大迫 淳英(おおさこ じゅんえい)さん
『プリマヴェーラ・アーツ株式会社』 代表取締役社長
「ななつ星 in 九州」 ヴァイオリニスト
福岡教育大学卒業後、イタリア、チェコ、ルーマニア文化庁指揮者アカデミーにて研鑚を積む。様々なオーケストラの演奏会でソリストを務め、皇太子殿下ご夫妻の御前で演奏した経験もある。国内外で音楽活動を行う一方、世界の第一線で活躍するアーティストのマネジメントやコンサートの企画制作を行う会社の社長を務める。JR九州「ななつ星 in 九州」の音楽演出プロデュースを担当。
大迫 淳英さんへ3つの質問
Q.座右の銘は?
A.詩人・坂村真民さんの「念ずれば花ひらく」。実家に小さな書があり、ずっと心に残っています。諦めず強い思いを持って進めば、必ずや花開くと信じています。
Q.尊敬している人は?
A.特定の人はいません。自分以外の全ての方から学ぶことがあると思っています。
Q.休日の過ごし方は?
A.休みはありません。もともと仕事とプライベートを区別していないからです。ななつ星への乗務も、仕事ととらえてしまうと、最高のサービスはできないと考えています。
ななつ星に全便乗車! 音楽の可能性を追求し 地域の魅力を発信したい
端正な顔立ちに低い声、スラリと長い指―美しきヴァイオリニストの大迫淳英さん。JR九州の豪華クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」の音楽演出プロデュースを担い、全便に乗務。甘いルックスの奥に、ほとばしる情熱を秘めていた。
ななつ星のアドバイザーに抜擢されて
3歳でヴァイオリンを習い始めた。11歳のとき初めてオーケストラの演奏会に出て、衝撃を受けたという。「それまでは習ってコンクールに出てという感じでしたが、舞台の上で喝采を浴び、ヴァイオリンの魅力に目覚めました。さらに同じ日に、モーツアルトを描いた映画『アマデウス』を映画館で観て感激し、音楽を志す大きな転機になりました」。
福岡教育大学を卒業後、東京の音楽事務所で働き、24歳で帰福。フリーで演奏活動やコンサートの企画等をしながら、ミラノやプラハに留学も果たした。そのうちレストランやホテルからイベントや婚礼演出の依頼が舞い込み、会社として創業。現在は世界で活躍するアーティストの招聘・マネジメントも手がける。
大迫さんに運命の出会いが訪れたのは、2012年2月のこと。パーティに招かれヴァイオリンを奏でたところ、JR九州の社員から「今企画している特別な列車に音楽を取り入れたいので、アドバイザーになってほしい」と声をかけられたのだ。JR九州の社長肝いりのプロジェクトで、当時はまだ列車デザインのラフができたばかり。3月、新聞に「3日4泊 50万円 生演奏付き」と見出しが躍ったものの、内容は決まっていなかった。
次々とサプライズを仕掛ける
翌年10月の運行開始に向けて、怒涛の日々が始まった。まずは列車に乗せるピアノの選定から。世界最高のピアノとは?、ピアノの材質の問題、列車の限られたスペースに設置する問題。列車の揺れに伴い、運行中調律が必要では…次々に出てくる課題をクリアしながら、ピアノ選びだけで1年を要した。
さらに、大迫さんは「頼まれていないこと」を次々仕掛けた。現在ななつ星の公式テーマ曲としてCDにもなっている曲は、実はオーダーされて作ったものではなく、ななつ星のプレス発表の企画運営を任された際、会場で流すVTRにさりげなく潜ませたもの。それが好評で公式テーマ曲となったというからユニークだ。運行中のサービスについても、大迫さんは次々とアイディアを出しては自ら実行。乗客が感動し、旅の終わりには涙を流すほど喜ばれるというななつ星の評判に一役も二役も買っている。
「ななつ星という極上の舞台に好奇心をかき立てられ、皆さんの反応が嬉しくて次々にやりたくなるんです。それを受け入れてくれ、実現しようと協力してくれるJRのスタッフの方々にも感謝しています」。運行開始からしばらくは徹夜もザラというほど多忙を極めても、まだまだアイディアは尽きない。「これからもお客様の人生を彩り、かつ九州の魅力を音楽で発信していきたい」と情熱的に語る。
週4日はななつ星に乗務する一方で、長崎や鹿児島でも新企画を展開中。「人の心をつなぎ、地域の魅力を引き出しPRするツールとして、音楽での環境整備を提唱し、音楽の新たな活用法を模索しています」。音楽が持つ無限の可能性を追求する、大迫さんの旅はどこまでも続く。