インタビュー

藤間 裕志朗さん/一日を心豊かに生きる。日舞の魅力を伝えたい。

藤間 裕志朗(ふじま ゆうしろう)さん
日本舞踊藤間流・師範
生まれも育ちも北九州市。29歳のとき、藤間芳宏師より手ほどきを受け、49歳で藤間流師範免状を取得。北九州の夏の風物詩「わっしょい百万夏まつり」の創作部門に参加し、2度のグランプリをはじめ数多くの賞を受賞。平成25年から踊られる新曲の振り付けを手がけ、講習会での指導を行う。また、北九州小倉北区、福岡市平尾、東京都新橋に教室を開校。日本舞踊藤間流師範として生徒の育成に取り組む一方で、親子で参加できる「育ママコース」も設置している。
http://www.fujima-yushiro.net/

一日を心豊かに生きる。日舞の魅力を伝えたい。

「次は何を演じようと思うと、ワクワクするの」。抑えきれない好奇心を滲ませ、そう語るのは日本舞踊の師範・藤間裕志朗さん。快活な印象の彼女だが、27歳のときにいたのは病院のベッドの上だった。「ああ、早く身体を思いっきり動かしたい!」。26歳で結婚した早々大病を患い、2年間にも及ぶ闘病生活の中で毎日そう願ったという。そしてやっと動けるようになった頃、日本舞踊に出合った。

感性が磨かれ、日常が鮮やかに
「藤間流の先生のお誘いを受けて舞いを見に行ったのですが、全身全霊で踊る姿と、指先にまでめぐらされた集中力に衝撃を受けました。日舞は一人で何役も演じるから、男、女、うさぎ、風…と色んなものになれるでしょう? それで、『私も踊りたい!』と思ったの」。それから子どもを連れて教室に通い、夢中で踊った。
様々な役の心の機微を全身で表現するうちに、裕志朗さん自身にも変化が現れ始める。「例えば花が咲いたり枯れたりするのにも、『太陽に向かってめいっぱい花びらを広げている』とか、『ギュッと丸くなってしぼんでいる』と、その花に気持ちを置き換えて考えるようになったんです。それまで何気なく見ていたものに生きようとする心意気ややり遂げた姿を感じるようになり、一日いち日を心豊かに過ごせるようになりました」。色んな役に想いを馳せることで、人の心の動きを読み思いやることができるようになり、舞いの情景を読み解くことで、場の空気を読めるようになる。そんな日舞の素晴らしさを「たくさんの人に伝えたい」と「裕志朗の会」を設立。新たな使命が彼女を突き動かすことになる。

生活を踊りにして楽しむこと
裕志朗さんの日本舞踊教室は、通う人それぞれが感じたまま自由に楽しむスタイル。その人ならではの表現や感性を大切にしてほしいからだ。「色んな人の想いを受け入れ、自分の想いも表現して伝えられるようになる。だから、働いている人こそぜひ日舞に触れ、仕事に活かしてほしい」。
型の中に宿る精神性を教えることで、生活一つひとつを仕草として楽しめるようになる彼女の教室には、幅広い年齢層や子ども連れの人が通う。次はどんな衣装を纏い、どんな表現をしよう。手をどこに置けば美しく見えるだろう。「何をしているにもつい踊りにつなげてしまう」と自身が日舞を楽しむ裕志朗さん。同じように目を輝かせ日舞を楽しむ生徒が多いのは、やはり彼女の姿を間近で見ているからだろう。

日本のスピリットを世界へ
生徒の育成に力を入れる一方で、先日イタリアで日本舞踊を披露する機会があった。言葉が通じない不安はあったが、舞い終えた裕志朗さんのもとには多くの観客が押し寄せ、その感動をぶつけてくれた。「国も文化も違う。まして言葉も話せないのに、感動を共有できたことに胸が熱くなりました。言葉は通じなくても、踊りを通じて日本のスピリットは感じてもらえる! って。それと同時に、新しい刺激も受けました。私自身、日本のことをもっと深く学ばないといけないし、伝統を受け継ぐだけでは足りない。それを世界に発信できる、日舞のマエストロをもっと育てなくては!それが私の新たな使命なの」。
来年8月に、フランスで舞台を演じる裕志朗さん。常に好奇心に満ち溢れた彼女の瞳は、今日も輝きに満ちていた。

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