに、いつも驚かされます。

Q. 印象に残っている、兄弟の思い出は?
A. 中学校のときの年越しの瞬間、大好きなビートルズの曲に合わせて2人で踊りまくったこと。「特別なことしたいね!」と思ってやったことなんですが、なぜ「バック・イン・ザ・U. S. S. R」を選曲したのかは覚えていません…。

障がい者、健常者の境界線を取り払い、
互いの個性や不足を補い合う社会に。

福岡市早良区、背振山の山頂付近にある板屋地区。人口わずか30人のこの場所に、1,000人以上の人が訪れる祭りがある。この地にある障がい者支援施設と地元の人たちが作りあげ、今年で11回目を終えた「せふりの杜 木の葉祭」。 今回は、それを陰に日向に支える『板屋学園』園長の兄・椎葉亮さんと、毎年司会を務める弟・裕さん兄弟が主役だ。

心に湧きあがるものが共鳴し合い、感動が生まれる
兄・亮さんが、音楽関係の仕事から、先代園長だった叔父に乞われて福祉の仕事に飛び込んだのは約22年前。入所者と接するうち、彼らの持つ純粋さと一人ひとり違う個性を目の当たりにした。「絵の勉強をしなくても、見たものをキャンバスに表現。しかも、心に湧き上がるものが見る側にも伝わってくる、そんな作品ばかりなんです」。こんなに感動するものを、発信しなくてよいのだろうか。ふとそんな気持ちが芽生え、入所者が描くイラストをグッズとして販売するアート活動を始めた。木の葉祭を始めたのも、もともとは「ここで暮らすみんながワクワクする楽しいことや、1つの目標に向かって力を合わせる経験ができたら」という思いからだ。最初は学園祭だったものが、やがて地元の人たちも巻き込み、2002年からは「せふりの杜 木の葉祭」として1,000人以上を動員する地域興しイベントとなった。弟・裕さんは、教員時代の仲間と結成したバンド「フルフルズ」として第1回目から出演。最初は兄からの半ば強引な要請で出演したものの、身体で聴き、一緒に歌って楽しんでくれる入所者や地元の人たちの空気に、ぐいと引き込まれた。興奮と熱気に包まれ演奏を終えたとき、バンドのメンバー全員が「また出たい」と口にした。以来11年間、裕さん曰く「頼まれてもいないのに出演している」という。

お互い補完しながら共生する、障がい者福祉を目指して
「参加してみると分かりますが、演じる側と見る側が一緒くたに夢中になれる。それが木の葉祭の醍醐味でもあり、たくさんの人が訪れる理由なのだと思います」と裕さん。そんな祭の空気を感じるからこそ、2人の胸には障がい者支援のあり方についてのギモンが湧き上がる。今の障がい者福祉は、子どものときから教育の場所を分けられ、健常者と障がい者が共に過ごす機会がない。さらに、バリアフリーが両者の距離を隔てている。「なぜあえて境界線を作るのか。“分けて守る” ではなく、みんながそれぞれにもつ個性や不足を補い合い、支え合って生きる。それが、本当の福祉ではないかと思うんです」と亮さん。「入所者の創造力・表現力の素晴らしさを、発信できるチャンスをつくりたい」。そんな純粋な思いから始まった「木の葉祭」は、新たな地域発展の原動力となっていく。

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