子どもの頃から人の役に立つことをいつも考え、小学生の時に引越しした先で子ども会を立ち上げたり、低学年の子どもたちの勉強を見る会を作ったり、いつも新しいことに挑戦し続けてきた権頭喜美惠さん。幼い頃の夢は身近な人を助けられる医師。しかし家庭は経済的に苦しく、大学進学も断念せざるを得ないような状況だった。そんな中、奨学金やアルバイトで大学へ進学する。
大学3年の21歳で学生結婚、そして出産。赤ん坊をおんぶして授業や実験に出ると、あやしてくれたり子育てのことを助言してくれたり、親が早くに他界し苦学生だった彼女を先生方や友人達、そして近所の人たちが支えてくれた。「多くの人に助けられながら生きてきました。やっぱり人は、一人では何もできない」。だからこそ、身近な人々が笑顔でおたがいさまと支え合える社会にしたい。そして、自身の親の介護ができず、看取りの在り方にも後悔を残したまま亡くしてしまった経験も権頭さんの原点だ。
子育てと中学校講師を両立しながら、転勤の多い勤務医だった夫に開業を提案。資金も縁故も何もないまま独学で診療所を開設。医師にはなれなかったが、地域に根づいた医療という夢を実現させた。診療所の経営や運営に携わるなかで、もっと人の人生に関わりたいと考え、福祉大学で学び直して介護事業所を開設。その後もグループホームや居宅介護事業所などを次々と立ち上げ、特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人理事長に就任した。現在も福祉のまちづくりを精力的に進めている。高齢者や認知症の方など困った人を本当に支えられるのは、身近な地域の人たち。専門職だけでなく地域の人や様々な人たちが一緒になって、「おたがいさまで笑顔がいっぱい」の誰もが住みよいまちにしたい。
至誠、天に通ず。彼女の高潔な真心は豊かな社会の礎になるはずだ。
『社会福祉法人 もやい聖友会』理事長
権頭 喜美惠さん
1963年兵庫県生まれ。中学校で理科の非常勤講師をしながら4人の子を育て、「権頭クリニック」開業後は講師業の傍ら、クリニックの経営にも携わる。2003年より福祉事業に力を注ぎ、2011年『社会福祉法人 もやい聖友会』理事長に就任。現在は関連3法人21事業所を経営しながら「地域包括ケア」の構築を目指した活動をしている。趣味は茶道、日本酒、バイク、演劇(劇団青春座 所属)など。
▲ 1.老人ホーム内の地域コミュニティFMラジオのスタジオから地域や介護の現場を応援する番組を発信。
▲ 2.多世代交流の場ともなっている認知症カフェや親子カフェを運営している。
▲ 3.地域の多世代交流拠点として、学生ボランティアも関わっているもやい通りマルシェ。
社会福祉法人 もやい聖友会
北九州市八幡西区鉄王2-2-36
http://www.moyai.or.jp/
TEL/093-631-2100