
岡田 享子(おかだ きょうこ)先生
九州大学病院
総合診療科臨床教育研修センター 准教授
長崎大学卒業後、九州大学病院総合診療科に入局。地域医療機関での勤務後、2009年から九州大学病院臨床教育研修センター(総合診療科)勤務。2012年より同センター准教授。医学博士。総合内科専門医。糖尿病専門医。生活習慣病を専門とした総合診療を行っている。1男1女を育てる働くママでもある。
低血糖症、妊娠糖尿病!? “血糖値” の異常が増加中!
今、 知っておくべき、 女性に身近な生活習慣病と体の不調。
肩こりや疲労感、生理痛など、私たち女性に不調はつきもの。そこで今回は、「ちょっとした不調こそ、体が発するSOSのサイン」という九州大学病院の岡田享子先生に詳しく話を聞いた。
今、女性の“血糖値”に異常が起きている!?
特に生活習慣病に詳しい岡田先生によると、近年は “血糖値” に異常がみられる女性が増えているそう。「最近、特に多いのが “反応性低血糖症” と呼ばれる症状。これは血糖値が下がりすぎる病気で、これまでは特殊な病気や手術をした人にしかみられませんでした。血糖値は通常、食事を摂った後に穏やかに上昇し、血糖値を下げるインスリンというホルモンが出てゆるやかに下降します。ところが最近は、急激に血糖値が上昇してインスリンが過剰に分泌され、その反動で血糖値が急激に下がり、冷や汗やめまい、動悸、急激なイライラや不安感など様々な不調を訴える人が増えています」。
低血糖症の原因のひとつは、糖分の多い食習慣。空腹時にチョコレートや飴を食べる、いつも清涼飲料水を飲んでいるなどの習慣がある人は要注意だ。
また、高血糖や糖尿病も女性とは縁が深い病気だそう。「女性には、特に糖尿病に気をつけるべき時期が2つあります。一つは妊娠中。『妊娠糖尿病』と呼ばれ、妊娠前には異常がなかった人が妊娠後、急に糖尿病になってしまう病気です。妊娠中はそもそもホルモンの影響で高血糖になりやすいため、肥満傾向の人や甘いものや高カロリーの食事を好んでいた人などが、妊娠をきっかけに糖尿病を患うケースが増えています」。妊娠糖尿病は胎児にも悪影響を及ぼす可能性があるため、特に注意が必要だ。
「もう一つは更年期。女性ホルモンの分泌が減って血糖が上がりやすい状態になるため、更年期の女性は特に食事やお酒の量、肥満には注意が必要です」。
まさか!? 健康診断の意外な落とし穴。
岡田先生いわく「症状がかなり進行しないかぎり自覚症状がないのが糖尿病の怖いところ。発見が遅れると完治が難しくなるため、少しでも早く見つけることが大切」とのこと。ところが、いつも私たちが受けている健康診断の血液検査では、糖尿病を見落とす可能性もあるそう。「通常の血液検査は空腹の状態で採血しますよね? ところが、実は空腹時に血糖値が上がるのは症状がかなり進行してから。糖尿病の初期段階では、食後にしか高血糖の上昇がみられません。糖尿病を早く発見するには、食後の血糖値を測らないと意味がないんです」。いつもの検査で血糖値が正常だったとしても安心はできないのだ。「糖尿病をはじめ、どんな病気も正しい検査が重要です。自分の体を過信せず、不調に敏感になり、検査や診察を受けることが、自分の体を守る第一歩」と岡田先生。今回のゼミでは、女性が気をつけるべき生活習慣病や不調の見分け方などを学ぶ。体のSOSに敏感に対処し、命や健康を守るために役立つ知識を身につけよう。