インタビュー

西村 澄子さん/教師と保護者、双方の立場が分かるからできること。

西村 澄子(にしむら すみこ)さん
福岡県PTA連合会会長
Profile/福岡県出身。大学卒業後、太宰府市立、那珂川町立、春日市立の中学校体育教師を勤めた後、結婚を機に退職。3人の子どもを育てながらPTA活動に従事し、「幼稚園母の会」会長、小学校父母教師会副会長、会長などを歴任。2010年に「福岡県PTA連合会」副会長、2011年に会長に就任。最初は戸惑っていた夫や子どもたちも、現在は彼女の一番の応援団&サポーターに。

教師と保護者、双方の立場が分かるからできること。

「私、何かしていないと落ち着かないんです」。悪戯っぽい笑みを浮かべ、そう語るのは西村澄子さん。スラッとした長身で、快活な雰囲気が漂う。彼女の肩書きは福岡県PTA連合会会長。福岡市・北九州市を除いた福岡県内、684校約20万人いるP T A 会員のトップに立つ人物だ。

難しい立場同士、認め合うことも必要
「PTA」と言えば、定期的に行われる集会や運動会、バザーなどの学校行事で、各々の役目にまい進する母親たちの姿が目に浮かぶ。だが不思議なことに、それを束ねるPTA会長に選ばれるのは、現場で奮闘する母親ではなく男性が多い。実際に01年来女性が福岡県PTA連合会会長となったのは、西村さんが初めてのことだ。

彼女がPTAに関わることになったのは、13年前、娘の入学式がきっかけだった。自身の母校でもあり、懐かしい校歌にじんわり温かい気持ちになったのも束の間、保護者の役員決めでは会場がシーンと静まり返っていた。「何でもスパッと決めて次にいきたい」さばさばした性格に、元教師として「先生と保護者の気持ち、どちらも分かるから何か役に立ちたい」との想いが加わり自ら立候補。

「教育現場の大変さも実感しているから、保護者の側から先生たちを支援したい」とほぼ毎日職員室へ足を運ぶ彼女に、教師たちも徐々に打ち解けていった。「子どものことを先生に相談したい」という母親たちへは、「こんな風に伝えるといいよ」「こんな事例があったよ」とアドバイス。そして教師たちへも、保護者たちが抱えている悩みなど細かく情報を伝え、双方のパイプ役として活動した。

「PTA会長というより、どちらの立場も認め合えるよう、教師と保護者を繋ぐコミュニケーターでありたい」と話す西村さん。その人柄に加え、10年に一度回ってくる九州PTA福岡県大会で分科会の責任者を務めたことも評価され、福岡県PTA連合会会長へと選出されることとなった。

すべては子どもたちの成長のために
実は彼女、会長という役とは別に現在、春日中学校の一PTA会員として広報委員も務めている。「例えば運動会で、広報委員として奮闘するがゆえに自分の子どもの写真を撮りそこねる人もいます。でもそうやって、各学校でお父さんやお母さんたちが一生懸命活動してくれるからこそ、PTAは成り立っているんです。そのことを忘れないでいたいから」と。

子どもの行事報告になりがちなPTA新聞を「父母のがんばりを伝える新聞にしたい」と、広報委員としての目標ももち、現場でも奮闘している。「忙しいせいか、最近は親たちのPTA離れも問題になっています。ただ、最初は仕方なく役員を引き受けた人たちも、一年経つと『やってよかった!』に変わります。大変だけれどやりがいがあるんです」という西村さん。

「純真無垢な子どもに、色んなスパイスを加えるのは周りの大人たち。いい色を入れられるよう保護者と教師を支援し、ともにがんばっていきたい。それに加えて、子どもが育った環境はそのまま、子どもにとっての『ふるさと』になります。だからこそ、今後は子どもたちがたくましく育っていける環境づくりを、地域も巻き込んで行っていきたい」と語る。

何事にも全力投球し、自分流に楽しむ彼女。「思春期で揺れ動く子どもたちこそ愛おしい」と、難しい年頃の子どもたちのために、今日も心を砕いている。

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