インタビュー

鈴木 綾さん/オーダーメイドの洋服で、おしゃれの障がい物を軽やかに飛び越える。

オーダーメイドの洋服で、おしゃれの障がい物を軽やかに飛び越える。

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鈴木綾さんのここ数年のトピックを見るだけでも、実に多彩。『車いすでお買い物ツアー』を全国で実施したり、『NHK大阪放送局主催 はるな愛×バリバラ バリアフリーコレクション』に参加したり、今春は『福岡アジアコレクション』にも出る。小学生の男の子二人を育てながらだから、体はいくつあっても足りなさそうだ。ご本人も「息子を学童保育に預けたら、荒れました」と笑いながら、しかし、表情に疲れなど全く沈殿していない。「何はなくとも、やりたいコトだけはたくさんあるから、でしょうか」。

27歳の時、広い世間を見てみたくて、母校の教職の仕事と引き換えに、ウエディングプランナーめざして東京の会社に転職。プロデュース力を身に付けながら、2年勤め、結婚。義両親との同居、出産とライフイベントが続く中でも前社でのネットワークを生かしてオーダーメイドの服作りを続けた。夫は彼女に専業主婦になることを望んでいたから、葛藤も付きまとったという。

育児で仕事ができない時、葛藤はなくなった代わりに産後うつに見舞われた。孤独の淵に立つ彼女を引きとめていたのは、「自分のように孤立する人々をどん底に落ちる前におしゃれで元気づけられたら」というかすかな希望だった。

障がいの有無、境界越しの固定概念を越えた洋服作り

そうして2011年、「アトリエエスプリローブ」は創業した。
「今後どんな服作りをするか考えていた時に、障がい者や高齢の方が満足に服を着られない為に外出できないことを知って。自分で車いすを買い、サンプルを作り、ブログに載せたりするうちに、雑誌のスタイリストの話がきたり、ネットワークが広がっていったんです」。クラウドファンディングでイベント資金を集めたり、福岡ではメディアに取り上げられたりしたこともバリアフリーファッションへの賛同者や理解者と出会う機会を広げていった。

しかし、鈴木さんが注目されるのは単にバリアフリーの洋服をオーダーメイドするデザイナーだからではない。彼女がめざすのは障がいがあるとかないとか、境界越しの洋服作りではなく、誰もが着たい服を自由に楽しめる社会。服が人に合わせさえすればいいのだから世の中の服はすべてオーダーメイドになればいいと本気で願っている。

直近の目標は福祉、病院、高齢者の施設を回り、服のお直しやおしゃれを楽しんでもらうためのボランティア団体の立上げだ。スタッフには孤立しがちな育児ママを混ぜていきたいと目論んでいる。

『アトリエ エスプリローブ』オーナー ファッションデザイナー
鈴木 綾さん

1976年生まれ。福岡県出身。香蘭ファッションデザイン専門学校ファッションデザイン専攻科卒。同校教諭を経て、2002年よりウェディングプランナー、ドレスデザイナーとして活躍。2011年、神奈川県横須賀市にアトリエを開業。2014年、福岡へ移転し、オーダーメイドの服の製造販売を軸に、オリジナル商品の開発、イベント企画運営を行う。

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