インタビュー

石坂淳子さん(株式会社ひよ子・代表取締役社長)/家庭の主婦から社長へ 老舗の伝統を受け継ぎ 新しい価値を創造する

石坂淳子さん
『株式会社ひよ子』『株式会社東京ひよ子』代表取締役社長
甘木市(現朝倉市)出身。筑紫女学園短期大学国文科を卒業後、石坂博史氏と結婚して、子育てに専念。「ひよ子ランド」の運営を皮切りに会社の業務を担当し、2009年『株式会社ひよ子』及び『株式会社東京ひよ子』代表取締役社長に就任。カフェやひらり回転饅頭博多ひなのやき、アートとコラボしたショップなど新たな形態の店舗も積極的に展開中。

家庭の主婦から社長へ 老舗の伝統を受け継ぎ 新しい価値を創造する

明治30年に飯塚で開業した『吉野堂』(現『㈱ひよ子』)。2代目が考案した名菓ひよ子は今年で生誕104年を迎え、福岡はもとより全国で愛されている。そんな老舗の5代目社長を務める石坂淳子さんは、エレガントな立ち居振る舞いが印象的な女性。専業主婦から、7年前、社長に就任した、異例のキャリアの持ち主だ。

40代半ばで「仕事」に目覚めた

短大を卒業して就職しないまま25歳で結婚。お相手は吉野堂4代目社長となる人物だった。「私は一生外で働くことはないと思っていました」。義父母と同じ敷地に住み、27歳で出産。人生観が変わったという。「命あるものを授かり産み育てることに対する責任感をひしひしと感じ、身の引き締まる思いでした。そんな中で周りの方に助けていただき、感謝の想いが増しました」。絵本の読み聞かせや野球の応援など、子育て中心の生活を送った。

そんな石坂さんに転機が訪れたのは、末の子どもが6歳のとき。本社内に設けられていた児童遊戯施設「ひよ子ランド」の運営に石坂さんも母親目線で参加することに。さらに7年後には夫が会長、石坂さんが社長に就任したのだ。「次の時代に向けてお菓子事業を展開するには女性としての感性が必要だという周囲の要請で」と背景を明かす。だが、「さほど戸惑いませんでした」とサラリ。

「当初自分の思いを伝える難しさは感じましたが、もともと想像したり考えたりするのは好きでしたから仕事が楽しくて。夫は業界など外とのお付き合い、私は会社の中を守る役割。考えてみたら主婦目線で会社のあり方を構築することが成果につながる業種だったので、幸いだったと思います」。

石坂さんは着々と社内の基盤を固め、新店舗や商品開発にも情熱を傾けた。「ひよ子は炭鉱で栄えた飯塚で誕生しました。働く方々の疲れをいやし、子どもたちにも喜ばれるようなかわいらしい姿で、大切な栄養源になる。地域や人を思う気持ちから生まれたお菓子なんです。そんな創業からの想いを継承することが私の使命。四季のおいしさを地域のものでお届けしたいと考え、あまおうを使う苺ひよ子、八女の茶ひよ子など様々な商品を開発してきました」。

商品開発会議は毎週行われ、石坂さんが自ら主宰する。「社員の意識向上につながり、会社の可能性も広がります」。さらに営業、製造、企画など各部門の会議にも出席する。ある社員は「いつ休んでいるのか不思議なくらいパワフルな社長です。社長の指摘はいつも的を射ていてすごい」と誇らしげに語る。

どんな立場にいても「私は同じ」

温和な印象だが自ら「仕事には厳しい」という。「伝えるべきことは伝えます。仕事をきちんと進めたいし、相手を大切に思うからこそ信念を持って。経営者として責任は大きいけれど、人と関わり新しい価値を生み出すのが楽しい」と微笑む。

20年の専業主婦を経て、600人以上を擁する老舗企業のトップへ。「主婦でも働いていても、自分が見て学んで感動したことは心の中に残っていく。どんな立場でも根本は同じ。責任を全うしたいと私なりに一生懸命やってきました」。いつも石坂さんの心にあるのは母校、筑紫女学園で教わった言葉「清浄(しょうじょう)」。「にごりのない清らかな心で過ごしたいですね」。

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