有馬 隆文(ありま たかふみ)先生
九州大学人間環境学研究院 都市・建築学部門 計画環境系 准教授
長崎県出身。大分大学工学研究科修士課程修了。九州大学にて博士(工学)を取得。大分大学にて助手、講師を務めた後、九州大学大学院人間環境学研究科助教授、ロンドン大学訪問研究員を経て現職。専門は都市計画・都市デザインであり、コンピュータを援用した都市解析からアイランドシティにおけるヤギの飼育まで幅広く取り組む。趣味はまち歩き。市内各所を行脚している。
“犯罪が起きない街” がデザインできる!
福岡でできる、 「防犯まちづくり」 の今を知る。
福岡は、残念ながら犯罪が多い街だといわれている。車上荒らしやひったくり…日頃、不安を抱えている人も多いのでは? 今回は「防犯可能なまちづくり」について、九州大学で都市計画・都市デザインを研究する有馬先生から興味深い話を聞いた。
「街で犯罪が起こる場合、とくにひったくりや車上荒らし、放火など『機会犯罪』と呼ばれるものには、①犯罪企画者がいる ②ターゲットとなる人や物が存在する ③犯罪が実行可能な機会・場所がある、の3つの要因があると言われています。これに対して過去さまざまな対処法が考えられてきました。私が今とくに研究しているのは、この3つ目の環境要因を減らすことで、犯罪を防ぐ街づくりができないか、ということです」。具体的には、どのような方法があるのだろう?
犯罪を防止する環境づくり
「1970年代からSPT ED(セプテッド)という『環境設計による犯罪予防』の概念が生まれたのですが、“見通しの確保” “領域性の確保” が大切だといわれています。たとえばイギリスで実施された事例では、公園の子どもの遊び場を見通しよく作り、派手でカラフルにした事例があります。そうすると、色の効果や自然監視性が生まれたことで、不審人物が近寄って来ない、という効果があげられました。福岡でも、放火が起こった場所について調査したことがあるのですが、ごちゃごちゃしていて家同士の境界が不鮮明なところ、誰でも入りやすい場所に多く見られました。たとえばこの見通しをよくする、家と道路との境目を鮮明にすることで、放火の可能性は減らせるといえます」。なるほど、犯罪者に「ここは手ごわい」と思わせる環境作りが必要なのだ。
「また以前警固エリアで、ひったくりや車上荒らしについてのアンケートを行ったのですが、人々が『犯罪にあいそう』と答えたエリアと、実際にその犯罪が起こったエリアがまったく違うことが分かったんです。人が感じる危険というのは意外と分からないもの。積極的にどこで犯罪が起こるのかの知識を取り入れて、地域で活かしていくことも大切だといえますね」。
人々が安心できるまちづくり
現在、監視カメラやセキュリティーの強化など、どちらかといえばクローズの方向で防犯対策はとられているが、人間関係の希薄さを生む場合もある。それに対して、人と人とのコミュニケーションを活かしてオープンな防犯環境を生み出すのが防犯まちづくりの魅力。「ある意味、人に頼る部分も増えてくるのですが、その方が社会全体もよくなるのではないかと感じています。街自体はオープンだけれど、見えない人間力で守られている、そんな街づくりができたらいいですね」と先生。
今回のゼミでは、福岡の事例をみながら「犯罪が起こらない街づくりとは?」をテーマに考えていく。身近な事例も多いので、自分の身の回りを振り返って活かせる機会になるはず。福岡の「防犯まちづくり」の今を知って、私たちにできることを考えてみよう!