インタビュー

嶋井 元子さん/幸せな出産を司り、母子達のより良い未来を

嶋井 元子(しまい もとこ)さん
ガルヴァ助産院 助産師
社団法人福岡県助産師会北九州地区理事
北九州市若松区出身。21歳から看護師として働き、26歳で助産師の国家資格も取得。総合病院の産婦人科や産婦人科医院で多くの赤ちゃんの誕生に立ち会い、2005年に助産院を開業。以降はスーダンの母子保健に関する国際協力や、北九州市の子育て支援・青少年への性教育など地域支援活動にも積極的に関わっている。

幸せな出産を司り、母子達のより良い未来を

妊婦と胎児に備わる自然の力を引き出して、新たな魂を迎える助産師(midwife)の語源には、魔女という意味がある。はるか昔から助産師は、生命の神秘を扱う神聖な存在だったのだろう。「この職業に出会えて、本当に良かったなと思います」穏やかに語る嶋井さんのキャリアは現在、国際協力や地域支援など多方面に生かされており、興味関心のおもむくままに歩み続けてきた結果が今、大きく花開いている。

実行力が人生を切り開く
看護師として働いていた嶋井さんが助産師になったきっかけは、青年サークルの仲間達と妊娠や避妊の話で盛り上がったことだった。医学的な専門知識を持つ嶋井さんは若い男女が知っておくべき知識として、妊娠に関する資料を作り、仲間達に教えた。「性教育って面白い」と助産師になり、産婦人科で働き出した嶋井さんはある日、1冊の本に衝撃を受ける。自然出産の先駆者であるミシェル・オダン博士の「水中出産」。薬や麻酔に頼らず自然分娩を勧める彼の説に感銘を受け「博士の話を普通の母親に聞いて欲しい」との一念からなんとオダン博士を北九州に招聘。1998年に北九州国際会議場で講演会を開催した。会いたい人に会い、やりたいことを実現させる実行力は、彼女の人生を切り開く大きな力となってきた。

半生を振り返り軌道修正
病院勤務の助産師として充実していた嶋井さんが立ち止まったのは40歳の時。人生の折り返し地点を迎え、これから先をどう生きるか2年間考えた。そうして決断したのは開業の道。出産時だけの関わりではなく、お産前の食生活等も含めより良い形で妊婦に寄り添い、お産を見届けたいと考えたのだ。46歳で助産院を開業した後は、24時間対応で妊婦と胎児の健康を見守りながら、新生児の訪問事業や小中学校に通う思春期の子ども達に命の尊さなどを伝える活動も続けている。「これはまさに私が20代の頃、性教育の資料を作ったことが原点です。自分がやりたかったからやっていたことが、こうして仕事として生きている。すべては繋がっていて無駄なことなど何一つないと感じます」

思いはいつか叶うもの
青年海外協力隊で働きたかったという嶋井さんの願いは2010年、意外な形で実を結ぶ。「アフリカ・スーダンでの母子保健活動を手伝って欲しい」国際NGO・ロシナンテスと国際協力機構JICAの共同プロジェクトからの依頼を嶋井さんは即座に受け入れた。助産師の専門家として1カ月間現地に入り、村の妊産婦や乳幼児の健康問題を分析し、今後の母子保健事業に対するレポートを作った。スーダンでは約8割が自宅出産で、主に現地の村落助産師がお産を支えているが、彼女達の多くは読み書きができず記録はほとんど残っていない。それでも嶋井さんは聞き取り調査を続け、村落助産師のレベル向上と、妊婦やお産に関する診療所との情報共有を進める必要性などを報告。翌年再び現地に入り、状況が改善していることが確認できた。「外国に行きたいとか異文化に触れたいと思い続けていたら、ここにきてこんな形で実現できた。この歳になったから言えることだけど、人はみなそれぞれに果たすべき役割があり、その人のいい時期に出会いがあり、花が開くみたい」焦らず気負わず、自分の思いにまっすぐに生きる強さとしなやかさで、嶋井さんは新たな世界を広げ続ける。

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