水元 芳(みずもと かおり)先生
福岡女子大学 国際文理学部 准教授
島根県出身。タイのマヒドン大学大学院で修士学位、大阪大学大学院で博士学位取得。国内の病院で管理栄養士として6年間の勤務後、青年海外協力隊(ソロモン諸島)へ参加。その後、ミクロネシア連邦、ボツワナ、南アフリカなどのJICA在外事務所で調整員、企画調査員として勤務。2010年から福岡女子大学国際文理学部勤務、現在に至る。国内の保健・医療・福祉における実践栄養学を研究する一方で、国際保健分野での栄養問題にも取り組んでいる。
日本人女性はやせすぎ!?
国際栄養学から紐解く、心と体の真の健康とは。
「ダイエットしなくちゃ」「あと○キロ痩せたい」は、多くの女性の口癖であり、ダイエットは永遠のテーマ。どうして私たちはいつもこう思うのだろう。今回は福岡女子大学で国際栄養学の研究をしている水元芳先生を訪ねた。
日本人女性の“やせ願望”
テレビや雑誌など、メディアでも「やせ」や「ダイエット」の情報が目立つ現代。しかし昔は違っていたと水元先生。「1970年代に流行っていたアイドルは標準体型で、世間一般の女性のやせも目立っていませんでした。1980年代に入り、アイドルの体型はスリムに変化し、一般女性もやせを目指す傾向になりました」。現代のアイドル、女性の憧れとされる対象はやせ体型。メディアからの影響もおおいに関係があるようだ。
ちなみにやせ志向の日本と反対の国があるそうだ。「ミクロネシアという国の50%以上の女性は肥満です。この国では太っていることが美しいとされ、国の風習も女性のBMIの平均数値に関係していると考えられます」と先生。国によって美しさの基準や体型もさまざまなのだ。
“やせ”が引き起こすリスク
実際にやせている日本人女性の割合を先生に尋ねると「世界の肥満率は、若者世代でも増加傾向にある中、日本女性は例外的で20代女性のやせ(※BMI18・5以下)の割合は29%。なんと20代女性のおよそ3人に1人がやせ体重なのです」とは驚きだ。
※BMI(肥満度を表す体格指数)=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
「BMIの標準値は22。これは一番病気にかかりにくい数値で、25以上の肥満でも、18・5以下のやせでも病気になりやすいのです」。肥満は確かに体に悪そうだが、やせから生じる問題もあるのだという。「BMI18・5以下の女性から生まれる子どもは、2500g以下の低出生体重になりやすい傾向で、またその子どもは生活習慣病にかかりやすいという調査結果がでています」と先生。日本の低出生体重児の割合は9・6%(2009年)で、OECD加盟40カ国中の低出生体重児割合ワースト5は、インド、南アフリカ、インドネシア、トルコ、そして日本。食べ物には困らないはずの日本がワースト5に入っているというこの結果から、いかに日本が “やせ” を意識しているかがわかる。
「少しふくよかでも、食べることが大好きで、毎日が楽しく感じられるのであれば、それがその人自身のよいスタイルではないでしょうか。ダイエットもモチベーションアップにつながればいいことですが、やりすぎは禁物です」。確かに、食べたいのに我慢ばかりして、肌もボロボロになり、笑顔がなくなるのであればきれいになるためのダイエットも本末転倒だ。
今回のゼミでは水元先生に国際栄養学から見た日本女性の「やせ現象」や起こりうるリスクについて学ぶ。日本人女性に足りていない栄養素や余分に摂りがちな栄養素、見た目はやせていても内臓脂肪はどうなのだろうか? 健康や栄養に関する疑問を先生と一緒に一つひとつ紐解き、心と体の真の健康について考えよう。